
1999年の創業以来、瞬く間にアジア圏最大手のECサイトへと成長したアリババ。Amazon.comを脅かす存在として今もっとも注目されている中国企業です。2014年にニューヨーク証券取引所上場時には時価総額2000億ドル(約22兆円)に及ぶなど、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長してきました。
今年に入ってからは大手百貨店チェーンの上海百聯集団との提携や、送金サービスを行う米企業・マネーグラムを買収、自動車向けAR(拡張現実)ホログラム開発を手がけるスイス企業に1800万ドルの出資をするなど世界市場に積極的に進出しています。
果たして、アリババはどこまで大きくなるのでしょうか。
目次
- 1 アリババグループの概要
- 1-1 ECサイトで急成長
- 1-2 11月11日の「独身の日」が大一番
- 1-3 史上最大の新規株式公開
- 2 世界市場の覇権を狙うアリババ
- 2-1 アメリカ進出
- 2-2 インド企業の買収でアジア市場も手中に
- 3 自動車向けAR分野にも進出
- 3-1 フロントガラスにナビ情報を表示
- 3-2 米で100万人の雇用を創出?
1 アリババグループの概要
中国企業のアリババ・ホールディングス(阿里巴巴集団)はBtoB取引を行う「アリババドットコム」や中国最大手のオンラインショッピングモール「天猫Tmall」を運営する会社です。
1-1 ECサイトで急成長
同社はジャック・マー(馬雲)代表によって1999年3月に設立。BtoBプラットフォームサービス※のアリババドットコムを軸に成長し、現在世界で190カ国約3,670万人のユーザーがおり、中国国内だけでも約7,770万人が利用しています。
また、天猫Tmallは2008年に設立された、中国でもっともアクセスの多いECサイトで、家電や書籍、家具、靴などあらゆる商品を取り扱います。ユニクロ、アディダス、P&G、ユニリーバ、ギャップ、レイバン、ナイキ、リーバイスなど日本や海外ブランドメーカーも同サイトでオフィシャルショップを運営。
(▲天猫Tモールのウェブサイト (出典:天猫tmall.com))
2012年の11月11日に、1日の流通総額が191億元(2388億円)の最高記録を達成し、年間流通総額は初めて1兆元(16兆円)を突破しました。
・このほかアリババが提供するサービス
タオバオマーケットプレイス(淘宝网.com) | 2003年にオープン。中国最大のC2Cショッピングサイト。中国EC市場において、eコマースのエコシステムの理解を促し、高品質のユーザーエクスピリエンスを提供するとしている |
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イータオ(一淘.com) | 商品や会社情報を検索する総合ショッピングサーチエンジン。現在、約10億品の商品がリストアップされ、5,000以上のB2Cマーチャントと、約2億のショッピングに関連した情報が検索可能 |
ジュファサン(聚划算) | 総合的な共同購入サイト。高品質な商品や地域サービスを提供。2012年の流通総額は昨年の2倍以上となる207.5億元を突破し、年間2000万人以上のユーザーがジュファサンを通じて商品を購入している |
アリウン(阿里云) | 高度なデータ処理を実現するクラウド・コンピューティングサービスを提供。eコマース取引における大量のデータの高速処理、データマイニング等、顧客のニーズに応じた包括的なネット・サービスを提供し、eコマースのエコシステムとアリババグループ全体をサポートしている |
アリペイ(支付宝) | 中国最大のエスクロー決済サービス。VisaやMasterCardを含む中国国内の170の金融機関と業務提携し、46万以上の中国企業にウェブショップ、オンラインゲーム、通信、ビジネスサービス、チケット販売、水道光熱費などの決済プラットフォームを提供。 |
(参照:アリババ)
1-2 11月11日の「独身の日」が大一番
中国では11月11日は「独身の日」とされ、各ネット通販ショップが一斉に値下げ合戦を繰り広げる、年に一度の大商戦日です。もとは独り者の若者が集まって楽しく過ごそうという日でしたが、2009年にアリババがセールを始めてからは他のネットショップもこぞって参入。わずか数年で買い物の一大イベントとなりました。
(▲1207億元を突破したことを知らせる巨大モニター (出典:BBC 中文网))
「独身の日」の売り上げは、2014年で571億元(1兆円)、2015年で912億元(1兆7000億円)、2016年で1207億元(1兆8600億元)と、24時間で売り上げる数字としては桁違い。2016年度のヤマダ電気の売上高が1兆1617億円なので、アリババはわずか1日でヤマダ電気の1年間の売り上げを軽々と超えます。
・ 年別11月11日の売り上げ
(▲オンラインショッピングサイト「天猫」 参照:Weibo Japan)
※ BtoBプラットフォームサービスとは、世界のバイヤーとサプライヤーが行う商品の受注・発注や請求をオンライン上で行えるシステムのこと。
1-3 史上最大の新規株式公開
アリババは2014年9月、ニューヨーク証券取引所に上場し、新規株式公開(IPO)規模は史上最大の250億3000万ドル(2兆7000億円(当時))となりました。初値は公開価格68ドルを上回る92.7ドルでした。時価総額は2310億ドル(25.7兆円)におよび、米スーパーマーケット最大手のウォールマート・ストアーズやアマゾン・ドットコムを追い抜き、世界の小売最大手に躍り出ました。
