
家電量販店大手のビックカメラが4月7日、仮想通貨ビットコインの試験導入を都内の2店舗で実施しました。決済サービスを提供するのは国内最大のビットコイン・ブロックチェーン企業の株式会社bitFlyer。大手小売店での導入は全国初の事例なります。
ビックカメラではかねてより訪日外国人からビットコインで支払えないかとの要望が強く、これに応えることで増加する旅行者の利便性を向上させる狙いです。約26万店の小売店が採用するリクルート提供の決済アプリ「Airレジ」も今夏からビットコインに対応するなど、今後、仮想通貨の利用はますます拡大すると予測されます。
目次
- 1 家電業界初の試みとなったビットコインでの支払い
- 1-1 そもそも仮想通貨って?
- 1-2 ゲームの仮想通貨との違い
- 2 進む仮想通貨制度
- 2-1 決済アプリ“Airレジ”でお支払い
- 2-2 仮想通貨法の施行
- 3 仮想通貨は日本で普及するか
1 家電業界初の試みとなったビットコインでの支払い
仮想通貨ビットコインによる決済サービスを導入したのはビックカメラ有楽町店とビックロ新宿東口店の2店舗です。
導入に際してビックカメラが提携したのは、仮想通貨・ブロックチェーン※企業のbitFlyerとなりました。
株式会社bitFlyerは、SMBCキャピタル、みずほキャピタルといった大手企業の投資会社から出資を受けて設立。ビットコイン販売所・取引所、ビットコイン決済サービスなどを提供する総合プラットフォームbitFlyerの運営、およびブロックチェーンを活用した新サービスの研究開発を行っています。
・ 銀行など一般的な金融機関のシステム
・ビットコインのブロックチェーンシステム
(参照:NHK NEWS WEB)
4月7日より、2店舗にてbitFlyerシステムによるビットコインの支払いを受け付けており、1会計につき10万円相当まで利用することができます。
ビックカメラは、ビットコインの利用について自社HP内で「今般の改正資金決済法の施行に伴い、ビットコインは安全性が向上し、今後国内での普及が進むことが考えられる。また、ビットコインが先行して普及する海外からの観光客の利用も見込んでいる」とコメントしています。
(▲ビットコインの利用開始を案内するビックカメラの広告)
※ ブロックチェーンとは、日本人技術者によって考案されたとされるビットコインの根幹技術。分散型台帳技術とも呼ばれる。アイデアの革新さに加えて、幅広い用途への応用が可能なことから、ブロックチェーンのもたらすビジネスインパクトに多くの企業が注目。巨額の投資を呼び込み、金融サービスにとどまらず国内外で実証実験などさまざまな動きが活発化している。(参照:NTT date)
1-1 そもそも仮想通貨って?
仮想通貨は、モノやサービスを購入する決済手段を持ち、実際の通貨との交換も行うことのできる電子情報データです。
資金決済法は仮想通貨を「不特定多数間での物品購入・サービス提供の決済・売買・交換に利用できる『財産的価値』で、情報処理システムによって移転可能なもの(2条5項)」と定義します。
ビットコインは仮想通貨の代表的通貨で、インターネット上で取引や通貨発行が行われる「分散型仮想通貨」であり、bitFlyer社によれば全世界で約2,000万人(日本では60万人)のユーザーが利用しています。
1-2 ゲームの仮想通貨との違い
仮想通貨で代表的なものはゲーム内の通貨が挙げられます。たとえばオンラインゲームなどでは、ゲーム内の通貨を実際の円やドルで購入することで、ゲーム内の店で武器やアイテムを買うことができますが、ゲーム通貨はあくまでゲーム内での使用に限られるため、たとえば現実世界の商品を購入することはできません。
一方、ビットコインは日常生活で「商品を購入できる」ようにすることを目指して作られたものであり、実物が存在しないだけで国・中央銀行で発行される円、ドル、元、ユーロなどの通貨と同じように使用することできます。
さらに、ビットコインは国家や銀行が関与していないので為替相場とは無関係にあり、例えば個人間の送金において次のようなメリットがあります。
個人間での「直接」送金可能 | 一般的な通貨で送金を行う際、銀行を仲介する必要があるが、ビットコインの場合、直接会って財布からお金を出して支払うのと同じように個人間が直接支払うことが可能 |
