インターネットショッピング最大手のアマゾンは6月、同社オリジナルの配送サービスを拡大し、今後は中堅配送外車や個人事業主などを中心としていく方針を明らかにしました。
アマゾンは、4月、配送の大口顧客であったヤマトが当日配送から撤退する方針であることを受けたのち、日本郵便や中堅宅配業者など他の配送会社などに切り替えていました。新たに当日配送の委託先となった埼玉県の丸和運輸機関は、個人運送業者を組織化するなどして、担当地域を拡大する方針だと見られています。
アマゾンが目指す究極の配達方法は、時間のある一般人や、ドローンやロボットによる宅配だとされています。この度の大胆な配送システムの切り替えはその第一歩となるのでしょうか。
目次
- 1 アマゾンジャパンの新たな配送システム
- 1-1 ヤマトも撤退した「当日配送」の新たな委託先とは
- 1-2 丸和運輸の株価、急上昇
- 2 アマゾン、自社サービスの対象エリア拡大
- 2-1 Amazonフレッシュ、千葉や神奈川も利用可能に
- 2-2 プライム会員向けサービスの「プライム・ナウ」も拡大
1 アマゾンジャパンの新たな配送システム
日本経済新聞(6月22日付け)によると、アマゾンジャパンは、当日配送サービスに対応することができる個人事業主を、東京都を中心に約1万人確保する予定です。
1-1 ヤマトも撤退した「当日配送」の新たな委託先とは
アマゾンの当日配送サービスは、もともと宅配大手のヤマト運輸がメインに請け負っていましたが、人手不足を理由に、今年4月に撤退表明していました
ECサイト市場規模の拡大※とは裏腹にドライバー不足が深刻化する昨今の宅配業界。最も需要が高い都内では、荷物が届かなくなるのではないかといった不安の声も聞かれました。
そこでアマゾンジャパンは、新たな委託先として埼玉県吉川市に本社を構える中堅物流会社「丸和運輸機関」を指名。丸和運輸は、一般の宅配配送を含む運輸事業のほか、ロジスティクス事業やコンサルティング事業、倉庫事業などを営む、東証一部上場企業で、全国に104箇所の支店・営業所を持ちます。同社が運営するネットスーパー※や、桃太郎便は引っ越しサービス、宅配サービスとして有名です。
(▲同社が運営する引っ越し・宅配の「桃太郎便」サービス)
日経新聞(6月22日付け)によれば、丸和運輸は、今月初めより東京23区の一部で当日配送サービスを受託しており、また、個人運送事業者を組織化することで対象地域の拡大を狙っているとされます。すでに軽貨物自動車を数百台用意し、年内には1000台まで拡大、ドライバーは1000人用意する予定であるとされています。
※ 経済産業省の報告書によれば、2015年のBtoC※のEC市場規模は、前年比7.6%増の13兆7,746億円に拡大。過去5年間のECの市場規模を見ると、2014年までのEC全体の市場規模は前年比10%以上の伸び率で成長している。個人間の売買であるCtoCのEC市場は、『BASE(ベイス)』、『STORES.jp』などの個人が手軽にネットショップを出店できるフリマアプリを中心に、サービス知名度をあげ、出店数が増加している。2016年以降もCtoCのEC市場は拡大すると見られている。
※ ネットスーパーは、総合スーパー(GMS)、スーパーマーケット(SM)が提供するネットスーパーサービスの当日お届けサービス。丸和運輸は、ネットスーパーに係る物流業務として、商品の検品、購入者への配達、代金の回収を担当。また、ネットスーパーを手掛けていないスーパーマーケットに対して、ゼロベースからネットスーパーを立ち上げるノウハウの構築や、立ち上げから運営までのアドバイジングなども行う。(参照:丸和運輸機関ホームページ)
1-2 丸和運輸の株価、急上昇
丸和運輸がアマゾンジャパンの受託を始めたとの報道を受けて、同社の株価が年初来の高値をつけました。
報道があった同日、丸和運輸の株価が急上昇。取引開始直後、前日比695円高の4735円を付け、年初来の高値となりました。アマゾンジャパンとの関係強化から業務の拡大など先行き期待が高まった結果だと見られています。なお、終値は前日比200円高の4205円でした。
(▲6月22日付けの丸和運輸の株価 最大で4735円を付けた 参照:ヤフーファイナンス)
2 アマゾン、自社サービスの対象エリア拡大
アマゾンジャパンは6月、同社が運営する「アマゾンフレッシュ」と「Prime Now(プライム・ナウ)」の対象エリアを拡大することを発表しました。
