株式会社には、株式に関して決めておかなければならない項目があり、その1つが株価です。株式会社を設立するからには、株式や株価のことを良く知っておかないと、設立後につまずいたり、思いがけない事態となったりする場合があります。株価は自由に決められるものなのなのか、決められるとしたら会社設立時にはいくらにすれば良いのでしょうか。
この記事では、株式会社の特徴、株式、株価、株価が上がるメリット、株価の設定方法や調べ方について詳しく解説するので。ぜひ最後まで読んで会社設立時の参考としてください。
1 株式会社とは
会社には株式会社の他にも「合同会社」等の複数の会社の種類があります。株式会社はその名の通り「株式」を特徴としていますが、株式会社以外の合同会社等には株式はありません。
そこでまず、株式会社と合同会社の特徴を見ていき、そして株式と株価について見てみましょう。その後、株式会社のメリットとデメリットを見ていきます。
1-1 株式会社の特徴
株式会社の最大の特徴は、会社の資金(資本金)を、株式を発行することによって調達することができるということです。
これがもし合同会社の場合には、株式という言葉がついていないことが示すように、株式を発行することはできず、そのため株式発行という手段によって資金を調達することができません。
合同会社が(株式会社以外が)資金を調達するには、会社内部から資金を募るという手段を採ることなります。対して株式会社の場合は株式によって、会社内部だけではなく外部の人間からも、広く資金を調達することができます。
言い換えると合同会社の資金調達は、株式会社に比べるとその調達額と方法が小規模になるということです。対して株式会社の資金調達は、株式を発行してその株式を購入する人がいる限りは広く社会に資金を(株式購入者を)求めることができるため、調達額に上限がありません。
以上から、合同会社は身内による会社経営となり、そのためスピード感を持った経営ができるという特徴を持ちます。合同会社は資金調達額と方法が限られる反面、株式会社ほどの守らなければいけない法律上の規定やルールも少なく、小回りが利くためスマートビジネスに向いているといえるでしょう。
対して、株式会社は広く多く資金を調達できる選択肢があるため、会社の事業規模もそれだけ大きくできる可能性があります。
また、株式とは会社の根幹となるものです。株式を発行して多くの人が株式を所有する(可能性がある)ということは、それだけ多くの人が会社の経営方針や将来について、そして経営者自身にも影響を及ぼすものとなり得ます。
多くの人が会社に影響を及ぼすということは、株式会社の経営指針等の方向性を決定には時間を要するということになります。従わなければいけない社会のルールや法律上の規則もその分多くなります。
次に、株式会社の資金調達の元となる株式とはそもそも何なのかということを見ていきましょう。株式とは、会社の資金を出資してくれた人に発行する証明書のようなものであり、出資した人がいくら出資したかを示すためのものです。
株式を発行して会社の資金を調達するということは、株式には値段がついているということです。株式には1株あたりの金額が定められており、それを株価と呼びます。株式を多数購入するということは、それだけのお金を支払いその分を会社に出資することになるということです。
株式の購入方法を見てみましょう。株式の購入は、株の売買を行う「証券取引所」に株式を公開している「上場企業」の場合、その証券取引所を通して任意に行うことができます。証券取引所に株式を公開していない非上場企業の場合は、仲介会社等を通して株式の取引を行います。
株式発行によって調達した資金は、融資とは異なり返済の義務がありません。すなわち、株主にとっては一度出したお金が戻って来ないことになります。
それでは株式を所有している人、すなわち株主にはどのようなメリットがあるのでしょうか。株式には所有している分だけ配当金を得る権利があり、株主は配当というメリットを目的に株式を取得するということになります。
また、株式とは会社の所有権そのものです。例えば、ある株式会社の発行済株式を100株とすると、会社の所有権は100に分割することになります。会社設立者がこの100株を全て持っているとすると、会社の所有権は100%会社設立者が保有していることになります。
しかし、仮にこの発行済株式100の内、会社設立者の持株数は50で、残りの半分の50を会社設立時に資金調達の協力者ということで知人に株式所有を依頼している場合、会社の所有権は会社設立者と知人が同じ比率で持っていることになります。