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無料または格安の手数料 | 通常銀行送金でも、クレジットカード支払いでも、一定の手数料が存在し、少額の商品の売買が難しくなったり、ビジネスの利益率が下がったりするが、ビットコインでは仲介する組織(国、銀行)が存在しないため、基本的に手数料を払う必要がないビットコインでの決済は銀行を経由した決済では無いので、煩雑な手続きや制限が存在せず、通貨の流通がより自由に行える。また国によって通貨の単位が異なるといった特徴もなく、世界中で同じ通貨が利用できる |
監視・制限が皆無 | ビットコインでの決済は銀行を経由した決済では無いので、煩雑な手続きや制限が存在せず、通貨の流通がより自由に行える。また国によって通貨の単位が異なるといった特徴もなく、世界中で同じ通貨が利用できる |
(参照:bitFlyer「ビットコインを使うメリット」)
現実的にはビットコインの支払いを受け付ける小売店は4,500箇所と限られており、仮想通貨は普及しているとはいい難い状況です。bitFlyer社は「(ビットコインは)円やドル以上に利便性が高く、安定し、世界中で利用できる次世代の通貨である」とコメント。普及のためサービスの質を向上していくとしました。
2 進む仮想通貨制度
4月5日、人材派遣サービス大手のリクルートライフスタイルは、同社が手がける店舗用POSアプリ「Airレジ」を夏頃よりビットコインの決済に対応させる方針であることを発表しました。
2-1 決済アプリ“Airレジ”でお支払い
Airレジは、QRコードを読み込むだけで決済が完了するモバイルペイメントサービスで、商業施設や飲食店、ドラッグストアなどさまざまな店舗に導入されています。
リクルートは近年増加する中国人観光客向けに「支付宝(アリペイ)」※にも対応するなど、観光客誘致に力を入れており、欧米を中心に利用者が多いビットコイン決済に2017年夏に対応する予定。
現在、世界にはさまざまな「ビットコイン」ウォレットアプリが使われていますが、これら全ての決済にAirレジは対応可能とのことです。Airレジは小売店を中心に全国26万店で採用されています。今後さらなる利用拡大が見込まれます。
(▲POSレジアプリのAirレジ 参照:リクルート)
※ 中国Eコマース最大手のアリババが提供するオンライン決済サービス
2-2 仮想通貨法の施行
また、仮想通貨法が施行されるなど仮想通貨普及に向けた制度整備が進行中です。
4月1日、改正資金決済法(仮想通貨法)が施行され、仮想通貨と法定通貨の交換業者に対して登録制が導入されました。仮想通貨交換業者は指定の資本要件・財産的基礎等を満たしたうえで内閣総理大臣の登録を受ける必要があるため、これまで以上にビットコインを安全に入手・管理できるようになりました。
また、平成29年度税制改正の大綱では、ビットコインのほかインターネット上で流通する仮想通貨を購入する際にかかる消費税が7月から非課税となります。「ビットコイン」をより安価に購入できるようになるため、日本国内でも利用者の増加が期待されています。
・平成29年度税制改正の大綱
2)仮想通貨に係る課税関係の見直し ①資金決済に関する法律に規定する仮想通貨の譲渡について、消費税を非課税とする。 ②その他所要の措置を講ずる。 |
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3 仮想通貨は日本で普及するか
現在、仮想通貨利用者の8割は欧米に偏っており、日本を含めたアジア圏の一般消費者の間では馴染みがありません。特に日本では、2014年当時、仮想通貨の最大手だった「マウントゴックス」が経営破綻したニュース※は記憶に新しく、仮想通貨に対していいイメージを持つ人は多いとは言えない状況です。
しかし、仮想通貨をビジネスチャンスと捉える投資家、起業家は多く、政府も悪用防止や利用者保護など法整備を整えたことで、ビットコイン利用者は今後も増え続け、市場規模も拡大するだろうと見られています。
物は試しに、仮想通貨を使ってビックカメラで買い物をしてみてはいかがでしょうか。
※ マウントゴックスのマルク・カルプレス社長は記者会見で「ビットコインがなくなってしまい、本当に申し訳ない」と謝罪し、114億円相当のビッコインが消失したことを発表。仮想通貨に対する社会的な信用は失墜した。