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2017年悲惨指数ランキング、最も悲惨なのはベネズエラ、日本は下から4番目

米経済誌ブルームバーグが今年3月に発表した、各国の経済的な貧窮度合いを示す悲惨指数「Misery Index=ミザリー・インデックス」によると、「最も悲惨である」国には経済破綻寸前とも言われるベネズエラ、次いで、失業率が25%を超える南アフリカ、3位にはインフレ率が20%を超えるアルゼンチンが、それぞれ選出されました。また、最下位(最も悲惨でない国)はタイで、日本は61位(最下位から4番目)となりました。

 

悲惨指数(ミザリー・インデックス)とは、インフレ率と失業率を足した数値で、その国の経済的な困窮状況を示す指標となります。数値が高いほど悲惨度が高く、低いほど幸福であることを示します。

 

ブルームバーグは世界65カ国を悲惨指数に基づいてランキングを作成しました。本記事では、ブルームバーグの公表資料をもとに、各国の悲惨指数を詳細に見ていきます。

 

 

1 最新悲惨指数ランキングを確認

もともと悲惨指数は、米経済学者のアーサー・オークンが考案した経済指標で、10.0以上は国民に対する経済的苦痛が大きいと判断されます。
従来的な悲惨指数にブルームバーグが独自に調査した数値でランキングを作成した結果、上位10カ国は、1位ベネズエラ、2位南アフリカ、3位アルゼンチン、4位ギリシャ、5位トルコ、6位スペイン、7位ウクライナ、8位セルビア、9位ブラジル、10位ウルグアイとなりました。

 

・ 悲惨指数ランキング TOP10

順位 国・地域名 悲惨指数
1 ベネズエラ 499.7
2 南アフリカ 32.3
3 アルゼンチン 30.9
4 ギリシャ 23.2
5 トルコ 19.8
6 スペイン 19.6
7 ウクライナ 19.0
8 セルビア 17.9
9 ブラジル 17.3
10 ウルグアイ 15.9

(ブルームバーグ発表資料より作成)

 

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1-1 最も悲惨な国であるベネズエラ

悲惨指数において2位以下を大きく突き離してトップに立っているベネズエラは、原油価格の暴落によりインフレ率が491.9%に達するなど経済的危機に直面しています。さらにマドゥーロ大統領政権の政治的腐敗に対して市民による抗議運動も激化しており、政権運営は不安定な状態が続いています。

 

海外メディアによれば、マドゥーロ大統領が2013年に就任して以降、経済規模は18.6%縮小したと言われており、国際通貨基金(IMF)は、今年度末までにインフレ率は2200%に達する見込みとの試算を発表しました。

 

世界有数の産油国だったベネズエラ。しかし、昨年は原油価格が再度暴落したことから最貧国の1つとなっています。

 

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(ベネズエラのニコラス・マドゥーロ大統領 / 出展:Irish Sun

 

 

1-2 経済回復に向けて道半ばのアルゼンチン

2001年にデフォルト(債務不履行)に陥るなど、幾度となく財政破綻を繰り返してきたアルゼンチンは、国際的な信用を取り戻せてはいません。25%を超える失業率など経済政策の根底に大きな問題を残しています。反米政権の政策で日本や欧米との関係が遠ざかっていましたが、現マクリ政権は今年5月に日本を訪問して首脳会談を行うなど、貿易面での再構築を図る方針です。

 

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(アルゼンチンのマルシオ・マクリ大統領 / 出展:The Daily Beast

 

1-3 上位に中東・東欧地域は少ない

悲惨指数ランキングでは、上位に中東や東欧諸国は数少ないのが特徴的です。

 

昨年45位だったポーランドは今年、65カ国中28位となりました。金融危機以来失業率が着実に低下しているものの、ポーランドではデフレ期が最長記録を更新し、インフレ率は今年1月に1.8%まで上昇しました。

 

バルト3国のルーマニア(45位)、エストニア(25位)、ラトビア(18位)とスロバキア(22位)では物価上昇を招いた結果、いずれも前年より順位を大きく押し上げる要因となりました。

 

このほか、メキシコ(31位)も昨年の悲惨指数6.7から9.3と上昇しました。インフレ率では昨年の2.8%から2017年には5%になると予測されています。また、昨年11月の米国大統領選挙以降、メキシコ政府による燃料補助金が打ち切られ、さらに今年1月にメキシコペソの対ドル価格が下落、1ドル=21ペソ台と史上最安値を付けたことが悲惨指数上昇の要因となりました。

 