このとき、知人は株式数に応じた配当を得る権利を持ち、また会社の運営に関しても重要な意思決定権を持つことになります。会社の経営と事業運営を行っているのは会社設立者一人だとしても、株式を会社設立者以外の人も持っている場合、会社の所有権は分散されるということです。
これは、株式会社の所有者と経営者は必ずしも同一人物ではないという株式会社の特徴です。会社の所有者はあくまでも株式を所有している人となります。経営者が株式を所有していれば、結果的にその経営者が会社の所有者となるということです。
設立したばかりの会社や中小企業の多くは、経営者が株式を所有しているため、経営者が会社所有者となります。会社の所有者と経営者が一致しないケースは上場企業に多い特徴です。一致しない場合、会社の所有者が株主総会で経営者(社長等の役員)を選任する形となります。
1-2 株式会社のメリット
株式会社のメリットの1つは前項でも取り上げた株式発行による資金調達が可能なことです。株式発行によって得た資金は、融資とは異なり返済をしなくても良いお金です。
また、新規の株式発行を第三者が引き受ける「第三者割当増資」や、株式を証券取引所に公開して上場企業となることで、株式市場という開かれた場所から資金調達を行うという選択肢を持つことができます。
株式会社の別のメリットには、知名度の高さやメジャー感があるということがあります。前項で合同会社について触れましたが、株式会社と合同会社を比べた場合、株式会社の方が社会的な認知度や信用度の高さにおいて遥かに上といえるでしょう。
この知名度の高さは営業活動や宣伝活動に非常に有用となるものです。融資を受ける際にも、株式会社であるという信用度の高さがプラスに働くことがあります。
また、会社の事業承継のしやすさも株式会社のメリットの1つです。個人が財産を相続する場合は、現金や土地といった財産ごとに分配する必要があるため、煩雑でトラブルの元となります。また、合同会社の場合も、状況によっては事業承継手続きが複雑になることがあります。
この点株式会社の場合は、会社の財産を含めた所有権が株式に帰属することから、株式を譲渡することによって所有権の移転、すなわち事業の承継を行うことができます。
1-3 株式会社のデメリット
株式会社の組織としてのデメリットにも触れておきましょう。デメリットの1つは、会社の意思決定が会社設立者の一存では行えない場合があるということです。先に触れたように、株式会社の所有権や意思決定権は持株数に比例します。
会社設立者の持株比率が低くなると、会社設立者の発言権や意思決定権も低くなり、最悪の場合会社設立者である自分自身が会社を追われる身となる可能性もあります。
株式会社には会社設立時の費用の高さ、手続きの煩雑さというデメリットもあります。株式会社を設立するためには約24万円の費用がかかります。これは合同会社の設立費用が約10万円であることを考えると倍以上の金額です。さらに、株式会社には合同会社には不要となる「定款認証」という手続きも発生します。
そして、この手間がかかるというデメリットは会社設立時だけの話しではありません。例えば、株式会社には経営状況や財務状況を公開する「決算公告」の義務があります。株式会社以外の合同会社等の場合にはこの決算公告の義務はありません。
また、次に上げるのは個人事業主と比べた場合の株式会社のデメリットとなりますが、会社の場合は社会保険の加入がほぼ必須となり、その分の手間が発生し費用が嵩みます。また、赤字となった場合でも「均等割」という税金を支払うことになります。
2 株価の決め方
「株価の決め方」について見ていきましょう。まず、株価について触れる際に重要となる3つの権利である「株主権」「自益権」「共益権」について説明します。
株主権とは、株式を所有している人、すなわち株主の持っている2つの権利のことを指します。その2つの権利が自益権と共益権ということになります。自益権とは、所有している株式に応じた配当を受けることができる権利です。株式を多く所有しているほど配当金も多くなります。
次の共益権とは、株主が株主総会に参加して議決権を行使する等の、会社の運営に参画することができる権利です。株主総会における議決権は、所有している株式に比例して大きくなります。共益権とは会社に及ぼす影響力の大きさといえるでしょう。
さて、そのような会社に大きな影響力を及ぼす株式ですが、肝心の株価はどのように決めれば良いのでしょうか。まず法律上は、株価の金額を定める規定はありません。
以前の旧商法では、1株の株価を額面5万円以上と定めていましたが、現在では会社設立者が自由に定めることができます。ただし闇雲に株価を設定すると後で困る事態となる可能性があります。困らないためには、株価を決める際に将来を見据えること、すなわち増資する未来を想定することが重要となります。
