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本決算、中間決算、単独決算、連結決算の違いを説明できる?

決算や中間決算はなにが違うのか、また単独決算と連結決算はどのように異なるのかご存知でしょうか。
今回は区切る期間の違いに着目した場合の決算の分類、月次決算、四半期決算、中間決算、本決算について解説します。また、決算に反映する会社の数に着目した場合の決算の分類、単独決算、連結決算についても併せて解説するとともに、決算書の読み方についても触れます。

 

 

1 期間の違いに着目した決算の分類

月次決算の目的は、適時の業績把握とその結果を会社の経営判断に役立てることにあります。

 

 

1-1 月次決算

この目的を達成するために、経理は毎月なるべく早く数字を確定し、経営資料を作成しなければなりません。

 

1-1-1 月次決算の目的

実務上の作業の進め方ですが、毎月、月次試算表の作成期限を定めます。そして、その締め日から逆算してスケジュールを立てて作業を進めることになります。

 

1-1-2 月次決算を進めるうえでの注意点

①月次決算では売上の締めと仕入の締めが重要

営業部には月末締めの請求書を早くあげてもらいましょう。また、各部に届いた請求書がなるべく早く経理部に届くような仕組みを作りましょう。

 

②取引先には月末締め請求書の送付期限を連絡する

間に合わなければ、先にファックスやメールで送付してもらえば問題ありません。

 

③社内には立替経費精算書の提出期限をアナウンス

とくに営業部は外出が多く、提出が遅れがちになるかと思いますので、厳しく指導しましょう。

 

④月次会議までには月次決算を確定し、試算表を完成させる

月次決算は時間が勝負になります。スケジュール表を作成して進捗状況の管理をする必要があります。

 

1-1-3 月次決算で作成する資料

月次決算で作成する資料の例は以下のとおりです。

 

1 部門別損益計算書

部門別収支の把握をするものです。利益の源泉がどの部にあるかを確認します。

 

2 月次損益推移表

科目別、部門別数値の推移を把握します。異常値がないかを確認します。

 

3 予算実績管理表

予算の達成度を把握します。未達成なら原因を追究し、対策を立てます。

 

4 資金繰り表

数か月先までの資金の過不足を把握します。必要なら借入の検討も行います。

 

5 売掛金残高一覧表

売掛金の残高把握をします。回収遅延先と金額を確認します。

 

1-1-4 資金繰り表作成のポイント

会社は利益が出ていても、資金が枯渇してしまっては会社の継続ができません。そのため、資金繰り表作成は重要です。
1 2~3か月先を見通した資金繰り表を作成する
月末に売上と仕入を締めたら、その分の入出金が想定できます。また、月次の資金繰り表を作成して、会社の資金状況を管理します。
2 資金繰りの準備は早めに
銀行借入の交渉は余裕をもって早めにする必要があります。

 

 

1-2 四半期決算

1-2-1 四半期決算の目的

社内外の利害関係者に対して3か月毎の業績を報告するものです。なお、事業年度の初めから3か月後の末日までの期間を第1四半期会計期間といいます。次に事業年度の初めから6か月後の末日までの期間を第2四半期累計期間といいます。また、事業年度の初めから4か月目の期初から6か月後の末日までの期間を第2四半期会計期間といいます。そして、事業年度の初めから9か月後の末日までの期間を第3四半期累計期間といいます。第2四半期の場合と同様に、事業年度の初めから7か月目の期初から9月後の末日までの期間を第3四半期会計期間といいます。

 

1-2-2 四半期決算の開示が義務づけられている会社

日本の証券取引所に上場している会社は四半期決算で作成する四半期財務諸表の開示が義務付けられています。

 

1-2-3 四半期財務諸表

四半期決算で作成される財務諸表のことを四半期財務諸表と言います。
四半期財務諸表で覚えて頂きたいのは、四半期貸借対照表・四半期損益計算書・四半期
キャッシュ・フロー決算書の3つです。

