
最近の若者は新聞を読まないと嘆かれてから久しいですが、新聞社にとっては他人事ではありません。
新聞紙の発行部数の減少はとどまる所を知らず、2006年に5230万部だった新聞全体の発行部数が2016年には4327万部となりました。特に最近は1年で100万部減少する傾向で、いよいよ新聞は存続できるかといった論調が目立ち始めました。
目次
- 1 減少が止まらない発行部数
- 1-1 主要紙では産経のみ増加
- 1-2 従業員も過去最大の減少
- 2 もはや新聞は若者に通用しない
- 2-1 20代男女、新聞を読む割合は1割未満
- 2-2 国民の7割は新聞を読んでいない
- 3 新聞業界の未来予測
- 2-1 キュレーションメディアの台頭
- 2-2 「紙媒体VSネットメディア」の考え方はもう古い
1 減少が止まらない発行部数
日本新聞協会によれば加盟130社全体の新聞紙の発行部数は2016年で4327万6147部でした。また1世帯あたりの部数は、2007年に初めて1を割り、現在は0.78。一人暮し世帯の増加やウェブメディアの台頭により、各世帯で1部購読されていた時代は遠い昔の話となっています。
・新聞発行部数※の推移
年 | 合計発行部数 | 1世帯当たりの部数 |
---|---|---|
2006 | 52,310,478 | 1.02 |
2007 | 52,028,671 | 1.01 |
2008 | 51,491,409 | 0.98 |
2009 | 50,352,831 | 0.95 |
2010 | 49,321,840 | 0.92 |
2011 | 48,345,304 | 0.90 |
2012 | 47,777,913 | 0.88 |
2013 | 46,999,468 | 0.86 |
2014 | 45,362,672 | 0.83 |
2015 | 44,246,688 | 0.80 |
2016 | 43,276,147 | 0.78 |
(参照:日本新聞協会)
※ 発行部数は朝夕刊セットを1部として計算。セット紙を朝・夕刊別に数えた場合は、53,689,573部(2016年10月現在)
1-1 主要紙では産経のみ増加
また、一般社団法人ABC協会によれば、読売・朝日・毎日・日経・産経の5大主要紙のそれぞれの販売部数は読売895万部、朝日641万部、毎日305万部、日経272万部、産経158万部となりました(夕刊紙は除く)。
・全国紙の朝刊販売部数
新聞社 | 朝刊 | 夕刊 |
---|---|---|
読売 | 8,954,804 | 2,696,889 |
朝日 | 6,411,033 | 2,015,609 |
毎日 | 3,049,882 | 888,548 |
日経 | 2,723,194 | 1,382,234 |
産経 | 1,581,089 | 457,088 |
(参照:日本ABC協会「新聞発行社レポート半期」2016年7~12月平均)
過去に販売部数1000万部を誇っていた読売新聞は900万部を割るも業界シェアトップを維持しました。2位の朝日新聞は前年より大きく販売部数を減らしました。主要5紙のうち販売部数が増加したのは産経新聞のみとなりました。
(参照:2017/02/14 ガベージニュース)
1-2 従業員も過去最大の減少
また、日本新聞協会では、全国で働く新聞販売従業員数を公表しており、2016年10月時点では前年比1万3,978人減となる31万7,016人でした。従業員数は20年連続の減少となり、団塊世代の現役引退や少子化の影響が現れた結果となりました。
一方、従業員のうち学生(大学生、専門学校生など)は前年比で713人増え、4,573人となりました。ただ、10年前と比較するとおよそ半分に減っており、新聞業界が縮小している様子がうかがえます。
・ 新聞販売所従業員数
年 | 従業員総数 | 学生 | 新聞販売所数 |
---|---|---|---|
2006 | 431,843 | 9,679 | 20,614 |
2007 | 424,778 | 9,572 | 20,424 |
2008 | 417,169 | 8,093 | 20,099 |
2009 | 405,008 | 7,053 | 19,763 |
2010 | 391,832 | 5,975 | 19,261 |
2011 | 377,495 | 5,134 | 18,836 |
