日本雑誌協会が5月16日に公表した雑誌の印刷部数データによると、「週刊少年ジャンプ」が初めて200万部を割ったことがわかりました。ピーク時には650万部以上を発行しただけに、その没落を印象付ける結果となってしまいました。
売り上げが減少している雑誌は週刊漫画だけではありません。ファッション雑誌や旅行誌など雑誌全体で不振が続いており、出版不況のトンネルから未だに抜け出せずにいます。
日本の漫画は今や政府が文化コンテンツの重要産業に位置付けるほどに成長し、世界中に大勢のファンがいます。にもかかわらず漫画文化は衰退してしまうのはないかと不安視されています。
目次
1 少年誌は軒並み発行部数減少
日本雑誌協会は雑誌協会加盟する「印刷証明付き※」の1号あたりの平均印刷部数を、四半期ごとに発表しています。
集英社が発行する「週刊少年ジャンプ」の2017年1月〜3月における発行部数は1,915,000部で、前年同月比で約15%減少しました。
講談社が発行する「週刊少年マガジン」は964,158部で、前年同月比で約1割減、小学館が発行する「週刊少年サンデー」は319,667部で、前年同月比で約7%減となりました。
・ 過去4年間の発行部数のデータ
週刊少年ジャンプ | 週刊少年マガジン | 週刊少年サンデー | |
---|---|---|---|
13年01月〜03月 | 2,835,455 | 1,376,792 | 502,000 |
13年04月〜06月 | 2,809,167 | 1,357,000 | 494,000 |
13年07月〜09月 | 2,779,231 | 1,324,209 | 532,667 |
13年10月〜12月 | 2,745,000 | 1,308,117 | 490,334 |
14年01月〜03月 | 2,715,834 | 1,277,500 | 461,250 |
14年04月〜06月 | 2,677,500 | 1,245,417 | 445,500 |
14年07月〜09月 | 2,665,834 | 1,211,750 | 428,417 |
14年10月〜12月 | 2,605,000 | 1,192,267 | 411,250 |
15年01月〜03月 | 2,422,500 | 1,156,059 | 393,417 |
15年04月〜06月 | 2,395,000 | 1,127,042 | 388,417 |
15年07月〜09月 | 2,376,667 | 1,107,840 | 369,231 |
15年10月〜12月 | 2,321,667 | 1,085,110 | 356,584 |
16年01月〜03月 | 2,238,333 | 1,038,450 | 345,667 |
16年04月〜06月 | 2,168,333 | 1,015,659 | 369,833 |
16年07月〜09月 | 2,151,667 | 995,017 | 330,000 |
16年10月〜12月 | 2,005,833 | 986,017 | 323,250 |
17年01月〜03月 | 1,915,000 | 964,158 | 319,667 |
(▲日本雑誌協会公表数値より作成)
過去4年間でみれば週刊少年ジャンプは約100万部減らしており、マガジン、サンデーを含めた3大少年誌のなかでも最大の減少幅となります。
・ 発行部数の推移
(参照:ITビジネスオンライン 5月16日付)
※ 従来、発行部数は出版社の自己申告によっていたため、水増し申告が横行していた。そこで、公平を期すため雑誌印刷部数公表制を導入し、「印刷証明付き」の発行部数として公表されるようになった。
1-1 単行本の売り上げは横ばい
少年誌の発行部数の減少は、単行本の売り上げにも影響を及ぼしていないようです。
全国出版協会によれば、少年誌などを含めたコミック市場は1992年から13年連続のマイナスですが、単行本単体では2年連続のプラスとなりました。漫画のアニメ映画化や実写映画化など映像化作品が数多くヒットしたことが要因とみられています。
・ コミック市場の推移
一方、映像化されなかった漫画や、各漫画賞などで注目された作品以外の売り上げは低迷しており、二極化が進んでいると全国出版協会は分析します。
また、昨今の電子書籍の普及により電子コミック市場は拡大傾向にあります。
1-2 女性からも圧倒的な支持を得ているジャンプ
発行部数が減ったからといって、マンガを読む人口も減少しているわけではあません。
NTTコムリサーチが実施した「マンガに関するアンケート」の調査結果によれば、15歳〜44歳の80%が「マンガを読んでいる」と回答しています。男女別にみると、男性では39歳以下で8割以上、女性では29歳以下で8割以上と、性別に関わらず広く読まれていることが伺えます。
(参照:NTTコムリサーチ 「マンガに関するアンケート」に関する調査結果)
また、「定期的に読んでいるコミック誌はなにか」との質問では、週刊少年ジャンプが男女ともにトップで、男性66%、女性55.7%と高い回答率を獲得しました。
次いで、男性では少年マガジ44.6%、少年サンデー29.8%、ヤングジャンプ27.4%、ヤングマガジン25.0%と続き、女性では別冊マーガレット17.7%、少年サンデー16.2%、少年マガジン15.5%、花とゆめ13.3%と続きました。
2 スマホ、タブレットの普及が与えた影響
スマートフォンやタブレットなどの携帯端末の普及により、紙媒体で文字を読む機会は減少しつつあります。
NTTデータ研究所によれば、市場規模の縮小および書店の売上の減少のおもな要因は、①インターネットの進化・普及の影響、②インターネット書店の隆盛、③電子書籍の普及にあると分析します。
インターネットの進化・普及の影響 | インターネットの無料コンテンツ増加、グーグル、ヤフーなどの検索サイトの普及・進化・利用増(広告収入モデル)に対して、有料の紙媒体書籍・雑誌が劣勢となったことが大きく影響し、紙媒体の書籍・雑誌の売り上げが大きく減少した |
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インターネット書店の隆盛 | リアル店舗の書店とウェブ書店の競合のもと、書籍・雑誌購読者層がアマゾンなどインターネット書店の利便性を高く評価、オンラインで書籍・雑誌を購入するようになり、リアル書店の需要が減少、売り上げが浸食された。 |
電子書籍の普及 | 2019年度の電子書籍市場規模は、2,890億円程度(2014年度の2.3倍)、電子雑誌市場規模は510億円程度(2014年度の3.5倍)電子書籍と電子雑誌を合わせた電子出版市場は3,400億円程度と予測されており、その分、紙媒体の書籍・雑誌の市場規模を浸食し、リアル書店の売上の減少要因となっている。 |
(参照:NTTデータ経営研究所)
インターネットは以前から使われていましたが、スマートフォンが普及したことでさらに身近なものとなりつつあります。
少年ジャンプは2014年より電子書籍版の販売も始めており、購読者数も増加傾向にあるといいます。電子書籍の売り上げが紙媒体と逆転する日も遠くないのかもしれません。