 

1-2-4 簡便な会計処理が認められている

四半期財務諸表の作成にあたっては、年度決算に比べて簡便な方法での作成が認められています。年度決算に加えて3回も財務諸表を作成しなければなりませんので、会社の事務負担を減らすためです。

 

1 一般債権の貸倒見積高の算定における簡便的な会計処理の認容

一般債権の貸倒実績率等が前年度の財務諸表の作成において使用した貸倒実績率等と著しく変動していないと考えられる場合には、四半期会計期間末において、前年度末の決算において算定した貸倒実績率等をそのまま使用することができます。

 

2 実地棚卸の省略の認容

年度末では実地棚卸は必須ですが、四半期会計期間末では実地棚卸は省略可能です。つまり、棚卸資産の金額はコンピュータ内の数値をもって確定ということで問題ありません。

 

3 棚卸資産の簿価切下げにあたっての簡便的な会計処理の認容

四半期会計期間末における通常の販売目的で保有する棚卸資産の簿価切下げにあたっては、収益性が低下していることが明らかな棚卸資産についてのみ正味売却価額を見積り、簿価切下げを行うことができます。逆に言うと、特別な事情がないものは何もする必要がなく、棚卸資産の評価を考えなくてもよいということです。

 

4 経過勘定科目について

財務諸表利用者の判断を誤らせない限り、合理的な算定方法による概算額で計上することができます。

 

5 減価償却費の算定における簡便的な会計処理の認容

固定資産の年度中の取得、売却又は除却等の見積りを考慮した予算を策定している場合には、当該予算に基づく年間償却予定額を期間按分する方法により、四半期会計期間又は期首からの累計期間の減価償却費として計上することができます。

 

また、減価償却の方法として定率法を採用している場合には、年度に係る減価償却費の額を期間按分する方法により、四半期会計期間又は期首からの累計期間の減価償却費として計上することができます。

 

6 税金費用の算定における簡便的な会計処理の認容

税額の算出にあたり加味する加減算項目や税額控除項目を、重要なものに限定することを容認しています。

 

7 税金費用の算定について、四半期特有の会計処理の認容

期首からの累計期間に係る税金費用については、年度決算と同様の方法に代えて、同期間を含む年度の税引前当期純利益に対する税効果会計適用後の実効税率を合理的に見積り、税引前四半期純利益に当該見積実効税率を乗じて計算する方法によることができます。

 

 

1-3  中間決算

年度の中間期までの期間を対象とした企業活動に係る中間的な報告をするためのものです。

 

1-3-1 中間決算の目的

年度決算の途中ということで、投資者の判断上、有用な投資情報を提供するという性格を有しています。

 

1-3-2 中間決算の開示が義務づけられている会社

四半期報告書を提出しない有価証券報告書提出会社については、中間決算の開示が義務づけられています。また、自己資本比率に係る規制を受ける特定の事業を行う会社(銀行業および銀行持株会社、保険業および保険持株会社ならびに信用金庫連合会)は、第2四半期において、中間決算の開示が義務づけられています。

 

1-3-3 中間財務諸表

中間決算で作成される財務諸表のことを中間財務諸表と言います。
中間財務諸表で覚えて頂きたいのは、中間貸借対照表・中間損益計算書・中間キャッシュ・フロー決算書の3つです。

 

1-3-4 簡便な会計処理が認められている

1 税金費用の算定における簡便的な会計処理の認容

中間会計期間を含む事業年度の実効税率を合理的に見積り、税引前中間純利益に税引前中間純利益に当該見積実効税率を乗じて法人税等の額を計算することができます。

 

2 連結財務諸表作成時における簡便的な会計処理の認容

連結会社相互間の債権の額と債務の額に差異がみられる場合には、合理的な範囲内で、当該差異の調整を行わないで債権と債務を相殺消去することができます。

 