・ 悲惨指数ランキング 11位~30位

順位 国・地域名 悲惨指数
11 コロンビア 14.1
12 クロアチア 13.7
13 イタリア 12.8
14 カザフスタン 12.5
15 キプロス 12.1
16 ポルトガル 11.8
17 コスタリカ 11.5
18 ヨーロッパ地域 11.0
18 ラトビア 11.0
20 フランス 10.9
21 ロシア 10.3
22 スロヴァキア 10.2
23 チリ 9.8
24 インドネシア 9.8
25 ベルギー 9.7
26 フィンランド 9.7
27 エストニア 9.7
28 ポーランド 9.6
29 リトアニア 9.5
30 ペルー 9.4

(ブルームバーグ発表資料より作成)

 

 

2 最も悲惨でない国はタイ、日本は4位

今年、悲惨指数を最も低く保つことができたのはタイとなりました。ついで、シンガポール、スイス、日本、アイスランド、台湾、デンマーク、イスラエル、韓国、香港と続きました。

 

順位 国・地域名 悲惨指数
56 香港 6.0
57 韓国 5.6
57 イスラエル 5.6
59 デンマーク 5.4
60 台湾 5.2
61 アイスランド 4.6
62 日本 3.6
62 スイス 3.6
64 シンガポール 3.1
65 タイ 2.6

(ブルームバーグ発表資料より作成)

 

 

2-1 経済的な強みを見せるアジア諸国

悲惨指数ランキングでは、数値が低いほど、経済的に安定していることを示します。
下位10カ国・地域のうち、アジアから6つが入るなど、安定性の強さを見せました。

 

特に近年失業率1%以下を維持しているタイでは、バンコクを中心に日系企業が8000社以上進出するなど、多くの雇用創出に貢献しています。タイの労働市場の特徴として農業就職者が多いことも悲惨指数が低い要因の一つですが、近隣のフィリンピンやインドネシアと比べてみても失業率は低水準となります。

 

内閣府はタイの失業率が他のASEAN諸国と比べて低い理由について、『なぜタイの失業率は低いのか?~低失業率の背景と物価への影響~』のなかで

 

「農業部門就業者比率や低雇用といった要因だけでは説明できなかった。また、季節休業者の取り扱いの違い、調査表の様式の違いに起因するバイアスなどは一定程度存在するものの、労働者・失業者の定義などに決定的な違いは見られなかった。一方、人口動態や最低賃金の推移などは他の国とは大きく異なり、これらの要因が失業率の低下に寄与したものと考えられる」(内閣府経済社会総合研究所発表資料)

 

と述べました。

 

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(出展:Ajarn.com)

 

 

2-2 そのほか改善を見せた国々

このほかノルウェー(47位)、ペルー(30位)、そして中国(52位)は前年より悲惨指数を改善させました。

 

ノルウェー経済は石油価格の下落により低成長となった一方、北部では産業の多様化により安定しています。また、昨年の物価上昇率は3.6%と高水準で、失業率は4.8%だったため、ブルームバーグはまだ改善する余地があるとしています。

 

ノルウェー地方金融公社によれば、今後のノルウェー経済は、低い失業率、石油産業からの需要の減少の減速、および国際的成長の増加の見込みなどから回復すると予想されます。また住宅部門での投資増加、および充実した財政政策もまた、将来回復するとの大きな根拠となるとしました。

 

ペルーは、前年より悲惨数値を大きく改善させて順位を13あげました。
昨年、ペルーでは干ばつの影響により農業が打撃を受けたため食料価格が高騰しました。また国内需要の弱さが労働市場を圧迫しました。一方、貿易収支は,25百万米ドルの黒字となるなど好調だったため、ペルー中央銀行は、今後の投資と貿易面での改善に期待を寄せています。

 

このほか香港、台湾、オランダ、中国、エクアドル、ロシアでも前年より悲惨数値が改善した結果、それぞれ順位を9つ以上下げました。世界第2位の経済大国となった中国の見通しは明るく、一方、米国も改善させましたが、指標ではいくつかの項目で中国を下回ります。

 

・ 悲惨指数ランキング 31位~55位

順位 国・地域名 悲惨指数
31 スリランカ 9.3
32 メキシコ 9.3
33 スロベニア 9.1
34 カナダ 8.7
35 エクアドル 8.6
36 ブルガリア 8.6
37 アイルランド 8.4
38 フィリピン 8.4
38 スウェーデン 8.3
40 ルクセンブルグ 8.1
41 オーストリア 7.8
41 ドイツ 7.8
43 オーストラリア 7.7
43 イギリス 7.6
45 ルーマニア 7.5
45 エルサドバトル 7.5
47 ノルウェー 7.3
48 チェコ 7.1
49 アメリカ 7.0
50 ハンガリー 6.9
51 オランダ 6.8
52 中国 6.4
53 ニュージーランド 6.3
54 ベトナム 6.2
55 マレーシア 6.1

(ブルームバーグ発表資料より作成)

 

 


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