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決算報告書、決算書の解説 -種類と内容、そして見るべきポイント-

決算書は会社の1年間の事業成果をまとめたものです。決算書は複数の書類で構成されていますが、どのような書類があり、それぞれにどのようなことが書かれているのでしょうか?営業職や技術職の方、または決算業務に携わっていない会計職の方は、具体的な内容に踏み込んでいない場合が多いのではないでしょうか。

 

決算書を読む力はビジネスマンにとって重要な力です。決算という会社全体のまとめ作業の中での自分の役割やポジションを知ることは、より主体的に仕事に取り組む源となります。また、会社にとっても、決算に対しての意識の高い従業員を擁することは会社の価値を高めることに繋がります。なお、決算書は税務署に出す場合には「決算報告書」と呼ばれて区別されます。

 

本記事では決算書の概要から決算報告書に必要な書類などを詳しく解説します。このほか決算業務から決算書の役割、具体的な内容、見るべきポイントを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

 

 

1 決算と決算報告書の概要

会社員であれば誰もが少なからず決算業務に関わっているものです。営業職であれば自身の売上が会社の利益の一部となり、技術職であれば自分の手がけた商品が会社の売上の元となり、そして従業員の給料は費用となって決算書に反映されます。

 

初めに、決算と決算書の概要について説明しましょう。次章以降により具体的な説明を行います。まずは決算の全体のイメージを捉えてください。

 

 

 

1-1 決算書の概要

決算とは決算月までの1年間の営業活動や収支をまとめる作業です。決算にさいしては、現預金の残高確認や債権債務の確認、材料や製品の在庫数を確認する棚卸し作業などを行います。

 

なお、日本では3月を決算月としている会社が多い傾向にあります。これは、国や地方自治体の開始月に合わせたこと、また、法改正の適用開始月の多くが4月であることなどが理由です。

 

上場会社は、金融商品取引法により四半期(=3ヶ月ごとの)決算を行うことが定められています。上場会社は株式を公開しており、市場にて売買可能としていますので、投資家や株主に最新の会社の情報を届ける必要があるためです。

 

 

非上場の会社でも、金融商品取引法が適用される会社には中間決算の義務がありますが、義務の有無に関わらず、会社の財務分析を行ううえで中間決算を行うことは有用です。

 

 

1-2 決算書の内容と役目

決算書は複数の書類からなります。書類の1つは、現預金の残高や固定資産などの資産状況、借入金などの負債状況をまとめた「貸借対照表」です。また、事業成果を収入と支出とに分けて最終的な利益を算出するものとして「損益計算書」があります。他にも、現金の流れを記した「キャッシュフロー計算書」などがあります。

 

そして、決算書には様々な役割があります。税務署にとっては適正に税金算出をしているか確認するための資料であり、金融機関にとっては融資の判断を行う際に会社の経営状況や健全さを検討するための資料であり、投資家にとっては投資判断の材料となる重要な資料となります。

 

 

 

1-3 決算書の種類と法律

決算書の種類と概要、提出先や提出期日の根拠となる法律の概要を以下に表にしてまとめます。

 

名称 概要 法律
①貸借対照表 左側と右側の2区分に分けて、決算日時点(事業年度の期末日)の資産残高を左側に、負債残高を右側にまとめた表 法人税法、会社法、金商法
②損益計算書 決算日までの1年間の損益を、本業または本業外と区別して集計した表 法人税法、会社法、金商法
③株主資本等変動計算書 資本金や利益剰余金等の年度中の変動額と変動理由を記載した表 法人税法、会社法、金商法
④個別注記表 ①~③、および重要な会計方針に関する注記をまとめた表 会社法
⑤キャッシュフロー計算書 決算日までの1年間の現金および現金同等物の増減表 金商法
⑥計算書類の附属明細書 ①~⑤までの補足事項、および固定資産や販売費および一般管理費などの明細書 会社法、金商法
⑦事業報告書 取締役・取締役会の決定や決議内容を記載する表 会社法
⑧事業報告の附属明細書 事業報告書の内容を補足する資料 会社法
⑨その他 法人税申告書、勘定科目内訳明細書 法人税法

※金商法=金融商品取引法の略です。

 

 

