平成29年度入社の新入社員の特徴について、5月9日、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが働き方に関するアンケート調査を実施したところ、「給料が増える」ことよりも「残業がない、休日が増える」ことを望む社員の方が多くなったと発表しました。
給料よりも休日を重視する社員の方が多かったのは調査開始以降はじめてで、同社は若者の「自分ファースト」思考が高まっているとコメントしました。
世代が違えば働き方に関する意識は大きく異なります。2017年の新入社員は仕事に何を求めているのでしょうか。
目次
- 1 働き方改革の影響? 自分の時間を重視する若者
- 1-1 給料が増えるよりも休日を重視
- 1-2 就活時にブラック企業を気にする学生
- 2 厚労省、ブラック企業リストを初めて公開
- 2-1 就活生にとってはありがたい?ブラックリスト
- 2-2 街の反応はおおむね好評
- 3 充実した人生を送れるか
1 働き方改革の影響? 自分の時間を重視する若者
本調査は、東京、名古屋、大阪で開催された新入社員セミナーの受講者1300人を対象に、働き方に関する意識調査が行われました。
まず、「会社に対して何を望むか」との質問に対しては「人間関係がよい」と回答する人の割合が最も多くなりました。次いで「自分の能力の発揮・向上ができる」「残業がない・休日が増える」「給料が増える」と続きました。
1-1 給料が増えるよりも休日を重視
本アンケート調査では、5つの選択肢の中から最も望むものから順に3つを選ばせ、1位を3点、2位を2点、3位を1点としてポイント化し、集計したところ、「残業がない・休日が増える」が940ポイントだったのに対し、「給料が増える」は779ポイントと200ポイント近く差が開きました。
・ 会社に望むことランキング
順位 | 会社に望むこと | ポイント |
---|---|---|
1 | 人間関係がよい | 2716 |
2 | 自分の能力の発揮・向上ができる | 1597 |
3 | 残業がない・休日が増える | 940 |
4 | 給料が増える | 779 |
5 | 評価・処遇を公平にしてくれる | 658 |
6 | 私生活に干渉されない | 578 |
7 | 仕事場・休憩室などが快適 | 462 |
8 | 地位が上がる | 158 |
休日を重視する学生は2011年以降は右肩上がりに伸びつづけ、今年ついに給料を重視する学生の割合と逆転しました。一方、給料重視の学生は調査開始の2004年以降は横ばいの状態が続いています。
・ 「残業がない・休日が増える」「給料が増える」の比較
(参照:三菱UFJリサーチ&コンサルティング 2017年度新入社員意識アンケート調査結果 5月9日)
同社調査部の土志田るり子研究員は、職場での活躍や仕事での経験を重視する新入社員も一定層いるとしつつ、
「就業後や休日などプライベートの時間を確保し、オフの時間を充実させることで人生が豊かになると考える新入社員が増えている可能性がある。私生活の確保を仕事選びの基準の1つとし、会社に尽くすのではなく私生活を重視するライフスタイルは、『自分ファースト』と言い換えることができる」
とコメントしました。
1-2 就活時にブラック企業を気にする学生
近年は違法な長時間労働や過労自殺、パワハラ・セクハラなどがニュースになる背景を受けて、自分が就職する会社がいわゆるブラック企業でないかどうかを気にする学生が8割以上にのぼることがわかりました。
就職活動の際にブラック企業でないかを「気にした」学生は52.5%で、「少しは気にした」学生は31.8%と、計84.3%の学生が気にかけていることがわかります。
一方、「気にしなかった」学生はわずか4.4%にとどまり、前年の8.0%からさらに減少しました。
・ブラック企業を気にした学生の割合
2017年度 | 2016年度 | |
---|---|---|
気にした | 52.5% | 49.0% |
少しは気にした | 31.8% | 31.9% |
あまり気にしなかった | 11.2% | 11.1% |
気にしなかった | 4.4% | 8.0% |
※ 厚生労働省は、「ブラック企業」について定義していないが、一般的な特徴として、①労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す、②賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い、③このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う、などが挙げられている。(参照:厚生労働省)
2 厚労省、ブラック企業リストを初めて公開
会社がブラック会社かどうかを、入社前の学生が判断するのは困難とされています。ところが、厚生労働省は、5月10日、最近半年間に労働基準関係法に違反し書類送検した企業の一覧を、同省ホームページに公開したと話題となっています。
2-1 就活生にとってはありがたい?ブラックリスト
掲載された企業はまさにブラック企業のブラックリストとなります。昨年10月から今年3月に書類送検となった事例計334件が一覧でリスト化。企業名だけでなく所在地、違反した法律、事案概要なども記載されており、北海道から沖縄まで全国の違反企業を確認することができます。なお、掲載期間は1年で、厚労省は同リストを毎月更新する方針だとしています。
(▲労基法違反事案の一例 参照:労働基準関係法令違反にかかる公表事案)
厚労省は、事案のホームページ掲載の基準として次の2つの条件を挙げています。
① | 労働基準関係法令違反の疑いで送検し、公表した事案=送検事案 |
---|---|
② | 平成29年1月20日付け基発0120第1号「違法な長時間労働や過労死等が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県労働局長等による指導の実施及び企業名の公表について」に基づき、局長が企業の経営トップに対し指導し、その旨を公表した事案=局長指導事案 |
リストのなかには、新人社員の過労自殺で注目となった広告大手・電通も掲載されており、今後、学生がリストを指標に就職活動を行う可能性も出てきました。
2-2 街の反応はおおむね好評
まさに国家による公開処刑とも解釈されかねない事実上のブラック企業の公表ですが、SNS上は好意的に受けて止めているようです。
ツイッターやフェイスブックなどのSNSでは
「むしろ遅いくらいだ」
「どんどん公表してほしい」
「少なすぎる。本当はもっと多いのでは?」
「これを機に企業側も本気で改善に取り組んでほしい」
などといった意見が見受けられました。
3 充実した人生を送れるか
もはや身を粉にして働くといった言葉が死語になった現代社会。どういった働き方が人生を豊かなものにするかは個人個人が判断して決めるようになりつつあります。
先のアンケート調査では、「では自分の能力向上のために何かしているか」を尋ねたところ、過半数が「なにもしていない」と答えました。
自由意思による行動の選択には常に責任が伴うもの。充実した人生を送るのは簡単なことではなさそうです。