例えば、設立時に1株を5万円に設定して、会社設立者が20株を100万で取得したとします。その後、さらなる会社の発展を見込んで資本金を増額することに決め、株式を今度は1株5,000円に設定して発行するとします。
このとき、会社設立時に20株100万円であった株式を20株10万円で取得できることになります。この場合、同じ20株でも会社設立者の方が高値で購入したことになり、株式設立者が明らかに不利益を被ることになります。
以上から株価を決める際のポイントは、不利益が生じないように将来の増資を見据えることとなります。また、株式にはもう一つ重要なポイントがあります。それは「発行可能株式総数」です。
発行可能株式総数とは字面をそのまま捉えると、発行可能な上限の株式数ということになりますがそうではありません。なぜなら、株式は上限なく発行できるからです。
ここでいう発行可能株式総数とは、株主総会の決議を経ないで発行できる株式数を指します。なぜ発行済可能株式総数という考えが必要なのか見ていきましょう。まず発行可能株式総数は、株式会社の定款に記載をするというルールがあります。
会社が増資をするために新たに株式を発行すると、会社の株式総数は増えることになります。持株数は会社への影響力の大きさとイコールの関係となるため、発行済株式総数と所有者を把握しておかないと、会社設立者といえどもいつの間にか会社への影響力を失う可能性があります。
新たに株式を発行する際には株主総会に諮ることが原則です。しかし、会社には株主総会を通してからでは資金調達が間に合わないなるため、早急に資金を調達する必要となる局面があります。
そこで、あらかじめ発行可能株式総数を定めておくことで、その総数内で株主総会を通さずに株式を発行して資金を調達することができる、ということになります。
発行可能株式総数を定めずに取締役会に株式を発行する権限を付与することも可能ですが、その場合は取締役会の権限が大きくなります。また株式を発行し続けることで既存の株主の株式所有比率が薄まる可能性があり、会社への影響力も低下します。
それでは発行可能株式総数はどのように決めるのが良いのでしょうか。もし将来の明確な増資計画(目標)がある場合は、発行可能株式総数はその増資額に応じて設定するのが有用な方法です。
明確な増資の計画はないものの会社の発展を目標としている場合は、発行済株式総数の10倍程度が一つの目安です。明確な将来の増資計画がない場合は、その後の会社への影響力を考えて、発行可能株式総数を発行済株式総数と同じ数とするのも選択肢の1つです。
ただし発行可能株式総数を一度決めると、後にその総数を変更する際の手続きの労力や登記費用は大きいものとなります。そのため、発行可能株式総数はあまり少ない数とせずに、柔軟なある程度の大きさの数とするのが良いでしょう。
3 株価が上がるメリットとは
株価が上がると企業側にはどのようなメリットがもたらされるのでしょうか。株価が上がることで生じるメリットや株価の調べ方、また株価の上下要因などを確認していきましょう。
3-1 企業側にとってのメリット
初めに株価が上がることで企業側にもたらされるメリットを見ていきましょう。企業側にもたらされる主なメリットは、価値面と資金面、そして経営面の3つに分類できます。
価値面についてのメリットは、株価とは企業の価値そのものであるということからもたらされます。株価の総額のことを時価総額と呼びますが、企業の時価総額は、そのままその時点の会社の価値あるいは金額と同義になります。
会社の価値が上がると世間の耳目も集まります。世間の評判が高まることで株価もまた上がる、すなわち株価の上昇により会社の価値も高まり、そして会社の信用度も上がる好循環が生まれます。信用度が上がると投資家のその企業への注目度もまた上がります。これが価値面でのメリットです。
そして、投資家からの注目度が上がるということは、その企業の株式がより投資の対象になるということに繋がります。投資家の取引の対象になるということは、株価が上がる以前に比べて、より資金調達が容易になることを意味します。
例えば、株価が上がる前の価額を1株1,000円とします。このとき、1億円を調達するには10万株が必要です。さて、株価が上がって1株2,000円になったとします。このとき1億円を調達するためには、先ほどの半分の5万株の発行で足りることになります。
すなわち、株価が上がることは資金面でのメリットも得られます。また、信用度が上がることは銀行の信用も厚くなる、すなわち新規融資の際の審査を有利に進めることができます。
そして、株価が上がることによって世間一般の評判や注目度も高まり、会社や商品のブランド力が高まります。就職活動中の学生や中途の転職希望者にとって注目度の高い企業となり、求人の応募数の増加と人材獲得に繋がります。
