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格安旅行会社「てるみくらぶ」はなぜ破産したのか

(出典:てるみくらぶ)
(出典:てるみくらぶ)

3月27日、格安旅行会社のてるみくらぶが資金繰りの悪化を理由に東京地裁に破産申請をし、手続きに入ったことがわかりました。負債総額は約151億円で東京商工リサーチによれば旅行会社の破産額としては過去4番目の規模となります。

 

てるみくらぶは現在新規旅行者の受け付けを中止していますが、8万~9万人に影響が出るとされています。また、すでに出国済みの旅行者約2500人は、ツアーパッケージに含まれるホテルやバスなどを利用できない可能性が高く、山田千賀子社長は記者会見で「自力で対処していただくしかない」と語りました。

 

同社は前年9月期の決算で過去最高益となる195億円を売り上げましたが、なぜわずか1年で破綻してしまったのでしょうか。

 

 

目次

  1. 1 破産に至る経緯
  2. 1-1 オンライン販売で急成長
  3. 1-2 航空券発券トラブルで破綻寸前であることが露呈
  4. 2 破産手続きを開始
  5. 2-1 弁済限度額は1億2000万円
  6. 2-1 返金はされない
  7. 3 果たして詐欺にあたるのか?
  8. 3-1 計画倒産との指摘も
  9. 3-1 社長は詐欺を強く否定

 

1 破産に至る経緯

株式会社てるみくらぶは、1998年、アイ・トランスポート社の山田千賀子社長(当時)が分社化させて設立した第1種旅行業者※です。

 

・旅行業の種類

  登録行政庁 業務範囲 登録要件
企画旅行 手配旅行 営業 保証金 基準資産 旅行業務取扱管理者の選任
募集型 受注型
海外 国内
第1種 観光庁長官 7000万 3000万 必要
第2種 都道府県知事   1100万 700万 必要
第3種 都道府県知事     300万 300万 必要
旅行業代理業 都道府県知事 旅行業者から委託された業務 不要 必要

(参照:国土交通省 関東運輸局)

 

 

1-1 オンライン販売で急成長

1980年代後半~90年代当時、円高が進んだことから海外旅行者が急増。
人気のハワイやグアムのほか、韓国・台湾など手軽に行けるアジア諸国も人気の旅行先となり、これに目を付けたてるみくらぶは、個人向け格安パッケージツアーなどを企画。航空会社からあまった空席を格安で引き受け、ネットで販売する手法で業績を伸ばしてきました。

 

ところが近年の機体の小型化により空席が減り、安値で提供されなくなります。

 

さらに乱立した格安旅行会社の競争により収益は年々低迷。海外に設立した現地法人のコストも負担増となり、2014年9月期から営業収支は赤字に転落。同社は顧客ターゲットを高齢者に絞ったり、現金一括入金キャンペーンを行いますが、資金繰りは一向に改善しませんでした

 

 

1-2 航空券発券トラブルで破綻寸前であることが露呈

3月24日、同社が主催するツアーで旅行者の航空券を発券できないトラブルが相次ぎ、ホテルから強制的に退出させられた旅行者が続出しました。
同社は参加者に対しメールで「航空券の発券システムが利用できない等の事態が発生しております」「ご滞在先のホテル等にてトラブルが生じないことを確認できておりません」などと説明。

 

利用者から日本旅行業協会を通じて観光庁にも相談が寄せられ、観光庁は確認を急ぎますが、てるみくらぶはホームページに臨時休業を知らせる案内を掲載。利用者の間で「倒産か?」と騒がれる事態に発展しました。

 

※ 旅行業を行うには旅行業法に基づき、登録を受ける必要がある。旅行業者等は、業務の範囲により、第1種旅行業者、第2種旅行業者、第3種旅行業者、旅行業者代理業者に区分される。第1種では企画旅行(募集型+受注型)と手配旅行を行うことが可能で、登録申請先は観光庁長官。登録するには基準資産3000万円以上、営業保証金7000万円以上が必要となる。(参照:国土交通省 関東運輸局)

 

 

2 破産手続きを開始

3月27日、てるみくらぶは破産手続開始の申立てを行い、受理されたことで破産手続の開始となりました。破産管財人は土岐敦司弁護士が選任されました。破産手続開始後は、営業停止となるため、従業員による窓口対応などはされません。

