米コンサルティング会社のデロイトトーマツは今年4月、世界の小売業売上高上位250社のランキングを発表しました。上位3社は昨年と変わらず米企業が独占する形となり、1位ウォルマート売上高4821億ドル、2位コストコ1162億ドル、3位クローガー1098億ドルと続きました。このほか、インターネットショッピング大手のアマゾン・ドットコムが調査開始以来初めてトップ10入りを果たしました。
また、250社のなかに日本からはイオン、セブン&アイ、ファーストリテイリングなど30社がランクインしました。
2010年〜2015年度における小売業の年成長率は5%で推移しており、今後も拡大基調は続くと見られます。
本記事では、デロイトトーマツが公表した「Global Powers of Retailing 2017」をもとに世界の小売業ランキングを見ていきます。
目次
- 1 上位250社の総売上は481兆円に達する
- 1-1 トップ3は米スーパーマーケットが独占
- 1-2 二桁成長を続けたアマゾン
- 2 日本企業、30社がランクイン
- 2-1 TOP250ランクイン数では米国首位、日本2位
- 2-2 アジア太平洋地域と日本の小売業
1 上位250社の総売上は481兆円に達する
デロイトトーマツによる20回目となる世界小売業調査では、世界の小売業大手250社を地域、各部門、流通・販売経路ごとに分析してランキング化しました。
報告書によれば、上位250社の世界小売総売上高は4兆3100億ドル(約481兆円)に達し、平均売上高は172億ドル(約2兆円)となりました。
・ 世界小売売上高トップ10
順位 | 企業名 | 本拠地 | 売上高 | 成長率 |
---|---|---|---|---|
1 | ウォルマート・ストアーズ | 米国 | 4821億3000万ドル | △0.7% |
2 | コストコ・ホールセール | 米国 | 1161億9900万ドル | 3.2% |
3 | クローガー | 米国 | 1098億3000万ドル | 1.3% |
4 | シュワルツ | ドイツ | 944億4800万ドル | 8.1% |
5 | ウォルグリーン | 米国 | 896億3100万ドル | 17.3% |
6 | ザ・ホーム・デポ | 米国 | 885億1900万ドル | 6.4% |
7 | カルフール | フランス | 848億5600万ドル | 3.1% |
8 | アルディ | ドイツ | 821億6400万ドル | 11.5% |
9 | テスコ | 米国 | 810億1900万ドル | △12.7% |
10 | アマゾン・ドットコム | 米国 | 792億6800万ドル | 13.1% |
(デロイトトーマツ「Global Powers of Retailing 2017」より作成)
(出展:Deloitte)
1-1 トップ3は米スーパーマーケットが独占
ランキングの上位3社はいずれも世界的に有名なスーパーマーケットが名を連ねました。1位は米ウォルマート・ストアーズで、2015年度の売上高は4821億3000万ドルでした。つづいて2位コストコ・ホールセール(米国)で1161億9900万ドル、3位クローガー(米国)で1161億9900万ドルとつづきました。
世界30カ国で事業展開するウォルマートは、為替レートの変動、ガソリン価格の下落による燃料販売の不振、ウォルマート・エクスプレス・チェーンを含む店舗閉鎖などにより、2015年度の収益はわずかに減少し、マイナス0.7%に落ち込むも、2位に4倍以上の差をつけて首位を維持しました。
日本にも進出している2位コストコは、既存店売上高は恒常通貨ベースで大幅に増加した結果、2015年度の売上高は3.2%増加しました。
・世界小売トップ250にランクインした日本企業上位10社
順位 | 企業名 | 売上高 | 成長率 |
---|---|---|---|
14 | イオン | 636億3500万ドル | 10.7% |
20 | セブン&アイ・ホールティングス | 477億9500万ドル | 3.2% |
67 | ファーストリテイリング | 142億3900万ドル | 15.6% |
70 | ヤマダ電機 | 134億3400万ドル | △5.6% |
90 | 三越伊勢丹ホールティングス | 106億5800万ドル | 1.4% |
113 | J.フロンントリテイリング | 86億4600万ドル | 4.1% |
116 | ユニーグループ・ホールティングス | 83億0900万ドル | △1.7% |
132 | エイチ・ツー・オーリテイリング | 72億3100万ドル | 14.5% |