当時、アリババの主要株主だったソフトバンクや米ヤフーが受ける恩恵も大きく、ヤフーは約80億ドル相当のアリババ株を売却しました。
2 世界市場の覇権を狙うアリババ
海外事業の拡大を図るアリババは、世界各国の大手IT企業の買収を繰り広げています。
2-1 アメリカ進出
2010年、アリババは、米国進出の足がかりとしてオンライン販売支援サービス会社Vendio Servicesの買収したと中国メディア網易が伝えました。Vendio社は、企業クライアントがアマゾンやイーベイ(e-bay)などのプラットフォームに製品を販売する支援を行っていた会社で、世界200カ国で23万のネットワークを所有します。網易によれば、買収によりアリババは新たに8万社のクライアントを獲得しました。(参照:レコードチャイナ)
また、2017年1月、アリババ代表ジャック・マーが経営するアント・ファイナンシャル(螞蟻金融服務集団)は、国際送金サービス大手のマネーグラム・インターナショナルと8億8000万ドル(980億円)で買収することで合意。24億に及ぶマネーグラムのネットワークをアントの顧客と結び付ける狙いです。アントは2016年にも、生体認証ソフトウエアを手掛けるアイベリファイ社を買収しています。(参照:ブルームバーグ)
2-2 インド企業の買収でアジア市場も手中に
フォーブスによれば、3月、アリババがインド大手ECのPaytmに1億7700万ドルの出資後、同社株式を4200万ドルで取得したと発表。インドのeコマース市場を牽引するアマゾンに真っ向から対決する姿勢を打ち出しました。
Paytmはモバイル決済のプラットフォーム開発を手がける企業です。現在、インドEC市場はアマゾンとFlipkartの2社が70%を占めており、出遅れている状況。アリババによる巨額出資で十分な活動資金を得たPaytmは、今後、EC市場の拡大を狙うとされています。
(▲インド・Paytm製品 (出典:bizztor.com))
また、アリババ代表ジャック・マーは、マレーシア政府のデジタル経済アドバイザーも兼任しており、傘下のLazadaグループ※を中心に東南アジア市場で台頭しています。
さらに米経済誌フォーブスによれば、中国の習近平国家主席は、今年のダボス会議で経済のグローバル化を国家戦略に掲げており、アリババはその先兵としの役割を果たしているといいます。中国人の海外移住者5000万人のうち、3270万人は東南アジアに分布しており、アリババにとって東南アジアは文化的親和性が高く、中国の海外投資に関しては、注目が集まるアフリカよりも東南アジアの重要性の方がはるかに高いようです。(参照:フォーブス)
※ Lazadaはシンガポールに本部を置く、2011年にロケットインターネットによって設立されたeコマース企業。アリババが同社株式の過半数を所有している。
3 自動車向けAR分野にも進出
グーグルは自動車の自動運転技術に進出しましたが、アリババは自動車向けARの開発に進出しはじめました。
アリババは、AR(拡張現実)技術※を用いたナビゲーションホログラムの開発を手がけるスイス企業WayRayに対し、1800万ドルを出資すると発表しました。
アリババは最終的に声だけで車の操縦ができるようにしたい考えで、この取り組みはAlibabaが投資する独立系スタートアップのBanma Technologies と中国最大の自動車メーカーである SAIC Motor(上海汽車)を通じて進めているプロジェクトです。
3-1 フロントガラスにナビ情報を表示
WayRayはクルマのフロントガラスに目的地までの時間・距離・方向などのナビゲーション情報をホログラフィックで投影させる技術を研究。さらに、ドライバーのクセや行動パターン情報を収集するスマート・ドライビング・アシスタント機能を開発中とのことです。
(▲フロントガラスに駐車案内情報を表示 (出典:GoGlasses))
運転者はこれまでのようにカーナビに視線を落とす必要はなく、運転に集中することができ、安全性が向上するといったメリットがあります。
情報サイトのザ・ブリッジによれば、2017年にはWayRayはコンシューマー版をリリース予定であり、世界の各大手自動車メーカーと契約を締結し、同社のARホログラッフィクナビ機能を搭載予定であるとしています。共同開発するBanma Technologies(斑馬集団)とのパートナーシップを通じて取り組んでいる自動車メーカーとそのモデルについては明らかにしていませんが、米国と中国におけるドライビングスタイルの分析を目的に、今後数か月の間に当技術を使用した製品の小売り販売を両国で開始することを明かしました。(参照:THE BRIDGE)
3-2 米で100万人の雇用を創出?
アリババ代表のジャック・マーは1月にトランプ大統領とトランプタワーで会談し、今後5年間で100万人の雇用をアメリカ国内で創出すると伝えました。
これに対しトランプ米大統領は「すばらしい会談だった。彼(ジャック・マー)は世界で最も偉大な事業家の一人だ」と語り、褒め称えました。
(▲右がアリババ会長のジャック・マー氏 (出典:AFP))
まだまだ止まる気配を見せない巨大企業アリババ。今後もその動向から目が離せません。
※ AR(Augmented Reality=拡張現実)とは、目の前に存在する実環境にバーチャルな情報を重ね合わせて表示する技術または表示された環境を指す概念。(参照:独立行政法人 情報処理推進機構)