連結会社相互間の取引によって取得したたな卸資産に含まれる未実現損益の消去に当たっては、中間期末在庫高に占める当該たな卸資産の金額及び当該取引に係る損益率を合理的に見積もって計算することができます。

 

 

1-4 本決算

1-4-1 本決算の目的

本決算とは、1年間の全ての取引を適正にとりまとめ、最終的に決算書を作成する手続きのことをいいます。決算書は、株主や取引銀行などの外部の利害関係者に対して、年間の経営成績や期末の財政状況を報告するものです。財務内容を表したものが貸借対照表であり、損益計算書です。さらに、決算の利益をもとに税金を計算し、税務申告書を作成します。そして、株主総会において決算書の承認を受けて、税務申告書を提出します。

 

1-4-2 本決算の進め方

1 決算では、決算日の2~3か月前から期末損益を予測する

節税対策や納税資金の準備の選択肢を広げることができます。

 

2  余裕をもった決算スケジュールを立てる

株主総会の日程から逆算して考える必要があります。

 

3 通常の月次決算処理を終えてから年次決算の処理を始める

年次決算は13回目の決算作業と捉えましょう。

 

決算整理作業では、月次決算では行わなかった得意先、仕入先など社外の関係者への残高確認の依頼や、在庫の棚卸、引当金の設定などの作業も発生します。また、税務申告書の作成もしくはレビューを行う税理士との連携が必要となることにも留意しましょう。

 

1-4-3 決算整理作業の留意点

1 貸借対照表の資産・負債の残高を確認

取引先などの計上残高と一致しているか事実確認を行います。

 

2 前払費用、未払費用、未収収益、前受収益の計上額を確定

契約書や請求書などで期間を確認し、適正な期間損益処理を行います。

 

3 固定資産、繰延資産は当期に負担する償却費を確定

固定資産台帳に基づき償却費を計上します。

 

決算整理作業で重要なことは、資産・負債の内容確認と残高の確定です。売掛金が確定すれば収益の売上が確定し、棚卸資産が確定すれば費用の売上原価が確定します。すなわち、貸借対照表の残高を確定することにより、損益計算書の利益を固める作業を行います。さらに、減価償却費の計上や有価証券の期末評価など決算特有の処理を行うことによって利益が確定していきます。

 

決算において1年分の確認作業を行うことは大変ですが、月次決算の段階で資産・負債の内容を確認したり、未払費用や前受収益など決算日をまたいで発生する項目は帰属期間が確認できるように契約書や請求書を整理しておくなど、年次決算を意識した日頃の取り組みによって作業の負担を軽減することができます。

 

 

1-5 損益計算書について

1-5-1 損益計算書でわかること

以下のような例を考えてみましょう。
ここに靴を売る会社があります。この靴を売る会社は、1足5,000円の靴を150足、合計75万円分仕入れてきました。それが1足1万円で売れたため、150万円の売上となりました。
この売上から仕入代金の75万円を引くと75万円になります。そこからお店で働く従業員の人件費、お店の賃料を引くと手元に残ったのは10万円となりました。
損益計算書ではこういったことがわかります。

 

1-5-2 損益計算書の構造を理解しよう

損益計算書は一番上に売上高が記載されて、そこから様々な費用を差し引いたり、本業以外の収益を加えたりしていく構造になっています。
損益計算書には、たくさんの項目が並んでいますが、まずは以下の5つの利益を理解しましょう。

 

  1. 売上総利益 ・・・ 「売上高」から「売上原価」を差し引いたものになります。売上原価とは、仕入代金や原材料費などの費用を集計したものになります。なお、製造業では製造に関わる人件費も、ここに含まれることになります。
  2. 営業利益 ・・・ 売上総利益から「販売費及び一般管理費(販管費)」を引いた利益が「営業利益」になります。ここで、販管費とは主に以下のようなものになります。

     

