複数の韓国紙は9月、韓国大統領官邸「青瓦台」のホームページに「(男性同様に)女性も軍隊に行かなければならない」との趣旨の請願文に8万件を超える署名が集まったと報じました。
記事によれば、大統領HPの国民請願掲示板に、男性のみに課せられている「国防の義務の履行」について、女性も(徴兵制度に)参加するよう法改正する必要があるとのトピックが作成されていました。
韓国では憲法により男子のみに「国防の義務」が課せられています。19歳以上の男子は徴兵検査の対象となり、指定の身体検査などを受けなければなりません。
文在寅(ムン・ジェイン)政権がスタートしてから4ヶ月あまり。9月には北朝鮮が6度目となる核実験を強行するなど、東アジア情勢は緊迫化しています。果たして、韓国でも女性が徴兵制の対象となるのでしょうか。
1 8万件も集まった国民請願
大統領府ホームページに、8月、「女性も国防義務に参加するよう法律を改正しなければならない」とのタイトルの請願が作成されました。
(韓国大統領府「青瓦台」 英語では“Blue House”ともよばれる / 出展:Netherlands Brain Bank )
1-1 女性を徴兵しないのは男女差別と同じ
作成者の趣旨によると、
「私たちの国は北朝鮮と敵対しており、日中露の大国に囲まれている状況で、徴兵制は維持されなければならないが、(韓国は)30年以上少子化問題に悩まされており、将来兵士が不足することが予測され、このままだと95%に近い人員を徴集しなければ兵力を維持できないという問題がある。しかしながら兵役は男性だけに課せられている」とし、
「女性は男性と同じか、あるいは(男性より)優れた能力を持っていると男女平等を主張する。…だから女性にも男性と同じように兵役の義務を課し、男女差別なく同じように利益の保障を受けなければならない」
と主張。さらに、作成者は、
「女性の徴兵が身体能力の違いを理由にこの請願が通らないのであれば、現在行われている女性幹部の募集、警察官の募集も停止する必要がある。社会でも企業でも、女性は身体的な都合上制約を受けることがあるのだから、男女間の就業差別が行われても、道理上、何も言えなくなる」
と発言しました。
1-2 一方、反対意見も…議論は過熱
トピックが8月末に作成されてから2日で2万件近い署名が集まり、サイト内における「最もホットな請願」に浮上しました。
さらに韓国紙でこの請願が報じられると、署名人数はさらに増え、9月4日現在で8万3千件を超える署名が集まりました。
韓国紙によれば、請願に賛成する市民は、
「女性も軍隊に行くことが真の男女平等である」
「男女平等指数を上げた場合、女性徴兵制も実施しなければならない」
などの意見を述べました。一方、
「男女間の身体の違いを全く考慮していない意見だ」
「たとえ不平等であっても自分たちの母や祖母が徴兵されてもいいのか」
などとの反対意見もあり、議論は過熱しています。
(出展:sedaily.com)
2 女性に徴兵制度が適用される国々
近年、女性徴兵制は、世界的に広がりを見せています。かつてはスーダン、北朝鮮など政治的に不安定であり、近隣諸国に比べて国防能力が不足している国が女性の徴兵を採用していましたが、最近では、男女平等の観点から実施する国が増えています。
2-1 来年から徴兵制を復活させるスウェーデン
スウェーデン政府は、昨年9月、2018年1月1日から徴兵制を復活させる方針であることを発表しました。
スウェーデンの徴兵制は2010年に武力衝突が行っていないこと理由に廃止、志願制に移行していました。しかし、志願制では十分な兵力を確保できなかったため、18歳以上の男女4000人を毎年徴集する予定だとしています。
(出展:Aftenposten)
2-2 ノルウェー、欧州初となる男女徴兵制を採用
ノルウェーでは2014年に女性の徴兵制を認める法律が可決、昨年7月から女性徴兵制を施行しています。徴集された新たな兵士のうち3分の1は女性だといいます。
(出展:NusantaraNews)
また、韓国紙によると、オランダは2016年、兵役法を改め、男女ともに兵役を課しすると発表しました。2018年から18歳になる女性も徴兵対象に含まれます。このほか、イスラエルをはじめ、キューバ、コートジボワールなども女性徴兵制を採用しています。
大統領府は8月、ムン・ジェイン大統領の就任100日を記念して、国民と直接意思疎通を図る目的で「国民請願と提案」の掲示板を作りました。それとともに「一定規模以上の質問や請願がある場合、政府と当局者が回答を行うことができる」ことも明らかにしています。この度の女性徴兵制に関する8万件を超える請願を受けて、大統領府がどのような回答を出すか注目されています。