75歳以上を対象とした後期高齢者制度が整備された際、“後期高齢者”という呼び方に対して違和感を感じる高齢者がいたように、最近では“シニア”という呼ばれ方に抵抗感を感じる高齢者が増えていることが、博報堂の調査結果で明らかとなりました。
博報堂の「新しい大人文化研究所」によれば、「“シニア”と呼ばれて自分のことだと感じる」50代、60代の割合が年々低下しており、60代の場合、2012年では56.1%と半数を超えていたものの、2017年では41.3%にまで低下しました。
さらに「“シニア”と呼ばれたいと思う」割合は60代では11.9%となるなど、9割近くが呼ばれたくないと思っていることが判明。
政府も労働力不足解消の切り札として高齢者に生涯現役を求めるなど、高齢者の意識が変わりつつあるのかもしれません。
本記事では、博報堂のレポートをもとに、変化する高齢者の自意識について詳細に見ていきます。
1 シニアと呼ばれても自分のことだと思わない近年の50、60代
博報堂は、8月、全国の40〜60代の男女を対象に行ったアンケート調査の結果を発表しました。
1-1 5年間で15%も減少
調査では、「“シニア”と呼ばれて自分のことだと感じる」50代の割合は、2012年では19.7%と2割近くでしたが、2015年には13.1%、2017年には12.6%と徐々に減少。さらに60代では2012年には56.1%でしたが、2015年で46.2%、2017年で41.3%と、5年間で15ポイント近く減少しました。
・「“シニア”と呼ばれて自分のことだと感じる」割合
50代 | 60代 | |
---|---|---|
2012年 | 19.7% | 56.1% |
2015年 | 13.1% | 46.2% |
2017年 | 12.6% | 41.3% |
(博報堂公表資料より作成)
(出展:マイナビニュース)
1-2 そもそもシニアと呼ばれたくない
次に、「“シニア”と呼ばれてみたい」と思う割合は非常に低く、50代では2012年の時点で3.7%、2015年3.7%、2017年3.5%となっていました。また、60代でも2012年で12.9%、2015年12.9%、2017年11.9%と低水準です。
本来、シニアという外来語を使うことで、高齢者という呼び方を柔らかく表現する意図でしたが、50、60代の9割以上が抵抗感を持っていることが明らかとなりました。
・「“シニア”と呼ばれて自分のことだと感じる」割合
50代 | 60代 | |
---|---|---|
2012年 | 3.7% | 12.9% |
2015年 | 3.7% | 12.9% |
2017年 | 3.5% | 11.9% |
(博報堂公表資料より作成)
(出展:マイナビニュース)
2 新しい時代を切り開いてきた団塊世代
ではなぜ50代、60代は“シニア”と呼ばれることに対して抵抗感があるのか。
博報堂によれば、高度経済成長期やバブル期を経験してきた世代は、「新しい消費やライフスタイルを作ってきた」(64.8%)という自負があることが理由とされます。
2-1 新しいサービスを率先して消費
調査では、「自分たちは新しい商品やサービスを率先して消費してきた」と思う40〜60代の割合は64.8%で、特に50代では68.7%と高くなりました。
50代では「そう思う」14.5%、「ややそう思う」54.2%、「あまりそう思わない」27.4%、「そう思わない」3.9%、男女別に見ても、男性69.7%、女性67.7%であり、約7割近くが新しい商品やサービスを率先してき消費してきた世代であるとの自負があることがわかります。
40代では特に女性でその意識が強く、「そう思う」5.2%、「ややそう思う」59.4%
で、合計して64.5%となりました。
・ 「自分たちは新しい商品やサービスを率先して消費してきた」と思う割合
40代 | 50代 | 60代 | |
そう思う | 7.4% | 14.5% | 13.9% |
ややそう思う | 53.5% | 54.2% | 51.0% |
あまりそう思わない | 32.6% | 27.4% | 31.3% |
そう思わない | 6.5% | 3.9% | 4.7% |
(博報堂公表資料より作成)
(出展:マイナビニュース)
2-2 新しい生き方を作ってきた
また、「自分達はいつも新しい生き方やライフスタイルを作ってきた」と思う40〜60代の割合は56.2%で半数を超えました。
年代別で最も高かったのは50代で60.6%、ついで60代59.7%、40代48.4%となります。
50代では、「そう思う」12.6%、「ややそう思う」48.1%、「あまりそう思わない」34.8%、「そう思わない」4.5%となりました。
また男女別では50代女性でそう思う傾向が強く、「そう思う」14.2%、「ややそう思う」52.3%、「あまりそう思わない」32.3%、「そう思わない」1.3%となりました。
・「自分達はいつも新しい生き方やライフスタイルを作ってきた」と思う割合
40代 | 50代 | 60代 | |
そう思う | 7.4% | 14.5% | 13.9% |
ややそう思う | 53.5% | 54.2% | 51.0% |
あまりそう思わない | 32.6% | 27.4% | 31.3% |
そう思わない | 6.5% | 3.9% | 4.7% |
(博報堂公表資料より作成)
(出展:マイナビニュース)
このように常に新しい時代を切り開いてきたという自負が、シニアと呼ばれることに対して抵抗感を感じる理由となっていると博報堂は述べました。
近年の高齢者は、定年退職後も働きたいなど強い就業意欲が伺えます。定年制を廃止する企業も増えており昨年度は、前年比1554社増となる4064社にのぼりました。
さらに、一億総活躍社会のもと、労働力を高齢者に頼らざるを得ない状況で、シニアという呼び方に違和感を与えているのかもしれません。