    主な販管費 内容
    広告宣伝費 商品、サービスを宣伝するための広告やテレビCMの費用
    通信費 電話代、郵送代、インターネット代など
    給与(人件費) 社員に払う給料
    減価償却費 固定資産の価値が減った分を費用としたもの
    賃借料 オフィスやサーバーなどを借りるための費用
    研究開発費 新商品の開発や、商品の改良にかかった費用
    消耗品費 筆記具などの事務用品や、電球、ティッシュペーパーなどの備品の費用

     

    つまり、販売に係る費用や会社の運営、管理に係る費用のことになります。
    営業利益は企業の本業の利益ということができます。

     

  3. 経常利益 ・・・ 営業利益以外に本業以外で発生した利益である「営業外収益」を足したり、費用である「営業外費用」を引いたりしたものが「経常利益」になります。営業外収益には預金の利息や保有株式の配当金、保有不動産の賃貸収入などが、営業外費用には借入金の支払利息や保有不動産の賃貸に係る費用などが含まれます。すなわち、売上規模と比較して借金が多額で利息の支払いに追われている会社では、営業外費用が膨らみ、経常利益が少なくなることになります。
  4. 税金等調整前当期純利益(税引前当期純利益) ・・・経常利益に一時的な利益である「特別利益」と費用である「特別損失」を足し引きした利益が「税金等調整前当期純利益」になります。例えば、不動産の売却による収入やリストラ費用など、毎年発生するものではない一時的な利益や損失が計上されます。
  5. 当期純利益 ・・・ 税金等調整前当期純利益から、法人税など税金を差し引いた利益が「当期純利益」となります。最後に残される利益でありますので、「最終黒字(赤字)」とも表現されます。 

 

 

1-6 貸借対照表について

貸借対照表とは大まかに言うと、「どうやってお金を集めたか、何に使っていたか」が分かるものになります。

 

大きくは3つの部分に分かれており、1つの部分は左側、2つの部分は右側に置かれています。まず、右側は「どうやってお金を集めたか」を表すものになります。更に右側の上が借金である「負債」で、下が株主が出したか、会社自身で貯めたお金である「純資産」の額を表しています。

 

資産 負債
純資産

 

ちなみに負債とは、小学館発行の大辞泉デジタルによると、「①他から金銭や物品を借りて、返済の義務を負うこと。また、その借りたもの。借金。債務。②企業会計で、支払手形・買掛金・借入金のような法律上の債務と、期間損益計算上の費用配分の要請から計上される賞与引当金・退職給与引当金のような負債性引当金などを合計したもので、企業の総資本から自己資本を除いた部分」という意味になります。同じく大辞泉デジタルによると、純資産は「純資産総額から負債総額を差し引いた残額。純財産。正味財産」という意味になります。

 

会社が事業を実施していくためには、お金を集めてくる必要があります。お金の集め方は大きく分けて3つあります。すなわち、銀行からの借金、社債の発行、株式の発行です。
銀行からの借り入れは文字通りそのままなので、負債に計上されることはご理解いただけるかと思います。

 

社債とは、大辞泉デジタルによると、「株式会社が広く一般から長期資金を調達するために発行する債務証券。確定利付証券で、償還が義務づけられている。特定の金融機関が発行する金融債と事業会社が発行する事業債などがあるが、通常は事業債をさす。」です。つまり、社債とは投資家や一般人などからする借金のことです。こちらも負債に計上されることはご理解いただけるかと思います。

 

株式とは、株主が出資したお金のことになります。これは会社は返済する必要はありません。なぜかと申しますと、株主は会社の業績が良ければ、配当という形で会社からお金をもらえますし、上場会社の株式でしたら、株式市場で株式を売却して売却益を得ることができるためです。株主にはこういったベネフィットがあるため、借金のように返す必要はありません。この株主からのお金とそれまで会社が自分で稼いできたお金が純資産に計上されます。

 

次に、左側の「資産」について説明します。今までご説明してきた右側で集めたお金を「何に使用したのか、何を持っているのか」がわかります。
また、左側の「資産」の合計と右側の「負債」「純資産」の合計は必ず一致するようになっています。

