人口減少が深刻化し、海外の労働力に頼らざるをえなくなってきた日本。法務省によれば昨年末の在留外国人数は238万2822人で、前年に比べて15万人の増加となりました。
しかし同時に、近年問題となっているのが不法在留者と不法就労外国人の増加です。2017年1月時点での不法在留者数は6万人を超え、3年連続で増加しています。これを受けて、警察・法務・厚生労働三省庁は、主要経営者団体に対し、同協議会の不法就労外国人問題への取り組み状況を説明するとともに、不法就労防止に向けた協力を要請しました。
犯罪の温床や犯罪率の上昇、テロ等も心配される不法就労問題。不法在留者数の概要や不法就労問題への政府の取り組みなど確認する必要がありそうです。
目次
- 1 在留外国人数は238万2822人
- 1-1 最も多いのは中国人で65万5522人
- 1-2 都道府県別では東京が2位愛知の2倍以上
- 2 国内不法在留者数は約6.5万人
- 2-1 韓国人がトップで1.3万人超え
- 2-2 昨年、強制送還された外国人は約4000人
- 3 不法就労外国人問題をどう解決するか
- 3-1 3省庁連携による経営者団体への要請
- 3-2 犯罪の温床とならないように
1 在留外国人数は238万2822人
まずは、国内に在留する外国人の概要について確認しておきましょう。法務省によると2016年末における在留外国人数は238万2822人で、前年比6.7%(15万633人)の増加となり、過去最高を更新しました。このうち、中期在留者数は204万3872人で、特別永住者数は33万8950人でした。
男女別では、男性113万5081人、女性124万7741人となり、いずれも前年比で増加しています。
1-1 最も多いのは中国人で65万5522人
在留している外国人を国別でみると、中国人が最も多い65万5522人、ついで韓国45万3096人、フィリピン24万3662人となります。
また、増減率をみると、ベトナムが36.1%の増加と最も多く、ついでネパール23.2%、台湾8%とつづきました。一方、韓国は唯一減少に転じました。
・ 国・地域別にみた在留外国人数
順位 | 国・地域 | 人数 | 増減率 |
---|---|---|---|
1 | 中国 | 69万5522人 | +4.5% |
2 | 韓国 | 45万3096人 | -1.0% |
3 | フィリピン | 24万3662人 | +6.1% |
4 | ベトナム | 19万9990人 | +36.1% |
5 | ブラジル | 18万923人 | +4.3% |
6 | ネパール | 6万7470人 | +23.2% |
7 | 米国 | 5万3705人 | +2.7% |
8 | 台湾 | 5万2768人 | +8.3% |
9 | ペルー | 4万7740人 | +0.0% |
10 | タイ | 4万7647人 | +5.0% |
(参照:法務省公表数値より作成)
在留外国人のほとんどがアジア圏出身であることがわかります。ちなみに7位米国の5万3705人は米軍人数※を含めません。
※ 外務省発表数値によれば、米軍人数は2013年時点で約5万4530人(陸軍:2320人、海軍19040人、空軍12400人、海兵隊:20770人)いるとされる。
1-2 都道府県別では東京が2位愛知の2倍以上
次に、都道府県別に在留外国人数をみると、東京都が50万874人で最も多くなりました。ついで愛知県22万4424人、大阪府21万7656人、神奈川県19万1741人、埼玉県15万2486人と大都市圏に集中しました。また、47都道府県全てで在留外国人数は昨年を上回りました。
また、上位5都道府県の中では埼玉県の増加率が最も高く前年比9.2%でした。ついで、東京都8.2%、愛知県7.2%、神奈川県6.5%、大阪府3.6%とつづきました。
・ 都道府県別にみた在留外国人数
順位 | 都道府県 | 人数 | 増減率 |
---|---|---|---|
1 | 東京都 | 500,874人 | +8.2% |
2 | 愛知県 | 224,424人 | +7.2% |
3 | 大阪府 | 217,656人 | +3.6% |
4 | 神奈川県 | 191,741人 | +6.5% |
5 | 埼玉県 | 152,486人 | +9.2% |