136 | 高島屋 | 70億4700万ドル | 0.9% |
140 | ベイシアグループ | 68億6400万ドル | 1.6% |
(デロイトトーマツ「Global Powers of Retailing 2017」より作成)
1-2 二桁成長を続けたアマゾン
また、4位に入った独スーパーマーケットのシュワルツ(Schwarz UnternehmenstreuhandKG)は、ドル建ての売上においてユーロ安の影響を受けたにも関わらず、2015年は好調な成長を維持しました。
5位ウォルグリーンは、2014年、ドラッグストアのアライアンス・ブーツ社とともに「Walgreens Boots Alliance」を創設。新たにグローバル企業となった現在は、米国最大のドラッグストアチェーンとなっています。
世界最大のEコマース業者となったアマゾンは、2000年に初めてトップ250入り(当時186位)したのち、2桁の成長を維持し、2015年にトップ10入りを果たしました。
一方、今回トップ10から脱落してしまったドイツの大手百貨店・小売のメトログループは、同社の最大部門である「Metro Cash&Carry」は、2014年末以降、デンマーク、ギリシャ、ベトナムの卸売業を売却。その結果、2015年度の成長率はマイナス2.5%に落ち込みました。
2 日本企業、30社がランクイン
トップ250に日本企業は合計30社がランクインしました。日本で最も売上高が多かったのはイオンの636億3500万ドル(7.1兆円)で、全体で14位につけました。
次いで20位セブン&アイ・ホールティングス477億9500万ドル、67位ファーストリテイリング142億3900万ドル、70位ヤマダ電機134億3400万ドル、90位三越伊勢丹ホールティングス106億5800万ドル、113位J.フロンントリテイリング86億4600万ドル、116位ユニーグループ・ホールティングス83億900万ドル、136位高島屋70億4700万ドル、140位ベイシアグループ68億6400万ドルがつづきました。
2-1 TOP250ランクイン数では米国首位、日本2位
次にランキングTOP250にランクインした企業の出身国・地域の数では、米国が88社で1位となりました。次いで、2位日本30社、3位ドイツ17社、4位フランス12社、5位中国14社と続きました。
・国、地域別に見たトップ250
国 | 企業数 | 平均売上高 | |
---|---|---|---|
アフリカ・中東 | 9 | 67億3400万ドル | |
アジア太平洋 | 59 | 105億4500万ドル | |
中国(香港含む) | 14 | 113億4100万ドル | |
日本 | 30 | 93億3700万ドル | |
その他 | 15 | 122億1900万ドル | |
ヨーロッパ | 85 | 177億2700万ドル | |
フランス | 12 | 295億2200万ドル | |
ドイツ | 17 | 247億6200万ドル | |
イギリス | 15 | 166億1900万ドル | |
その他 | 41 | 117億6200万ドル | |
南米 | 9 | 76億1500万ドル | |
北米 | 88 | 233億0000万ドル | |
米国 | 82 | 239億7400万ドル |
2-2 アジア太平洋地域と日本の小売業
2015年度は平均7.3%の高い成長率を維持したアジア太平洋地域の小売業者。しかし、デロイトトーマツは、アジア太平洋地域の小売業者について、国際事業投資が世界と比べて進んでいないと指摘します。トップ250にランクインしたアジア太平洋地域の59社のうち、90%が国内で生産しており、また約半数は海外事業からの売り上げを報告に上げていません。
また、デロイトトーマツは、日本の小売業について次のように述べました。
「労働者ベースでは米国と同じペースで成長しているものの、労働者の数が減少しているため、ほとんど成長していない。小売業者は、可能な限り低コストで、競争力のある価格を求められており、デフレや低インフレが続いている。したがって、今後の日本の小売業者にとっては市場シェアの拡大や国外への投資が必要になってくるだろう」
※ 低インフレとは、物価が低水準でほぼ安定している状況を指す。IMFは、金融危機以降の国際的な低インフレの拡がりの最大の要因はグローバル化であると指摘している。(参照:内閣府「先進国における低金利・低インフレ(第1節)」)
諸外国への進出が少ない中、健闘を見せた日本の小売業者。今後は、国内市場の成長が見込めないため、国外への積極的な進出が求められることになりそうです。