2 決算報告書の提出先と提出期日、その根拠となる法律

決算書には提出(開示)義務があります。上記表にある通り、法人税法、会社法、金融商品取引法の3つの法律に基づいた提出書類と提出先、そして提出期日が定められています。提出期日は3つ、あるいは上場会社などの場合は4つあります。詳しく見ていきましょう。

 

 

 

2-1 法人税法上の提出先

法人税法には税務署や地方自治体に対しての提出書類と期日が定められています。税務署への提出書類は、上記表の①~③と合わせて、「法人税申告書」と「勘定科目内訳明細書」をセットにして提出します。また、義務ではありませんが、通例上④の個別注記表も多くの会社が添付しています。地方自治体へは、該当する税金の申告書のみを提出します。

 

なお、決算書のことを、税務署に出す場合には特別に区別して「決算報告書」と呼びます。

 

  

① 法人税等の納付日

会計の世界では、法人税法にて定められている税金のことを一般に「法人税等」と表記します。法人税等は、国に納める法人税と、地方自治体に納める法人住民税、および法人事業税の3つに分かれています。法人税等の納付期日は決算日から数えて2ヶ月以内です。もし、この期日を過ぎた場合には無申告加算税や延滞税が加算されます。

 

  

② 税務申告期日

法人税等の納付日と同様に、原則として決算日の2ヶ月以内に申告する義務があります。ただし、申告日は納付日とは異なり、特例により1ヶ月間の期限延長を申請することができます。この特例を適用するためには、例えば定款に「定時株主総会は事業年度終了後の3ヶ月以内に招集する」などの「3ヶ月」という文言が入っていること、つまり延長をするための口実が必要です。

 

 

 

2-2 会社法上の提出先

会社法では、①~④、⑥~⑧を作成することと定められています。決算書は「株主総会」などで開示されます。株主総会とは会社の株式所有者たちが集まって会社の方針や重要事項を決定する場で、会社の代表取締役や役員は株主総会により決定した方針を実行する立場にあります。株式会社の場合は決算書を作成後10年間保存することを義務付けられています。

 

なお、会社法上においては決算書のことを「計算書類」と呼んでいます。

 

 

  

① 株主総会の開催日

会社法では株主総会を、天災などのやむを得ない場合を除いて、3ヶ月以内に開催することと定めています。株主総会の開催にあたっては、会社の類型によりますが、原則として開催日の2週間以内に招集通知を発しなければいけません。

 

 

2-3 金融商品取引法上の提出先

金融商品取引法では、上場をしている会社に四半期ごとの決算報告を義務付けており、財務局を提出先としています。開示書類は①~③、⑤、⑥に、それら書類の概要を記した一連の書類の鑑ともいえる「有価証券報告書」と、会社が法律を遵守しているかなどを記載した「内部統制報告書」を合わせたものです。

 

金融商品取引法上では決算書のことを「財務諸表」と呼んでいます。

 

  

① 有価証券報告書等の提出期限日

有価証券報告書等は、決算日から3ヶ月以内に財務局長、および上場証券取引所に提出する必要があります。財務局へはインターネット上の「EDINET」にて提出でき、同Webサイト上にて誰でも閲覧することができます。

 

 

3 決算業務について

決算業務は、売上や仕入の締めの作業から、旅費や立替金の精算といった日常的な業務、そして原価の計算という各部署にまたがるものまで多岐に渡ります。年度末に全ての締め作業を一度に行うことは非効率的であり間違いの元ですので、月次ごとの締めすなわち月次決算を行い、問題を予防し早目に解決するようにします。そして月次決算から1年間の総まとめである年次決算へと集約していきます。

 

 

 

3-1 決算業務の内容

決算の一般的な業務内容を以下にまとめます。

 

