世界で日本語を学ぶ人が増えているのはご存知でしょうか。
日本語を母語としない人たちの日本語能力を測定し認定する日本語能力試験を運営する国際交流基金と日本国際教育支援協会によると、2016年度は73の国・地域と228都市から約76万人の受験者が試験に挑戦したことがわかりました。
これまで過去最高だった2009年の約77万人に匹敵する数で、増加傾向が続けば、過去最高を更新する可能性も出てきました。近年の訪日観客数増加を背景に2013年以降、日本語検定受験者数の伸び率が急上昇しています。
世界の人々を惹きつける日本語検定試験の魅力とは一体なんなのでしょうか。
目次
- 1 注目度が高まる日本語検定試験
- 1-1 5段階にレベル分けした試験制度
- 1-2 小学生から社会人まで幅広く応募されている
- 2 台湾の受験者数が韓国を抜いて2位に
- 2-1 人口比では台湾は世界一?
- 2-2 ビジネスシーンにおける日本語能力を測る試験も
1 注目度が高まる日本語検定試験
検定試験の開始当時、受験者数7000人ほどだった日本語能力検定試験(JLPT)は、約四半世紀の時を経て、76万人以上が受験するまでに成長しました。
・受験者数の推移
試験を主宰するのは独立行政法人の国際交流基金と、公益財団法人の日本国際教育支援協会です。両社は日本語を母語としない外国人のための日本語能力を測る試験として1984年に初めて実施しました。以降、年1回12月にのみ実施されてきましたが、2009年に7月と12月の年2回の実施に改定。また、2010年には、試験内容の見直しを行い、多様化した学習者のニーズに対応した、コミュニケーション能力重視の新しい「日本語能力試験」が誕生しました。
試験改定前の最後の年にあたるに匹敵が受験しました。
1-1 5段階にレベル分けした試験制度
日本語能力検定試験はレベルをN1、N2、N3、N4、N5の5段階に分類して行われます。
もっとも易しいレベルのN5ではひらがな、カタカナを読む、聞くなどの「基本的な日本語をある程度理解することできるかどうか」が問われます。
N4では、基本的な漢字が含まれた日本語を読むことができるか、ゆっくりとした日常会話なら理解することができるかなどが問われます。
N3では、実践的なレベルが要求され、さらに自然に近いスピードで日本語を聞き取り理解できるかどうか、新聞の見出しから情報の概要をつかむことができるかが問われます。
N2では、日本語に対するより深い理解力が求められ、新聞・雑誌の記事や、簡単な評論文、ニュースを読み聞きする力が問われます。
そして最難関のN1では、幅広い場面で使われる日本語を理解することができるかが問われます。
・ 日本語能力検定試験のレベル
レベル | 問われる能力 | ||
---|---|---|---|
N1 | 幅広い場面で使われる日本語を理解可能 | 読む | 幅広い話題について書かれた新聞の論説、評論など、論理的にやや複雑な文章や抽象度の高い文章などを読んで、文章の構成や内容を理解することができる |
聞く | 幅広い場面において自然なスピードの、まとまりのある会話やニュース、講義を聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係や内容の論理構成などを詳細に理解したり、要旨を把握したりすることができる | ||
N2 | 日常的な場面で使われる日本語、より幅広い場面で使われる日本語のある程度の理解が可能 | 読む | 幅広い話題について書かれた新聞や雑誌の記事・解説、平易な評論など、論旨が明快な文章を読んで文章の内容を理解することができる |
聞く | 日常的な場面に加えて幅広い場面で、自然に近いスピードの、まとまりのある会話やニュースを聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係を理解したり、要旨を把握したりすることができる | ||
N3 | 日常的な場面で使われる日本語をある程度の理解が可能 | 読む | 日常的な話題について書かれた具体的な内容を表す文章を、読んで理解することができる |
聞く | 日常的な場面で、やや自然に近いスピードのまとまりのある会話を聞いて、話の具体的な内容を登場人物の関係などとあわせてほぼ理解できる | ||
N4 | 基本的な日本語の理解が可能 | 読む | 基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を、読んで理解することができる |