人材が増えて多様かつ優秀な人材が増えた場合、さらに経営を加速することができます。また、資金調達が有利になることで設備投資も積極的に行えるようになり、事業の拡大に繋がります。株価の上昇は経営面にとってもメリットが大きいということです。
以上が株価上昇により企業側が得られる代表的なメリットです。このほか、企業価値が上がることで敵対的M&A(敵対的買収)になりにくいのも特徴です。
3-2 株主(投資家)側にとってのメリット
株価が上がることでメリットを享受できるのは企業だけではありません。株価が上がるということは、株価上昇以前に購入していた株式をより高値で売却できる可能性を秘めています。株価上昇は、株式取引によって儲けを得ることを第一義とする投資家にとって最大のメリットをもたらします。
また、投資家にとっての株式上昇によるメリットは、株式売買によって生じる儲けだけではありません。株式は保有している数に応じて配当金が分配されるという特徴があります。
投資家ではなく純粋にその企業を応援したい株主の場合は、株式を購入することでその企業を応援していることになります。お気に入りのブランドや商品がある企業の業績が上向くことで、新商品の開発や既存の商品の改良化が図られる場合があります。
そして、株価が上がり企業の業績が上向いた際には、株主自身にとってもより多くの配当金を得ることに繋がり、ウィン・ウィンの関係となる可能性が高まります。
また、株式取得により企業を応援することには、株主優待のメリットもあります。株主優待とは、株式を保有していることで様々な優待サービスを得ることができるという特典です。株主優待には、商品券や割引券の配布、買い物時のポイント優遇など企業によって様々なものが用意されています。
株式取引の場合は損をすることがあったり知識や時間が必要だったりするというリスクがありますが、株主優待の場合はそのようなリスクはありません。株主優待は株式を保有しているだけで特典を得られる(ことがある)メリットなのです。
3-3 企業内部側(役員、従業員)にとってのメリット
株価の上昇は企業内部にとってもメリットがあります。すなわち、その企業の役員や従業員にとっても株価上昇により恩恵がもたらされるということです。
そのメリットの1つに、「ストックオプション制度」を導入している場合には臨時収入が得られる、というものがあります。ストックオプションとは、株価が上がる前の価額で株式を購入することができ、株価上昇後の価額で株式を売却できる(可能性がある)という優遇制度です。
また、株価が上がり業績も上がることで労働環境の改善も見込めます。すなわち、株価の上昇により従業員は賃金上昇を期待でき、そして企業にとっても従業員のモチベーションアップを期待できます。
4 株価の調べ方
次に株価の調べ方を見てみましょう。株価が記載されている最もポピュラーで古くからある媒体は新聞紙(主に一般紙)です。新聞以外にもインターネット上で株価の最新情報を調べることができます。
インターネットにて株価を調べられる代表的なサイトには、Yahoo!などの情報サービスや、証券会社のホームページ、また「株マップ.com」などの株式の専門サイトなどがあります。
それではYahoo!の株式専門ページである「Yahoo!ファイナンス」を例にとって株価の調べ方を見ていきましょう。Yahoo!ファイナンスのトップページを開くと、ページ中央に主要な株式のニュースと、その上に各国市場の平均株価が表示されています(令和4年4月中旬のサイトデザイン)。
ページ上部には「銘柄やコード・キーワードを入力」と表示された検索窓がありますので、ここから調べたい企業の株価を調べることができます。
検索ワードに企業名(の一部)や銘柄コードを指定すると、該当する企業名が表示されます。検索ワードは業種でもよく、その場合は業種に該当する企業が検索結果として表示されます。
業種や企業名の一部といった複数の検索ワード半角スペースで区切ることにより組み合わせて(アンド検索)検索結果を絞ることができます。
一方、「株式会社」をつけて正式名称とした上で検索をすると正しく検索できません。企業名で検索するときは株式会社をつけないようにしましょう。Google Financeの場合は「株式会社」をつけても検索することができます。同じ情報サービスでも多少の違いがあるということです。
企業(銘柄)の中には複数の証券取引所(市場)に上場しているものもあります。そのような銘柄は、Yahoo!ファイナンスの場合では代表的な市場の株価が表示されます。もし特定の市場を指定して検索したい場合は、市場ごとに用意された拡張子を証券コードの後に付記して検索Mします。