  • 現金の計数…手元の現金を数えます。数えた現金と会計仕訳がもし一致しない場合には、入出金伝票の起票漏れや反映漏れがないか確認します。
  • 預金残高の確認…預金通帳にて、または残高証明書を取得して確認します。
  • 棚卸しの実施…製品や材料の在庫数、および貯蔵品に計上している切手などの現物を数えます。数が合わない場合には、伝票の起票漏れや材料の紛失など原因を調査します。
  • 債権、債務の確認…年度中の売上や仕入が正しく計上されているか関係部署に確認します。監査を受けている会社の場合、取引先宛に残高確認書を送付して確認を行います。
  • 固定資産の締め…固定資産の現物確認を行い、存在しないものや壊れて使い物にならないものは帳簿上から除却処理をおこない、取り除きます。また、年度中に減価償却費を計上していない場合には1年間分の減価償却費を計上します。
  • 減損の確認…固定資産や有価証券の現在価値を評価し、回復見込みが無いほど価値が下がっている場合には減損処理を行います。
  • 旅費や立替金の清算…旅費や立替金の清算漏れがないか確認します。
  • 給料計算…決算日までの給料計算を行い、当該分費用を計上します。
  • 売上と原価の算定…売上と原価を集計します。製造業の場合は製品ごとに原価計算を行う必要があります(「製造原価報告書」として後述)。

 

また、上記表には含めていない作業に税改正の確認があります。法律は毎年のように改正され、改正事項が該当する場合には決算書上の数字に影響することがありますので、改正点を見落とすことのないようにチェックすることが大切です。

 

 

4 決算書の具体的な内容

決算書には改めて次の書類がありました。

 

  1. 貸借対照表
  2. 損益計算書
  3. 株主資本等変動計算書
  4. 個別注記表
  5. キャッシュフロー計算書
  6. 計算書類の附属明細書
  7. 事業報告書
  8. 事業報告の附属明細書
  9. その他(法人税申告書、勘定科目内訳明細書)

 

それぞれ具体的な内容と、前章で見た決算業務のうちどの作業を行うか見ていきましょう。

 

 

 

4-1 貸借対照表

貸借対照表は略して「B/S」(= Balance Seat)とも呼びます。左側と右側の2つに分割された表で、左側に「資産の部」を、右側に「負債の部」と「純資産の部」を記載し、それぞれの決算日時点の現在額(残高)を記載します。

 






(資産の部)
 Ⅰ流動資産
   現金および預金
   売掛金
   製品および商品
   ︙
 Ⅱ固定資産
   建物
   機械装置
   土地
   投資有価証券
   ︙
 Ⅲ繰延資産
   創設費
   株式交付費
   ︙
(負債の部)
 Ⅰ流動負債
   買掛金
   短期借入金
   ︙
 Ⅱ固定負債
   長期借入金
   ︙




(純資産の部)
 Ⅰ株主資本
   資本金
   利益剰余金
   ︙
 Ⅱ株主資本以外
 (評価換算差額 等)      



 

資産の部は更に「流動資産」、「固定資産」、「繰延資産」の3つに分かれて合わせて会社の現財産をあらわします。
流動資産には1年以内に現金化される科目を集めます。固定資産には、土地や設備などの容易に現金化できない科目を集めます。繰延資産とは、実体のある資産ではなく、長期間に渡って効果のある費用をあらわします。例えば、会社の設立費用である創設費や、新規株を新たに発行した場合の株式交付費などです。

 

負債の部には「流動負債」と「固定負債」があります。流動と固定の意味合いは、資産の部と同様に1年を基準に現金化されるか否かです。例えば、流動負債中の短期借入金は1年以内に返済予定の借入金であり、固定負債の長期借入金は1年より先に返済予定のものです。また、負債の部のことを「他人資本」と呼ぶこともあります。左側の資産の部の元となる資金が他人由来であることからくる呼び名です。

 

純資産の部には、株主からの資本金や現在までの利益の積み立て(=利益剰余金)をまとめた「株主資本の部」と、合同会社の持ち合い株などの時価評価による含み損益評価換算差額などの「株主資本以外の部」を記載します。純資産の部は、返済の必要がある他人資本(=負債の部)と区別して返済する必要のないことから、「自己資本」とも呼びます。

 

左側の資産の部の出どころは、右側の負債の部である他人資本と純資産の部の自己資本の両方、という図式です。従って、左側の合計額と右側の合計額は必ず一致することになります。

 