 

 

1-7 キャッシュフロー計算書について

キャッシュフロー計算書でわかることは、一言で言いますと、「現金(キャッシュ)の流れ」を教えてくれる表です。

 

1-7-1 キャッシュフロー計算書でわかること

「損益計算書の利益は現金の増加を表すのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、それは違います。損益計算書には欠点がいくつかあり、キャッシュフロー計算書はその欠点を補うものです。損益計算書の欠点を認識していただくと、キャッシュフロー計算書の重要性がご理解いただけるのではないかと思います。

 

大きな欠点を大まかに表現しますと、「損益計算書は実際にお金をもらっていない掛け払いでも、計上できてしまうことです。

 

例えば、靴屋が靴を10個、100個と売っていき、「商売がうまくいっている」と感じていたのに、買ってくれた客全員がクレジットカード(掛け払い、1か月後入金)で買っていったらどうなるでしょうか?

 

靴が売れた月に現金が入金するわけではありませんが、損益計算書には売上高や利益として計上できます。
しかし、仮に靴を仕入れた製造元には、仕入れ代金を当月中に支払わなければいけないとなれば、手元に現金がなく、経営は窮地に陥ってしまいます。
実際、多くの会社は仕入先や販売先などと、その場で現金のやり取りなどはしません。後に代金を支払う約束をすることがほとんどです。つまり、売上と現金が入ってくる時間がずれます。

 

この入金の空白期間に事業を続けるためのお金は「運転資金」と呼ばれます。仮に、この運転資金を確保する方法がなければ、会計上は黒字なのにつぶれてしまう「黒字倒産」の憂き目に遭います。損益計算書だけで経営判断をすると、恐ろしい結果になってしまいます。
もう一つ、損益計算書だけを見ていたら、実際のお金の動きが分からなくなる代表例が「減価償却」です。減価償却は、日常生活ではなかなか接しないもので、難解に思えるかもしれません。ですが、決算書を理解するうえで必要な項目ですので、ぜひご理解いただきたいと
思います。
減価償却とは簡単に言いますと、会社が長期間使用する設備や建物などの資産について、購入に掛かった費用を何年かにわけて計上するルールのことを言います。年数は固定資産の種類や使用状況にもよりますが、建物などは数十年にわたって費用計上します。
ここで、減価償却について1つの例を見てみましょう。

 

例えば、皆様が靴屋を経営していて、靴を運ぶのに必要な自動車を200万円で購入したとしましょう。その自動車は最低でも5年は使おうと考えています。それにもかかわらず、購入した年に一気に200万円の費用を計上してしまうと、1年目だけ赤字が膨らんでしまうことになります。実際には2年目以降もその自動車は活躍し利益に貢献するのに、実態を反映していないことになります。

 

そんなわけで、損益計算書には毎年40万円ずつ「減価償却費」という費用で計上することにします。そうすれば、売上に対応する自動車に係る費用が対応することになり、損益計算書が実態を反映することになります。

 

また、自動車などの資産は使えば使うほど、価値が減少していくが、減価償却費を計上することで価値の減少も貸借対照表に反映することができます。
しかしながら、減価償却は任意性が高いという問題点があります。償却年数を長くすれば、年間の減価償却費の額を下げることができます。例えば、10年償却を20年償却にするだけで、減価償却費は半分になります。そして、その分だけ、利益をかさ上げできるわけです。
また、仮に現金一括で200万円を1年で使い切ったとしても、損益計算書は複数年かけて費用を計上していきますので、現金の動きを反映しないことになります。

 

一方、キャッシュフロー計算書では償却年数の長短にかかわらず、きっちりと、1年目に200万円のマイナスが記載されます。つまり、現金の動きが反映されるわけです。

 

1-7-2 キャッシュフロー計算書の構造を理解しよう

キャッシュフロー計算書の主要部分は営業活動によるキャッシュフロー、投資活動によるキャッシュフロー、財務活動によるキャッシュフローの3つになります。

 