Yahoo!ファイナンスにおける証券取引所と拡張子の対応は次の通りです。
東京証券取引所(.T)、名古屋証券取引所(.N)、札幌証券取引所(.S)、福岡証券取引所(.F)
例えば、トヨタ自動車(証券コード:7203)の東京証券取引所での株価を検索する場合は「7203.T」と、名古屋証券取引所での株価を検索する場合は「7203.N」と検索窓に記入して検索すると、該当する株価が表示されます。
5 株式投資の基本事項
株価を調べる上で基本となるキーワードである「証券取引所」と「株価の上下要因」について見ていきましょう。
5-1 証券取引所について
株式は証券取引所という場所で取引されます。株式を売りたい人と買いたい人が取引を行うために集う場所が証券取引所ということです。証券取引所で自社株式を取り扱いたい場合には「上場」をする必要があります。
上場を行い、自社株式を公開株式として証券取引所で取引できるようにした企業のことを「上場企業」と呼びます。上場しない、または上場する要件を満たさない会社のことを「未上場企業」あるいは「非上場企業」と呼びます。
証券取引所には前章で取り上げたように東京、札幌、名古屋、福岡の4つがあります。それぞれ東証、札証、名証、福証と略されます。
企業が上場をするためには審査を経る必要があります。その審査には、株主数や時価総額などの「形式要件」と、上場企業であるための適格性を満たしているか判定をする「実質審査基準」があります。証券取引所では複数の市場が開かれており、市場の特徴に応じた審査要件があります。
東証の市場には、かつて「市場第一部」「市場第二部」「マザーズ」「JASDAQ」などがありましたが、令和4年4月4日に「グロース市場」「スタンダード市場」「プライム市場」の3つに再編されました。
グロース市場とは、高成長の可能性の高いベンチャー企業や、起業して間もない新興企業を対象とした市場です。グロース市場の形式要件には150人以上の株主数や、流通株式時価総額が5億円以上であることなどがあります。
スタンダード市場とは、上場企業に相応しい流通時価総額と持続的な成長、中長期的な企業価値向上を見込める企業のための市場です。株主数400人以上、流通時価総額10億円などが要件となっています。
プライム市場とは、多くの投資家の投資対象となり得るのに相応しい流通時価総額と成長を見込める企業のための市場です。プライム市場では株主数800人以上、流通時価総額100億円以上が要件となります。
株式の売買はいつでも出来るわけではありません。証券取引所の取引可能時間は決まっており、平日の9時~11時30分、そして12時30分~15時の間となっています。
5-2 株価の上下要因
株式は売りたい人と買いたい人の双方がいて取引が発生します。株価の上下は、買いたい人と売りたい人のバランスによって起こります。ある企業の株式を買いたい人の方が売りたい人を上回ることで株価は上がります。逆の場合に株価は下がります。
それでは、どのようなときに買いたい人、あるいは売りたい人が増えるのでしょうか。それには、企業の内的要因と外的要因が関係します。内的要因とは、その企業の業績や将来性などです。
内的要因は株価が上下する最大の要因です。内的要因には例えば企業の業績の動向があります。企業の業績が前年よりも上回っている場合に株価は上昇傾向となり、前年より下回る場合には下降傾向となります。その企業の将来性や新規事業等の内的要因も大きな株価変動要因です。
外的要因とは、国内情勢そして世界情勢です。国内情勢とは国内の政治や経済の動きです。新しい法律、または既存の法律の改正などにより経済状況が変わる可能性がある場合に、市場は動きます。国内全般や業界の景気も株価を左右する主要因です。
また、円安円高も株価変動の大きな要因です。輸出、あるいは輸入企業は円安円高が重大な経営材料となるため、株価も円安円高により変動します。
外的要因には世界情勢も含みます。海外、特に欧米の株式市場が上昇すると、日本国内における株価にも好影響を与える場合があります。紛争などの有事の際には、投資意欲が冷えて株価が下がる要因となります。
なお、株価の上下はその企業の株式を保有していない人にも影響を及ぼします。世界規模で株価に重大な懸念事項が発生した場合には失業者が増え、経済システムが混乱することになります。過去には「世界恐々」という事例があります。
以上、株式の特徴や企業側にとって株価が上がるメリット、株価の調べ方、株価の決め方について見てきました。株式と株価の仕組みをしっかりと把握し、そして自社の株式もしっかり管理することで、思わぬ事態を避けて目的に沿った事業運営を行うことが大切です。