貸借対照表を読むポイントを一つ紹介しましょう。「自己資本比率」というもので、自己資本(=純資産の部の合計額)を総資本(負債の部の合計額+純資産の部の合計額)で割って比率を出します。自己資本は返済義務がありませんので、この自己資本比率が高ければ高いほど優良企業であるとされます。一般に40%を超えると、倒産の恐れのない健全な会社、という評価をされます。

 

①決算業務にて確定する貸借対照表の科目

貸借対照表を作成するにあたっては、3章で見た決算業務のうち次のものを行います。

 

  • 現金の計数…現金および預金(流動資産)
  • 銀行預金残高の確認…現金および預金(流動資産)現金の計数…現金および預金(流動資産)
  • 棚卸しの実施…製品および商品、貯蔵品(両方とも流動資産)など
  • 債権、債務の確認…売掛金(流動資産)、買掛金(流動負債)など
  • 固定資産の締め…減価償却引当金(固定資産)、各固定資産(建物、機械装置など)
  • 減損の確認…各固定資産(建物、機械装置、投資有価証券など)
  • 旅費や立替金の清算…仮払金(流動資産)など
  • 給料計算…未払費用(固定負債)など

 

 

 

4-2 損益計算書

損益計算書は略して「P/L」(=Profit&Loss Statement)と呼びます。1年間の本業の儲けや費用、本業外で通常発生する収入や支出、臨時的に発生した収入や支出といった区分に分けてそれぞれの集計額を出し、最終的な損益へと導いていく表です。

 

  科目 金額

売上高
売上原価

売上総利益

販売費および一般管理費

営業利益

  100,000,000
95,000,000
  5,000,000
4,000,000
  1,000,000
本業外で
通常発生
するもの
営業外収益
 受取利息
  ︙

営業外収益合計

営業外費用
 支払利息
  ︙

営業外費用合計

経常利益

800,000 800,000

500,000
500,000
 
  1,300,000
臨時的な
もの
特別利益
 固定資産売却益
  ︙

特別利益合計

特別損失
 固定資産除却損
  ︙

特別損失合計

税引前当期純益
 法人税、住民税および事業税
 当期純利益
50,000,000  
1,000,000 50,000,000
  1,000,000
  50,300,000
20,120,000
  30,180,000

 

「売上高」と「売上原価」は本業に直接関わる損益です。売上高と売上原価の差額のことを「売上総利益」、または「粗利益」と呼びます。ここから事務所の修繕費や商品の宣伝費などの本業と間接的に関わる「販売費および一般管理費」を差し引いた額のことを「営業利益」と呼びます。この営業利益が本業の営業成績として捉えられます。

 

その下の「営業外収益」と「営業外費用」は本業外で年度中に通常発生する収入と支出です。例えば、営業外収益には銀行預金の預金利息などがあり、営業外費用には借入金の支払利息などがあります。ここまでの損益を差し引いて出した額を「経常利益」といいます。経常利益は事業年度の通常発生する範囲での利益ですので、損益計算書を見る上で会社の収益性を表す重要な指標となります。

 

その下の「特別利益」や「特別損失」は臨時的な損益です。予定外の固定資産の売却や故障による廃棄費用、および自然災害による修繕費などを記載します。

 

以上までの損益を差し引きして出した額を「税引前当期純利益」といいます。法人税などの税金を考慮しない純粋な会社の損益です。この額が法人税算出の基準額となります。

 

損益計算書を見るポイントは利益が出たタイミングです。例えば、税引前当期純利益が高い値を出していても、本業の損益である営業利益が芳しく無い場合には注意が必要です。もし、利益の多くが特別利益で出ているのであれば、臨時的な手段により利益を確保したのだということが読み取れます。

 

  

① 決算業務にて確定する損益計算書の科目

3章で見た決算業務は、損益計算書に次の科目として反映されます。

 

  • 棚卸しの実施…売上原価
  • 債権、債務の確認…売上、売上原価、販売費および一般管理費
  • 固定資産の締め…売上原価、販売費および一般管理費、固定資産売却益、固定資産除却損など
  • 旅費や立替金の清算…販売費および一般管理費)
  • 給料計算…売上原価、販売費および一般管理費
  • 売上と原価の算定…売上、売上原価
  • 現金の計数…現金および預金(流動資産)

 

