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事業内容(目的)変更手続き

株式会社等の法人における事業内容(目的)は、その法人が営む事業の範囲を規定するもので、株式会社等の法人は、これに規定された範囲で法人格が与えられ、権利義務の主体となります。

 

事業を継続して行くなかで、事業の拡大・縮小の必要が生じる事態に遭遇することがあります。このような場合は、事業内容(目的)を追加したり削除する変更の手続きが必要です。

 

事業内容(目的)の変更手続きにはどんな手続きが必要なのかその概略を株式会社を中心に説明します。

 

 

目次

  1. 事業内容(目的)の変更は、融資問題に深くかかわる
  2. 事業内容(目的)の変更に関する登録免許税を抑える
  3. 事業目的の変更の注意点
  4. 事業の内容(目的)変更手続きの流れ
  5. 会社の事業内容(目的)は、4つの観点から検討

 

事業内容(目的)の変更は、融資問題に深くかかわる

事業内容(目的)は、定款に必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」です。また、登記すべき事項に該当します。

 

このため、事業内容(目的)を変更するためには、定款変更手続きとそれに伴う目的の変更登記が必要です。

 

株式会社等の法人事業者が、金融機関等から融資や借入を行う際には、必ず当法人の事業目的の確認作業が行われます。金融機関等に融資の申請を行っても、法人の事業目的の範囲に属さない事業であれば、融資を受けられない危険もあります。このような事態に陥ることがないように、株式会社等の法人が新規事業に着手する場合は、事前に事業内容(目的)の変更登記を行っている必要があります。

 

事業内容(目的)の変更に関する登録免許税を抑える

株式会社における事業内容(目的)の変更には、定款の変更手続きが必要です。その手続きは、株主総会を招集・開催し、定款変更決議(目的変更決議)を議決して、変更が完了した日から2週間以内に、その会社の本店の住所を管轄する法務局において、変更登記を行います。

 

登記変更に伴う登録免許税は、一件について3万円です。ただ、登録免許税は一件につき3万円なので、目的の数を1つ増やそうが10個増やそうが、また、1つ削除しても、5つ削除しても、登録免許税は、3万円になります。

 

また、他の項目、例えば会社名・商号の変更、役員変更、本店の所在地移転登記等の変更登記を行う場合も、一度に申請すれば1件の申請扱いとなるので、変更登記をなす場合はそのタイミングをうまく図って、なるべく登録免許税を低く抑える検討を行うべきです。

 

事業目的の変更の注意点

会社名・商号変更手続き_02

事業内容(目的)の変更に関して注意すべき点があります。

 

まず、事業内容には、許認可等が必要になる分野があります。事業内容(目的)が定款に記載されていない場合は、許認可を受けることができません。例えば、建設業、労働者派遣業や介護関連ビジネス、古物商等の業種は許認可が必要です。

 

事業内容(目的)に関しては、法人口座を金融機関に開設する際も大きく関わります。例えば、法人口座の開設に際して、事業目的の数が資本金の額に比べて非常に少ない場合は、金融機関からの信頼を受けることが出来ず、やむを得ず、会社の事業内容(目的)の削除を行う変更登記を行った事例もあります。また、金融機関によっては、会社の口座を開設できない場合もあります。この判断については、各金融機関の内部基準や稟議で決定するので具体的な事は分かりません。

 

そこで、株式会社の資本金の額は会社法の規定では、1円から設立可能で,会社の事業内容(目的)の数は定款にいくらでも記載して良いのですが、資本金の額に裏付けされた会社の目的は、その会社の信用力を客観的に裏付けるものなので、資本金の額はある程度、目的に対応するだけの金額を備えておくことが重要です。

 

また、設立当初行っていた事業目的も、既に行っていない場合もあります。これらの事業内容(目的)を変更せずに放置しておけば、目的の数だけ異常に多くなり、金融機関等の信用も得ることができません。

 