キャッシュフロー計算書では、貸借対照表や損益計算書とは異なり、あくまで現金の流入・流出を記録します。数字の前に何もついていないならば、現金が会社に入ったことを、△なら、会社から現金が出ていったことをそれぞれ表します。営業活動によるキャッシュフロー、投資活動によるキャッシュフロー、財務活動によるキャッシュフローという3区分でキャッシュフローを測定します。そして、「現金及び現金同等物の増減額」は、営業活動によるキャッシュフロー、投資活動によるキャッシュフロー、財務活動によるキャッシュフローの合計で、この1年の現金の出入りを示します。

 

「現金及び現金同等物の期首残高」は期首時点での現金等を示します。そして、「現金及び現金同等物の期末残高」=「現金及び現金同等物の期首残高」+「現金及び現金同等物の増減額」となり、期末時点で現金等がどれだけ手元に残っているかを把握できます。

 

 

2 決算に反映する会社の数に着目した決算の分類

ここからは決算に反映する会社の数が1つか複数かで決算を分類してみることにします。

 

 

2-1 単独決算

単独決算とは、「1 期間の違いに着目した決算の分類」での紹介で想定してきた決算に反映する会社が1社の場合の決算のことを言います。

 

 

2-2 連結決算

今まで説明してきた単独決算で作成される財務諸表には以下のような限界があります。

 

2-2-1 単独決算の限界を連結決算で破る

  1. 親会社がグループ会社に固定資産(建物、土地等)を売却し多額の売却益を計上したとしても、企業グループでみれば内部取引にすぎず、利益は企業グループが得た利益とはなっていません。
  2. 子会社からの配当は親会社の収益となりますが、これは企業グループでみれば内部取引にすぎません。必ずしも親会社の業績がそのまま企業グループ全体の業績とみなせません。
  3. 親会社が保有する子会社株式会社は、取得原価により評価されることから、子会社の業績をタイムリーに反映していません。

 

一方、連結決算で作成される連結財務諸表は、内部取引である企業グループ間取引を相殺消去して、実現していない利益はグループ外の会社にその資産を売却するまで繰り延べる会計処理をします。また、子会社の資産、負債、損益の内容が連結財務諸表上の資産、負債、損益として表示されることから、企業グループの一体となった財政状態および経営成績等を把握するのに必要かつ有用な情報を提供します。

 

2-2-2 連結決算で作成される財務諸表

連結決算で作成される財務諸表のことを連結財務諸表といいます。
連結財務諸表の中で覚えて頂きたいのは、連結貸借対照表、連結損益計算書、連結キャッシュ・フロー計算書の3つです。これまで説明してきた単体のものに「連結」という言葉がつきました。そして、例えば、連結貸借対照表ですと、期末時点の企業集団の財政状態を表します。意味も「企業集団の」という言葉がついただけと認識ください。

 

2-2-3 連結決算の基本的手順

連結決算を行う基本的な手順は以下のとおりです。

 

  1. 予備調査
  2. 連結会計方針の決定
  3. 個別決算と連結資料の収集
  4. 連結財務諸表の作成

 

以下で、それぞれの内容を説明していきます。

 

2-2-3-1 予備調査

予備調査は、連結初年度に実施し、その後においても適時にアップデートされなければならない手続きです。予備調査では、子会社等に対する投資時期・投資額・持株比率等の資本関係を把握すること、取引様態・債権債務・過年度の未実現利益等の各社との取引関係を把握することが求められます。

 

2-2-3-2 連結会計方針等の決定

連結会計方針等の決定も予備調査と同様、連結初年度に行われ、会計基準の変更・事業内容の変化等に応じて適時に見直さなければならない手続です。

 