建設業などの場合、当年度にて完工しなかった工事に対しても決算日時点の進捗割合により売上額と原価額を求め、これを売上と売上原価に組み込みます。この方式を「工事進行基準」といいます。

 

また、製造業を営む上場会社は損益計算書に添付する「製造原価報告書」を作成する必要があります。この製造原価報告書は、製品を構成する様々な材料の内訳と、製造の過程での技術職の人件費や設備稼働時間に応じた減価償却費の配賦などを記載する、売上原価の算出根拠となる書類となります。

 

 

 

4-3 株主資本等変動計算書

株主資本等変動計算書は決算書の中で最も新しくできた書類です。貸借対照表の純資産の部を抜き出して、そのうちの資本金や利益剰余金等の変動額、変動した理由を把握するために用いられます。

 

  株主資本 株主資本以外 合計
前期末残高(A) 資本金 ・・・ 利益剰余金 ・・・      
当期変動額
(B)
               
               
      (当期純利益)        
当期末残高(C)                

(※中小企業庁HPを参考に作成)

 

前期末残高(A)には前期の貸借対照表の純資産の部の残高を表示します。
当期変動額(B)にて当期の増減額と増減理由(対応する科目)が分かります。また、(B)中にて当期の純利益が分かるようになっています。
当期末残高(C)は当期の貸借対照表の純資産の部の残高となります。

 

 

 

4-4 個別注記表

個別注記表は、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書に対する注記事項を記載します。
貸借対照表の注記には担保となっている資産の明記などがあり、損益計算書に対しての注記には関係会社とそれ以外の取引高を分けて表示することなどがあります。株主資本等変動計算書の注記には事業年度末日の発行済み株式数を表記することなどがあります。

 

 

4-5 キャッシュフロー計算書

キャッシュフロー計算書は会社の1年間の現金の流れを追った表です。表は「営業キャッシュフロー」「投資キャッシュフロー」「財務キャッシュフロー」の大きく3つに分かれており、それぞれの区分にて動いた現金額が分かる構成となっています。

 

営業キャッシュフローは本業における現金の流れです。この区分にて最終的に現金が増えていれば、本業が順調に利益を上げているということになります。

 

投資キャッシュフローは固定資産や投資有価証券の売買の現金の流れです。この区分のマイナスは将来に向けて設備投資を行なったという見方をすることができます。逆にプラスになっている場合は、現有の固定資産や株式を売却して現金を得た、ということになります。

 

財務キャッシュフローは借入金の調達や返済による現金の流れをあらわします。この区分のマイナスは借入金をしっかりと返済していることをあらわします。また、借入金を調達して将来に向けて投資を行った会社の場合、プラスとなることがあります。

 

また、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローを合わせて「フリーキャッシュフロー」といいます。フリーキャッシュフローは、会社が自由に使えるお金であり、潤沢なほど健全な会社といえます。

 

キャッシュフロー計算書を作成する際には、前期と当期の貸借対照表、および当期の損益計算書を用意します。キャッシュフロー計算書の「期首残」額には前期の貸借対照表の現預金額を記載し、各増減項目は当期の損益計算書の数字を用い、「期末残」額には当期の貸借対照表の現預金額を記載します。

 

 

 

4-6 計算書類の附属明細書

計算書類の附属明細書の「計算書類」とは、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表の4つを指します。計算書類を補足するための書類となりますので、固定資産の科目別の増減内訳や、退職給付引当金などの引当金の明細、そして販売費および一般管理費の科目別の内訳などを記載します。

 

 

4-7 事業報告書

事業報告書とは決算と一年間の事業内容を総括した書類です。会社の状況に関する重要事項や、公開会社の場合は会社役員、株式、新株予約権などを記載します。

 

 

4-8 事業報告の附属明細書

事業報告の附属明細書には事業報告書の補足事項を記載します。また、公開会社の場合は役員の他法人における兼務状況を記載します。

 

 

4-9 その他(法人税申告書、勘定科目内訳明細書)

法人税法では法人税申告書と勘定科目内訳明細書の作成も義務付けられています。法人税の申告書は税務署に、法人住民税と法人事業税の申告書は地方自治体に提出します。勘定科目内訳明細書は法人税の申告書に添付します。

 