その他 | 1,095,641人 | +6.3% |
(参照:法務省公表数値より作成)
2 国内不法在留者数は約6.5万人
2017年1月時点での不法在留者数は6万5270人で前年比3.9%(2452人)の増加となりました。
男女別では、男性が3万5843人で前年比4.0%(1390人)の増加、女性が2万9427人で3.7%(1062人)の増加でした。
2-1 韓国人がトップで1.3万人超え
国・地域別に不法在留者をみると韓国人が最も多く1万3265人と唯一の1万人超えとなりました。ついで中国人8846人、タイ人6507人、ベトナム人5137人、フィリピン人5082人となりました。
また、前年との比較ではベトナム人が34.9%の大幅な増加となっています。ついで台湾9.7%、タイ9.2%の増加が顕著でした。
・ 国・地域別にみた不法在留外国人数
順位 | 国・地域 | 人数 | 増減率 |
---|---|---|---|
1 | 韓国 | 13,265人 | -1.1% |
2 | 中国 | 8,846人 | +1.2% |
3 | タイ | 6,507人 | +9.2% |
4 | ベトナム | 5,137人 | +34.9% |
5 | フィリピン | 5,082人 | -3.0% |
6 | 台湾 | 3,887人 | +9.7% |
7 | インドネシア | 2,222人 | -0.3% |
8 | マレーシア | 1,761人 | -0.1% |
9 | シンガポール | 1,046人 | -0.9% |
10 | ブラジル | 959人 | -2.4% |
(参照:法務省公表数値より作成)
2-2 昨年、強制送還された外国人は約4000人
不法在留外国人のうち、退去強制処分(強制送還)された数は3892人に及びます。
国別では、中国人が最も多い536人で、ついでベトナム人428人で、フィリピン人410人、タイ人239人、韓国人・インドネシア人164人とつづきます。
・ 国・地域別にみた退去強制処分となった外国人数
順位 | 国・地域 | 人数 |
---|---|---|
1 | 中国 | 536人 |
2 | ベトナム | 428人 |
3 | フィリピン | 410人 |
4 | タイ | 239人 |
5 | 韓国 | 164人 |
6 | インドネシア | 164人 |
7 | ブラジル | 151人 |
8 | 台湾 | 21人 |
9 | マレーシア | 16人 |
10 | シンガポール | 6人 |
(参照:法務省公表数値より作成)
3 不法就労外国人問題をどう解決するか
過去最高となった在留外国人数ですが、文書偽造などで身分や在留目的を偽り、不正に在留資格を取得して就労する外国人が後を絶ちません。法務省によると、偽装滞在の手口は、年々悪質・巧妙化しており、最近の特徴としては、明らかに難民条約上の難民に該当しない者が就労・定住を目的として難民認定制度を悪用しているとみられる事案が増加している、とされます。
3-1 3省庁連携による経営者団体への要請
不法就労等外国人問題について、警察庁・法務省・厚生労働省は、不法就労防止に向けた協力を経営者団体に対して要請するなど、解決に向けた取り組みを進めています。また、「不法就労外国人対策等関係局長連絡会議」を設置し、各方面から幅広い対策を講じていく方針です。
・ 不法就労等外国人対策の具体的内容
取り締まりの強化 | 警察、入国管理局が連携して、合同摘発や不法就労の防止に取り組む |
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緊密な情報交換 | 不法就労等外国人及び悪質なブローカー・雇用主等に関す情報を綿密に交換する |
広報・啓発活動の実施 | 外国人雇用状況届出の実施の徹底と不法就労防止のための事業主に対する指導を促進する |
3-2 犯罪の温床とならないように
不法就労外国人の増加は、犯罪の温床やテロへのつながりが懸念されます。法務省は、不法就労者は地下銀行による不正な送金や偽装結婚、不法就労助長等の犯罪インフラ事犯と密接に関連しているため、犯罪インフラ事犯の着実な撲滅のためにも強力な不法就労対策が不可欠であると強調します。
このほか訪日外国人4000万人推進の大きな阻害要因にもなるばかりか、適正な労働力の需給調整の妨げともなると警鐘を鳴らします。