1 連結および持分法適用の範囲

連結財務諸表作成にあたり、どの会社を連結に含めるかを決定しなければなりません。なお、親会社は、原則としてすべての子会社を連結の範囲に含めなければならず、また非連結子会社および関連会社に対する投資については、原則として持分法を適用しなければなりません。古い話になりますが、山一証券やカネボウは会計基準を守らず、意図的に業績の悪い会社を連結から外すことにより粉飾をしていました。

 

2 連結会計年度

連結会計年度は親会社の会計期間です。子会社の会計期間は、原則的には親会社の連結会計年度に統一します。しかし、決算期が異なっていても子会社は連結のために親会社の決算のタイミングに合わせて仮の決算を行って、数字を出すことができます。
また、連結会計年度と子会社の会計期間の決算期の差異が3か月を超えない場合、そのまま子会社の正規の決算を基礎として連結決算を行うことができます。ただし、この場合には、決算日が異なることから生じる連結会社間の取引にかかる会計記録の重要な不一致について、必要な整理を行わなければなりません。

 

3 会計処理の原則および手続

会計処理の原則および手続を決定します。同一環境下で行われた同一の性質の取引等について、親会社、子会社および関連会社が採用する会計処理の原則および手続は、原則として統一しなければなりません。
したがって、その企業集団の実態に合わせた合理的な会計処理の原則および手続を決定し、早めに子会社および関連会社と打ち合わせ、必要な場合には会計処理について指導を行う必要があります。

 

2-2-3-3 個別決算と連結資料の収集

1 連結会社および持分法適用会社の個別決算

事前に決定した連結会計方針等を踏まえて、適時に連結資料の作成、収集ができるようなタイミングでの決算を行わなければなりません。

 

2 連結資料の収集

連結資料のことは、連結パッケージとも呼ばれます。連結資料とは、連結財務諸表を作成するために必要な個別ベースの貸借対照表・損益計算書をはじめその内訳明細・増減内訳等からなる資料集のことです。これは子会社別・関連会社別に作成されるものです。
連結資料は、子会社・関連会社で作成し、親会社に報告する場合と、決算書等必要な資料を子会社・関連会社から取り寄せて、これをもとに親会社で作成する場合とがあります。いずれで作成するにしろ、作業の迅速化のためには、連結資料の様式をあらかじめ決定しておくことが重要です。

 

3 在外子会社等の財務諸表の換算

在外子会社等の財務諸表は現地通貨で報告されるため、これを円貨に換算する手続が必要となります。換算に関しては外貨建基準に従います。
具体的には、損益計算書項目は期中平均レートまたは決算日レートにより、資産・負債は決算日レートにより円換算されます。純資産に属する項目については、発生時レートで円換算されますが、親会社による株式の取得後に生じた評価・換算差額等に属する項目については決算日レートで換算されます。

 

結果として異なる時点の換算レートを適用することで発生した貸借差額は為替換算調整勘定となり、連結財務諸表のその他の包括利益累計額の区分に計上されます。

 

4 表示組替など

連結精算表から連結財務諸表へ科目の集約等の表示組替を行います。

 

2-2-3-4 連結財務諸表の作成

収集した連結資料をもとにして、親会社および子会社の財務諸表を合算し、連結修正(消去仕訳)を加えて、連結財務諸表を作成します。この手続は連結精算表で行われ、最後に連結貸借対照表、連結損益計算書等に分解されます。
連結キャッシュ・フロー計算書については、連結貸借対照表と連結損益計算書をベースに必要な調整を加えて作成するのが一般的です。

 

 

3 まとめ

期間の違いに着目した決算の分類では、3か月・6か月・12か月と期間が変わると決算の呼び方が変わるということだけでなく、年度決算に比べて短い決算では年度決算よりも簡便的な決算処理方法が認められているということを解説しました。
また、決算に反映する会社の数に着目した決算の分類では、複数の会社の決算情報を反映する連結決算では外部から見ると投資意思決定上不要となる連結グループ内の取引を消去して決算を組むといったことを中心に解説しました。この記事が決算を学ぶ方の役に立ちますと幸いです。

 

 


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