2-1 Amazonフレッシュ、千葉や神奈川も利用可能に
同社が運営するアマゾンフレッシュとは、新鮮な肉、魚、卵、乳製品などの生鮮食品を注文から最短4時間で届けるという宅配サービスです。午前8時から深夜0時までの間、2時間ごとの時間帯から指定可能で、注文額が税込み6,000円以上の場合、配送料は発生しません。税込み6,000円未満の場合は、1回の注文あたり500円の配送料が発生します。
(▲アマゾンフレッシュのウェブサイト)
アマゾンジャパンは、ニュースリリース(6月15日付け)にて、これまで対象エリアだった都内23区の一部を拡大し、千葉県や神奈川県の一部まで広めたとアナウンスしました。
「生鮮食品や専門店グルメ、日用品をまとめてお届けするAmazonプライム会員向けサービス「Amazonフレッシュ」(www.amazon.co.jp/fresh )の配送対象エリアをこのたび拡大いたしました。今年4月21日(金)に当サービスの提供を開始した時点の配送対象エリアは、東京都の港区、千代田区、中央区、江東区、墨田区、江戸川区の6区域(一部エリアを除く)でしたが、現在は、東京都の18区、狛江市、調布市、千葉県の市川市、浦安市、および神奈川県川崎市(いずれも一部エリアを除く)に拡大し、より多くのAmazonプライム会員の方々にご利用いただけるようになりました」
・対象エリア(赤字が今回拡大した地域)
東京都 | 港区、千代田区、中央区、江東区、墨田区、江戸川区、新宿区、文京区、台東区、荒川区、足立区、葛飾区、渋谷区、目黒区、世田谷区、杉並区、品川区、大田区、調布市、狛江市 |
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千葉県 | 市川市、浦安市 |
神奈川県 | 川崎市中原区、多摩区、宮前区、高津区 |
2-2 プライム会員向けサービスの「プライム・ナウ」も拡大
また、プライム会員向けサービスの「プライム・ナウ」の対象エリアを都内10都市にまで拡大することを発表しました。
プライム・ナウとは、対象エリアからの注文なら1時間以内で商品の受取ができるサービスです。2時間単位の配達時間を選ぶこともでき、対象商品は2500円以上からで、「1時間以内配送」の場合、配送料が別途890円発生します。
(▲アマゾン「プライム・ナウ」のウェブサイト)
同サービスは国内では2015年から開始され、現在は東京都内の23区全区、今回拡大した武蔵野エリアに加え、神奈川県、千葉県、大阪府、兵庫県の一部エリアで利用することができるようになりました。
・ 配送エリア(アマゾンによる販売商品に限る)
東京都 | 千代田区、中央区、台東区、墨田区、江東区、文京区、荒川区、足立区、葛飾区、江戸川区、世田谷区、目黒区、大田区、品川区、渋谷区、港区、杉並区、新宿区、中野区、豊島区、北区、板橋区、練馬区、調布市、狛江市、武蔵野市、三鷹市、西東京市、東久留米市、小平市、小金井市、国分寺市、国立市、府中市、稲城市 |
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神奈川県 | 川崎市(川崎区、幸区、高津区、中原区、宮前区、多摩区)、横浜市(旭区、保土ヶ谷区、磯子区、神奈川区、港北区、緑区、南区、中区、西区、鶴見区、都筑区) |
千葉県 | 浦安市、市川市 |
大阪府 | 大阪市(旭区、中央区、福島区、東成区、淀川区、東淀川区、西淀川区、城東区、北区、此花区、港区、浪速区、西区、大正区、天王寺区、鶴見区、都島区)、守口市、摂津市、吹田市、豊中市 |
兵庫県 | 尼崎市、伊丹市 |
アマゾンジャパン合同会社プライム・ナウ事業部は、同社ニュースリリース(6月21日付け)にて、
「プライム・ナウを武蔵野市や三鷹市などの東京都内10市でご利用いただけるようになったこと、また、東京、神奈川、千葉エリアにおいて、フルーツ、サラダ、総菜といった新たな食料品の品揃えをご提供できるようになったことを大変嬉しく思います。ご注文から1時間以内もしくは2時間単位の時間指定でご注文の当日にお届けするプライム・ナウ(Prime Now) を、一人でも多くのアマゾンプライム会員の皆様にご利用いただけるよう、引き続き品揃えならびに対象エリアの拡充に努めてまいります」
とコメントしました。
このほか、無人航空機によるドローン配達や、完全自動運転車による配達を計画しているとされるアマゾン。配達方法の多様化はすさまじいスピードで実現しようとしています。