次に、目的の変更登記の場合は,株主総会(定時又は臨時)議事録、OCR用紙、変更登記申請書を提出しますが その際に当然ながら会社の事業内容(目的)を記載する必要があります。ここで注意すべきは、変更登記の申請をする際に、目的に追加する部分や変更する部分だけを記載するのではなく、最終的に変更登記後に会社履歴全の証明書(登記簿謄本)に記載する事業目的の全てを記すことが必要です。

 

何故なら、事業内容(目的)の追加したものだけを申請すれば、元々、会社履歴事項全部証明記録にあった事業目的がすべて消去されるからです。

 

事業の内容(目的)変更手続きの流れ

会社名・商号変更手続き_03

事業目的変更手続きの概略は以下の通りです。

 

1.株主総会の招集と開催―会社の目的変更は、株主総会(定時総会でも臨時総会でも可)の議決を必要とします。

 

2.株主総会において目的変更決議を行うー株主総会における議決は、議決権のある株式数の過半数を保有する株主が参加し、その議決数の3分の2以上の賛成による特別決議ともって、定款変更事例にあたる会社の目的変更決議はなされます。

 

3.管轄法務局における目的変更登記―会社事業内容(目的)は、定款に絶対的記載事項であり、法務局に登記すべき事項です。会社の目的変更議決を行ったら、株主総会の決議の日から2週間以内に管轄の法務局で、変更登記申請を行う必要があります。ただ、株主総会において目的変更の効力発効日を別途定めた場合は、その発効日から2週間以内に登記申請すればよいとされています。

 

尚、登録免許税は、1件につき3万円です。

 

会社の事業内容(目的)変更に登記に必要な書類は、①株式会社変更登記申請書、②株主総会議事録、③OCR用紙、④代表者以外のものが申請代理する場合は、委任状は必要です。

 

また、これ他登記の問題ではありませんが、事業内容(目的)の変更は、労働基準監督署への届出を再検討することが必要になる場合があります。

 

何故なら、労働保険や雇用保険の保険料率は、会社の事業内容(目的)によって異なり、また事業によって雇用基準も異なるからです。会社の事業内容(目的)の変更が、その会社の主力事業の内容の変更にあたる場合や、いわゆる商売替え等を行った場合は、速やかに労働基準監督署へ変更届を提出する必要があります。

 

会社の事業内容(目的)は、4つの観点から検討

会社の事業内容(目的)を定款に記載・変更するには、以下に掲げる4つの観点から検討する必要があります。

 

①具体性

会社名・商号変更手続き_04

会社法の施行により、目的の具体性は従来と比べ大幅に緩和せれたと言えます。会社等の法人が、権利・義務の主体となる権利能力の範囲は、定款に記載された具体的な目的に限りません。

 

目的を行う上で間接的に関連する目的のための行為であれば、会社の「目的の範囲内の行為」と解されます。仮に会社の目的は具体性を欠き、これによって会社関係者が不利益を被った場合でも、会社の目的は登記事項なので、自己責任とされ、法務局の登記官に具体的要件の審査をする権限は与えられていません。

 

ただ、具体的に記載できるものは、細かく記載しても構いません。

 

②明確性

明確性とは、会社の事業内容(目的)に明確性がなければならないとするものです。明確とは、定款に記載した会社の目的が、意味明瞭であり、一般人が理解可能な目的表現にすることです。

 

③適法性

会社の事業内容(目的)は、当然ながら、強行法規や公序良俗に反する目的であってはなりません。また、これと関連して、弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士等の各士業法で保護されている資格取得登録者にのみ認められる業務を行うこともできません。

 

④営利性

株式会社やその他の会社は、営利性を追求することが求められます。営利性とは、株主から調達した資金を事業活動に投資して、利益をあげ、そのうちのいくらかを株主に配当することを言います。

 

営利性を有しない会社の事業内容(目的)を定款の会社の目的に掲げることはできません。

 

以上、会社の事業内容(目的)の変更には、法的手続きの遵守と会社設立時に際して行った会社の目的に対する基本的な理解に立ち返ることも重要と言えます。

 


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