聞く | 日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる | ||
N5 | 基本的な日本語のある程度の理解が可能 | 読む | ひらがなやカタカナ、日常生活で用いられる基本的な漢字で書かれた定型的な語句や文、文章を読んで理解することができる |
聞く | 教室や、身の回りなど、日常生活の中でもよく出会う場面で、ゆっくり話される短い会話であれば、必要な情報を聞き取ることができる |
1-2 小学生から社会人まで幅広く応募されている
日本語能力検定試験は、下は小学生から上は社会人まで幅広い年齢層から応募されています。
統計データによれば、応募者のうち、大学・大学院生が46.1%と最も多く、次いで会社員・公務員等27.2%、中学・高校生11.8%と続きます。
・応募者の属性
職業 | 全体に占める割合 |
---|---|
小学生(初等教育) | 2.0% |
中学・高校生(中等教育) | 11.8% |
大学・大学院生(高等教育) | 46.1% |
語学学校等その他の教育機関の学生 | 4.7% |
会社員・公務員・教員・自営業等 | 27.2% |
その他 | 7.6% |
無回答 | 0.5% |
2 台湾の受験者数が韓国を抜いて2位に
国別の訪日旅行者数でも常に上位に位置する台湾が、日本語検定能力試験の応募者数において韓国を抜いて世界2位となりました。
2-1 人口比では台湾は世界一?
検定試験の実施機関である語言訓練測験中心(LTTC)によると、国別の応募者では、1位は中国21万人、2位台湾8万人、3位韓国7万9千人となったと発表。台湾メディアの中央通訊社※は、
「トップは中国大陸の21万7000人だが、人口比(台湾の総人口は約2300万人)では台湾の日本語学習熱が相対的に高いことが分かる。」(参照:中央通訊社「フォーカス台湾」)
と分析しました。
日本台湾交流協会によれば、外国で日本語を教える日本語教育機関数で台湾は世界6位で、教師や学習者数でも5位となります。台湾はインターネットやスマートフォンの普及率が高く、日本語を学習するためのリソースが豊富であることが要因とされています。
(出展:LTTC 財團法人語言訓練測驗中心)
※ 中央通訊社(英名:The Central News Agencyは、1924年に創立された台湾(中華民国)の国営通信社。中華圏で最も歴史あるメディアのひとつに数えられる。
2-2 ビジネスシーンにおける日本語能力を測る試験も
日本語能力検定試験のほか、ビジネス場面で必要とされる日本語コミュニケーション能力を測るテストとして、ビジネス日本語能力テスト※(BJT)というものがあります。
公益財団法人である日本漢字能力検定協会が実施している試験で、言葉によるコミュニケーションだけでなく、メール、ファックスなどの文章や図表、写真など、与えられたすべての情報を用いて、日本語を理解、運用し、ビジネス上の課題に対して適切に対応する力を見ることができます。(参照:BJTビジネス日本語能力テスト)
またBJTは、今年4月より紙によるテストを廃止し、コンピューター上で行うCBT(コンピュータ・ベースド・テスティング)方式に移行し、試験実施日が大幅に増加。受験者は世界各国の希望会場の実施スケジュールから、自分の都合に合う実施日を選んで申し込むことが可能で、さらなる受験者の増加が期待できます。
※ BJTビジネス日本語能力テストは主として日本語を母語としない外国人の、ビジネスの場面で必要とされる「実践的な日本語コミュニケーション能力」を測定するテスト。1996年に独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)が実施を始めたテストで、今年20周年を迎える。2009年から日本漢字能力検定協会が事業を継承し、「日本語能力育成活動」の一環として実施。結果は IRT (項目応答理論)に基づいた統計処理により0~800点のスコアで採点され、J1+~J5の6段階のレベルで評価される。受験者の能力の絶対値を測ることができ、能力の変化を客観的に把握できる。BJTの結果は近年、企業において外国人採用・育成・昇格の基準として活用されるケースが増えている。また、外国人が日本に入国・居住するための「在留資格認定証明書交付申請」において、審査の参考として活用されている。(参照:BJTプレスリリース 2016年7月15日付)