2012 | 367,809 | 4,484 | 18,367 |
2013 | 356,186 | 4,161 | 18,022 |
2014 | 344,513 | 4,018 | 17,609 |
2015 | 330,994 | 3,860 | 17,145 |
2016 | 317,016 | 4,573 | 16,731 |
(参照:日本新聞協会)
2 もはや新聞は若者に通用しない
「若者の◯◯離れ」とは、昔の大人の間では当然と考えられていた趣味・嗜好に若者が寄り付かなくなったことを表現した言葉です。「若者のテレビ離れ」「若者のクルマ離れ」などが有名ですが、特に「若者の新聞離れ」が深刻です。
2-1 20代男女、新聞を読む割合は1割未満
昨年、NHK放送文化研究所が発表したデータによれば、若年層における新聞(電子版も含む)を読む割合は、20代男性で8%、20代女性で3%だったことが分かりました。
平日に新聞を読む人の割合を男女年層別にみると、60代以上では男女共に半数を超えていますが、男女20代以下は1割に届きません。
・ 新聞を読む人の割合
(参照:NHK放送文化研究所「2015年国民生活時間調査」)
2-2 国民の7割は新聞を読んでいない
一方、国民全体の新聞を読む割合は平日と日曜で33%、土曜35%、全員平均時間は平日16分、土曜18分、日曜17分でした。1995年から行為者率と全員平均時間は減少が続いているなか直近5年の減少が大きく、平日・土曜・日曜ともに30%台となりました。
さらに新聞を読む人は男性の全ての年層と女性の20~40代、60代と、幅広い年層で2010年から減少しています。
2015年では30代男性の9割、40代男性の8割、50代男性の7割、60代男性の5割が平日に新聞を読んでいないことが分かりました。
3 新聞業界の未来予測
新聞市場の衰退とはうらはらに勢いを伸ばしているのが、ウェブメディアのなかでもキュレーションと言えます。
3-1 キュレーションメディアの台頭
キュレーションメディアとは、いわゆるまとめサイトのことで、溢れかえる情報を分野別もしくや趣味嗜好別に整理整頓して読みやすくしたインターネットメディアになります。
キュレーション市場規模は右肩上がりの成長を続け、矢野経済研究所が行った調査によれば、2016年度には355億5000万円、2017年度には395億3000万円に拡大すると予測。サービス別では、ソーシャルコマースから派生する物品販売(インターネットショッピング)や出店料、手数料の成長率が最も高いと予想しています。
・キュレーション市場の推移
(参照:Optimizer)
3-2 「紙媒体VSネットメディア」の考え方はもう古い
ICTに関する市場調査を行っているICT総研によれば、スマートフォン向けのアプリのなかでも特にニュース系のキュレーションアプリの成長率が高く、利用者は今年度末に3,385万人、2018年度末には5,082万人に達すると予想されています。
・ニュースアプリ利用者の推移
ICT総研は現在のネットメディアと新聞の関係性について
「文字や写真で読むニュースメディアと言えば、これまで紙媒体の新聞が担ってきたが、若年層の新聞離れが続き、ここ数年でネットニュースがニュースメディアの主役となりつつある。国内の新聞発行部数は減少を続け、歯止めがかかっておらず、今後も新聞購読者の増加は見込めないものと見られる」
と分析。さらに今後のニュースメディアについては
「モバイルニュースの利用者だけでも既に5,000万人を超えており、2016年度には7,000万人に達する見込みだ。パソコンやその他の媒体を利用したネットニュース利用者も加えれば、国民の大半が何らかの形でネットニュースを中心に読む時代になってきている。今後は、今まで以上に紙媒体とネットメディア間の競争よりも、ネットニュース内での読者獲得競争がより重要になるだろう。モバイルニュースアプリでの成功が将来のマスメディアを制するという見方すらできる時代になったと言える」(参照:ICT総研「2016年モバイルニュースアプリ市場動向調査」)
と語り、ネットニュースの重要性を指摘しました。
実際、各新聞社も数年前からネットメディアに積極的に進出しており、新聞社提供のニュースアプリが全体の1割を占めています。
・ニュースアプリの利用率
情報の入手はもはや「紙かネットか」かの対立構造によるものではなく、ネットを主戦場にいかに顧客を獲得し、収益に結びつけるかが重要となりそうです。