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米投資会社の格付けでトリプルAを獲得したAIIB 〜一帯一路は加速する?〜

(出展:The Business Times)
(出展:The Business Times)

中国の大国化が止まりません。21世紀版のシルクロードを建設しようと“一帯一路”の構想を練る中国。2014年に提唱したこの巨大経済圏構想は、アジアから欧州までの国々をつなぎ、インフラ投資などにより中国主導の枠組みを形成しようとする狙いがあると言われています。

 

中国が主導するアジアインフラ投資銀行のAIIBも、一帯一路構想に必要な資金を確保するために設立されたとの見方が強く、日米は2017年7月時点では参加を見送っているものの、参加国は80カ国までに拡大しています。
また、AIIBは6月、米投資会社から最高ランクである「Aaa(トリプルA)」の格付けまで獲得しました。

 

他国化の象徴である一帯一路構想はどこまで実現しているのでしょうか。

 

 

目次

  1. 1 最上位の格付けとなったAIIB
  2. 1-1 重要案件は中国に拒否権あり
  3. 1-2 AIIBの金総裁、総会で透明性を強調
  4. 2 中国が掲げる一帯一路構想とは
  5. 2-1 日本、「一帯一路」に協力を表明
  6. 2-2 全世界が対象!?「一帯一路」の今後

 

1 最上位の格付けとなったAIIB

米格付け会社ムーディーズ※は6月、AIIBに対し最高水準であるトリプルAの格付けを与え、「格付け見通しは安定している」との見方を示しました。

 

トリプルAランクは世界銀行や日米主導のアジア開発銀行(ADB)と同じ水準です。
ムーディーズは、声明のなかで「リスク管理、自己資本比率、流動性に関するAIIBのガバナンス体制の強み」を理由に、トリプルAの格付けを付与した」とコメント。AIIBに対する評価は現在および将来の信用度に対する評価を反映したものであるとしました。

 

加盟国80カ国にまで拡大したAIBBは、2030年までにアジアにおけるインフラ支出額26兆ドルを目標としており、ムーディーズは中国主導の金融機関がベストプラクティスの国際基準を満たすことができることを示していると評価しました。

 

 

1-1 重要案件は中国に拒否権あり

北京に本部を構えるAIIBは2015年12月、アジア地域でのインフラ整備を支援するため、中国主導によって設立された国際金融機関になります。設立当初、加盟国の拠出金がなかなか集まらないなど紆余曲折があったものの、昨年4月、英独仏含めた57カ国で発足しました。

 

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(▲参加57カ国によるAIIB発足式典 / 出展:Business Insider)

 

資本金は1000億ドル(約11兆円)で最大の拠出国は中国、重要案件に関しては中国が拒否権を握ります。

 

当初、参加に難色を示していたフィリピンも大統領管轄の予備基金から約2億ドルを拠出し、設立協定に署名しました。参加を決めた背景にはアジアにおけるインフラ需要は大きく、日米主導のADBだけでは不十分との声も多く聞かれていました。このほかタイ、マレーシア、ミャンマー、カンボジアなどアジア19カ国が次々と参加しました。

 

また中国は、日米の参加について申請期限が過ぎても待ち続けるとの異例の融和姿勢を示しています。

 

 

1-2 AIIBの金総裁、総会で透明性を強調

今年6月に開かれたAIIBの第2回総会で、金立群総裁は何度も組織の開放性と透明性を強調しました。

 

不参加の日米が度々取り上げるAIIBにおけるガバナンスの開放性や透明性。安倍首相は「加盟国による拠出金が中国の都合のいいように使われるのではないかなどの疑念を払拭することができれば参加を前向きに考える」と慎重な構えを見せました。

 

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(▲AIIBの金立群=Jin Liqun総裁 / 出展:Innovatief Nederland)

 

このほか、中国はAIIBと一帯一路構想との関係性について、「かりに一帯一路のプロジェクトであってもAIIBとは切り離して考える」とし、両者は独立したプロジェクトであることを強調しました。

 

ムーディーズは、30年近くぶりに5月に中国の信用格付けを格下げし、成長が減速し負債が増加し続ける中、経済の財務力が今後低下すると予想しています。

 

※ ムーディーズ・インベスターズ・サービス(Moody’s Investors Service)は米大手の格付け会社。2017年版のフォーブス世界長者番付2位のウォーレン・バフェットが筆頭株主となっている。

 

 

2 中国が掲げる一帯一路構想とは

現代版のシルクロードに例えられる中国の一帯一路構想。2014年に中国で開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議にて、その構想が明らかにされました。

 

一帯一路では中国西部から欧州までを結ぶ一帯を相互的な経済圏と捉え、インフラ整備や文化交流、貿易の拡大を図るのが目的です。この“一帯”には中央アジア、西アジア、中東、ヨーロッパなど、歴史的な交易路「シルクロード」に位置していた国が含まれます。
一方、“一路”は中国沿岸部から東南アジア、パキスタンを経てインド洋に至ります。付近の国はAIIB参加国も多く含まれており、あらたな“親中国”の国際秩序を築こうとしているのではないかとの指摘もされます。

 

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(▲中国の一帯一路=one belt one road構想)

 

 

2-1 日本、「一帯一路」に協力を表明

6月、都内で開かれたアジア各国の政府高官による国際会議にて、安倍首相は一帯一路構想について「協力したい」と発言し、日本政府の姿勢を初めて示しました。

 

これを受けて、中国外務省は、日中両国が互恵協力、共同発展を実現する新たなプラットフォームと『実験台』となることができ、日本側が両国関係の改善を実際の行動に移すよう期待している」と述べ、

 

「一帯一路構想は重要な国際公共商品で、開放的且つ包容性ある発展プラットフォームだ。日本を含む世界各国にとって有利であり、各国は平等な参加者、貢献者、また受益者でもある。日本が、中国と『一帯一路』建設の枠組み内での協力を検討することを歓迎する」(参照:中国国際放送局

 

とコメントしました。

 

 

2-2 全世界が対象!?「一帯一路」の今後

「すべての国に開かれている」と開放性を強調している一帯一路。公益財団法人「国際通貨研究所」の梅原直樹氏は、「中国は『一帯一路』の友好関係で全世界を覆うことを国益と考えている」と述べます。

 

「例えば、昨年10月、中国が南米ウルグアイと署名した戦略的パートナーシップ覚書は『一帯一路』に言及しており、中国はこれをもってウルグアイが『一帯一路』の関係国、友人圏になったと見ている。西欧諸国でもギリシャ、ドイツ、スイスが『一帯一路』への支持を表明している。ギリシャの港湾では中国がすでに高いプレゼンスを誇る。国際機関の中にもこの構想に賛同するものが現れている」(参照:公益財団法人国際通貨研究所 ニュースレター)

 

中国の発表によると、昨年末時点で、習近平主席の提唱から3年余りで100を超える国と国際組織が「一帯一路」構想に対して前向きに応じ、または支持を表明し、その中でも40の国や国際組織が共同建設の協力協定に調印したとされます。

 

加速化する中国の一帯一路構想。今後も注視する必要がありそうです。

 

 


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