 

破産

(▲HP上で破産手続の開始を告げる / 出典:てるみくらぶ

 

 

2-1 弁済限度額は1億2000万円

日本旅行業協会は、旅行会社が倒産したときに保証金を旅行代金に当てる弁済業務保証金制度※を定めています。第1種旅行業であるてるみくらぶは1億2000万円の弁済保証金を用意していますが、東京商工リサーチによれば、債権者総数は3万6266件で総額99億円に上るとされます。また、1件につき複数の参加者がいることも多く、被害を受ける旅行者は8~9万人におよぶとの試算もされます。

 

同社も、旅行者の債権総額が弁済限度額を超える見込みだと発表。今後、旅行者に対する返済手続は、てるみくらぶではなくJATA(日本旅行業協会)が行うことになります。

 

※ 弁済業務保証金制度とは、旅行業協会の正会員である旅行会社(保証社員と呼びます)と旅行業務に関して取り引きをした消費者がその取引によって生じた債権について、旅行業協会が国に供託した弁済業務保証金から一定の範囲で消費者に弁済する制度。(参照:日本旅行業協会

 

 

2-2 すでに旅行代金を支払ってる場合

てるみくらぶはホームページですでに旅行代金を支払ってしまった旅行者に対して次のように手続を行う予定であると発表しました。

 

「弊社は、当該弁済制度の適用を受けるために、お客様との『旅行取引記録リスト(代表者の氏名、電話番号、住所、旅行の内容、人数など記載)』を電子メール等にて協会に提出いたします。「旅取引手続リスト」に基づき、別途、協会から平成29年6月中旬を目処に、弁済制度の適用を受けるための手続案内書面が送付されるように手配致しておりますので、その案内に従って手続いただきますようお願い申し上げます」(参照:てるみくらぶ)

 

旅行代金を支払った債権者に対しては、6月中旬までに弁済手続に関する書面を送るとしていますが、前述のとおり被害額が弁済額を大きく超えているため、大半は返金されない可能性が高いとされています。

 

 

3 果たして詐欺にあたるのか?

この度被害を受けた旅行者たちからは、てるみくらぶの倒産は詐欺ではないかとの批判が強まっています。

 

 

3-1 計画倒産との指摘も

資金繰りが悪化していたことから、破産するとわかっていながら旅行者を募る行為は計画倒産だと旅行者は主張します。

 

実際、代金を支払ったのにチケットが届かないといった旅行会社にまつわるトラブルは多発しており、過去にもレックスロード、旅太郎などが同様の経緯で倒産しています。

 

この度のてるみくらぶの件について萩原猛弁護士は

 

「倒産し、債務を履行することが不可能であり、また、返金することも不可能であることを認識していながら、適正に債務の履行がなされるかのように装って代金の交付をさせていたということが、立証できれば、詐欺として処罰されるでしょう」(参照:弁護士ドットコム

 

とコメントしました。

 

 

3-2 社長は詐欺を強く否定

27日に開かれた記者会見で、記者の「経営状態が悪いにも関わらずキャッシュ(現金)を集めていたのではないか。詐欺ではないかとの声もある」という質問に対して、山田千賀子社長は

 

「全くそんなことはなくて、とにかくIATA(国際航空運送協会)が駄目になったとしても、とにかく最後までスポンサー、銀行とかけ合って、(このような結果を招くとは)とにかく全く考えていなかった。とにかく生きることしか考えてなかった。詐欺を働くとかそういうことは最初から毛頭考えていない。お客様に安くて良い商品をと思って、ずっと何十年もやってきた」

 

と語りました。

 

また、被害者についてどう思うかとの質問に対しては

 

「とにかく皆さんのお役に立つことだけを思って今までやってきた。こういう事態になって最終的にお客様にご迷惑をかけることになってしまい本当に申し訳ないと思っている」

 

と謝罪しました。

 

会見

(▲会見で頭を下げる山田千賀子社長 / 参照:東京新聞

 

事件発覚後、海外から自力で帰国した旅行者たちからは怒りの声が多く、刑事告訴も検討しているとの声も聞かれるなど、騒動はしばらく終わりそうにありません。

 

 


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