法人税申告書は法人税法上の特有の帳票である「別表」というものになります。作成には専門的な知識が必要なことから、多くの会社では税理士に依頼をしています。

 

勘定科目内訳明細書は各科目の内訳書です。例えば「現金および預金」では、現金の残高と、各金融機関預金口座の残高の内訳を記載します。

 

 

5 連結決算について

ここまでは主に単独決算の決算業務を説明してきました。上場会社の場合は、子会社や関連会社の財務状況を含めて1つの決算書にまとめる「連結決算」を行う必要があります。この連結決算には、1社単独では掴みづらい会社のグループとしての実態を知ることや、子会社を利用しての粉飾決算をなくす狙いがあります。

 

連結決算を行う上では、まず初めに連結決算の対象となる会社の判定を行います。全ての子会社や関連会社が連結となる訳ではなく、重要性の低い会社は連結対象外とすることができます。

 

次に、連結対象となる会社から各種財務状況を吸い上げます。吸い上がってきた科目や集計方法がバラバラでは効率が悪くなるため、あらかじめフォーマットを統一しておくことが重要となります。

 

連結会社から上がってきた数字に対して、本社側との債権債務や損益計算の相殺などを行っていき、「連結財務諸表」を作り上げていきます。連結財務諸表には「連結貸借対照表」、「連結損益計算書」、「連結株主資本等変動計算書」、「連結キャッシュフロー計算書」があり、単独の会社の財務諸表はこれに対応して「個別財務諸表」と呼びます。

 

 

6 決算報告書の見るべきポイント

それでは最後に、決算書の提出先である税務署、金融機関、投資家のそれぞれの立場からの見るべきポイントを紹介しましょう。

 

 

 

6-1 税務署視点のポイント

税務署は決算書を税金算出の視点から見てきます。売上を少なく見積もっていないか、原価を過大に見積もっていないかを特に注意深く調べます。なぜなら、利益が少ないほど税金も少なくなるからです。請求書上の日付が翌年度のものでも、当年度の売上である場合には当年度の売上として計上しておく必要があります。

 

税務署への対策として、適正な売上と原価の認識となっているか、領収証は整理して保管し、現預金残高が残高証明書と一致しているか、資産性のあるものを費用処理していないか、借入金の使途は明確かなどを、日頃から確認するようにしましょう。

 

 

 

6-2 金融機関視点のポイント

金融機関は融資を行う際に決算書のコピーの提出を求めます。融資が焦げ付いてしまっては大変ですので、その会社に安定した収益があるか、将来性があるかをチェックします。特にチェックしているのは、上述した「自己資本比率」で、この比率が高ければ高いほど金融機関としては安心することができます。

 

また、金融機関は貸借対照表を作成した会社以上にチェックしてきます。貸借対照表上の金額は一般的な会計上の計算から算出した金額であり、実態と異なる場合が往々にしてあるためです。貸借対照表上の固定資産の簿価が実態よりも多い場合には、架空の資産を持っているとみなして心証が悪くなりますので、減損の判定を行うなど実態の状況を調査しておく方が良いでしょう。

 

 

 

6-3 投資家視点のポイント

投資家は決算書から収益性や安定性、成長性を見ようとします。そのうちの幾つかの見方を紹介しましょう。

 

収益性は、損益計算書の区分ごとの利益(売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益)を売上高で割って出す「売上高利益率」から見ることができます。前期よりも高い比率となっている場合には収益性が増したということになります。また、経常利益を売上高で割って出した「売上高経常利益率」が4%以上であれば優良企業と目されます。

 

安定性を図るのは「流動比率」です。これは流動資産を流動負債で割ることによって求めるもので、この値が100%以上であれば、1年以内に支払不能により倒産となる可能性は低いということになります。

 

成長性は「経常利益成長率」から求めます。これは前期の経常利益からの伸び具合を判定するもので、当期の経常利益から前期の経常利益を引いた額に前期経常利益を割って算出します。高ければ高いほど前期よりも利益が増していることになり、マイナスの場合は成長していないことになります。

 

さて、この記事では決算書について見てきました。決算書を見る力を高め、また決算へ主体的に取り組むことによって、あなた個人の価値を高めることにつなげてください。

 

 


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