会社設立は、会社法やその他の設立手続きが記載された会社設立のノウハウ書に沿って手続きを行えば、一応は会社設立に辿りつけるとは思います。ただ、はじめて会社を設立する者にとって、巷間言われているように、会社設立手続きはそんなに簡単なものではなく、煩雑で時間も労力もかなり使う業務と言えます。
会社設立時には、様々な注意すべき点があることの考慮する必要があります。ここでは、会社設立手続きの順序に従って、会社設立時に注意すべき点の基本的な注意点を、税務面も含めて解説します。
目次
- 商号選定における注意点
- 会社の目的についての注意点
- 本店の所在地に関する注意事項
- 公告方法に関する注意点
- 発行可能株式数に関する注意点
- 株式譲渡制限を設ける際の注意点
- 会社に設置する機関についての注意点
- 取締役の員数に関する注意点
- 代表取締役に関する注意点
- 定款附則に関する注意点
- 資本金の額と課税に関する注意点
- 資本金の額と課税に関する注意点
商号選定における注意点
会社を設立する際には、会社の名前である商号を決定・登記する必要がありますが、登記する際に使用可能な文字は、日本の文字の他、ローマ字、その他の符号で法務大臣の指定するものに限定されているので、十分な調査が必要です(商業登記規則第50条)。
商業登記規則 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S39/S39F03201000023.html
会社の目的についての注意点
会社等の法人は、その目的の範囲内で権利を有し義務を負います。そこで、会社の設立時には、会社の目的(事業内容)を決定する必要があります。この決定基準のとして、適法性、明確性、営利性、具体性の4つが挙げられています。
適法性は、言うまでもなく、公序良俗や法令等に反する事業を会社の目的にしてはならない等言う事です。明確性は、社会一般の人が、会社の目的の語句の意義を明確に理解できるものとされています。営利性は、会社は、会社の本質である会社の事業活動で獲得した利益を株主等の会社の構成員に分配する目的のもとに設立することが求められると言う事です。
慈善事業等の利益を求めない事業目的を会社の目的とすることはできません。具体性は、会社の事業内容との関連で、会社の目的をどの位具体的に決定するかという問題です。これについては、登記官の審査対象から外され、かなり抽象的な目的表現でも登記可能ですが、対外的に何を目的とする会社なのか分からないほど抽象的な会社の目的(例えば、法令に反しない一切の営利事業)では、融資や取引先の理解も得られないでしょう。
会社の目的は、会社創業時に開始する事業や将来の事業計画も含めて十分検討します。また、目的の中には、許認可が必要な業種もあるので、会社設立の専門家で許認可行政制度に精通する行政書士に相談することをお薦めします。
本店の所在地に関する注意事項
本店の所在地は定款記載事項であり、登記事項です。定款に記載すべき本店の所在地は、最小行政区分である市町村町までの記載で足ります(○町○町目○番○号までの記載は不要)。ただ、登記申請時には、○町目○番○号、までの記載が必要で、ビルの何階で部屋番号まで記載しても構いません。
公告方法に関する注意点
会社は、その公告方法として、①官報による方法、②時事に関する事項を掲載する日刊紙に掲載する方法、③電子公告の3つ方法から公告の方法を選ぶことができます。近年では、電子公告の方法を採る会社が増加していますが、この場合は、電子公告調査機関の調査が必要なので注意して下さい。
登録された電子公告調査機関一覧 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji81-05.html
発行可能株式数に関する注意点
発行可能株式数は、公証人の認証が必要な「原始定款」に記載する義務はありませんが、会社設立時までには、発起人全員の同意で定款変更が行われるので、殆どの会社では、原始定款作成時に既に記載されています。
尚、譲渡制限会社の発行可能株式数に上限はありませんが、公開会社は、設立時発行株式数の4倍を超えることはできません。
株式譲渡制限を設ける際の注意点
譲渡制限株式を発行する会社は、定款に、「当該会社の株式を譲渡によって取得する際には、会社の承認を要する」といった旨の条項を置く必要があります。譲渡制限の記載は、会社法上、「当社の承認を要する」で足り、承認機関が株主総会や取締役会の場合は、特段の記載は必要ありません。
会社に設置する機関についての注意点
会社は、株主総会と取締役の他に機関を置く機関設計を行った場合は、定款に定める必要があります。機関設計は、非常にたくさんの種類が設計可能なので、自社の規模や事業内容、組織形態等を会社設立の専門家である行政書士等と相談の上、構築することが肝要です。
取締役の員数に関する注意点
取締役の員数は、会社が任意に決定できる事項です。ただ、取締役会を設置する場合は、3名以上の取締役を選定する必要があります。また、特別取締役による決議決定制度を設ける場合は、6名以上の取締役が必要です。
尚、公開会社ではない株式会社の取締役の任期は、最長10年間まで延長可能(原則2年)です。
代表取締役に関する注意点
取締役会を設置しない会社で、定款に定めがない場合は、原則として、各取締役は各自代表取締役としての代表権を有しています。代表取締役の選出は、株主総会に決議によることも可能ですが、一般的には、各取締役の互選によって選出されています。
定款附則に関する注意点
会社を設立する際の定款には、一般的に、不測の定めをおく、「定款附則」を規定します。
定款附則は、将来必要な規定と予想される一次的、経過措置的な規定で、定款の関係条文の間に置いたり、削除する場合に、条文の条数変更当が分かりにくくなることを防止するため定めます。
定款附則は、設立に際して出資される財産の価額、またはその最低額、発起人の住所、氏名又は名称。変態設立事項である、現物出資、財産引受、設立費用、発起人の報酬等が規定されます。
資本金の額と課税に関する注意点
従来の商法では、株式会社の最低資本金額は、1000万円以上、会社法上設立が認められなくなった有限会社の最低資本金額は、300万円でした。会社法の施行により、最低資本の金額制限は撤廃され、現在では、資本金は1円でも株式会社を設立することができます。
ただ資本金の額は、会社経営にとって拠り所となる資本であり、また、会社の信用度や融資を受ける際にも大きく影響することから、なるべく多い方がよいとも考えられます。
一方、資本金の額は、税金面の観点からは、資本金の額が大きくなれば、それだけ税金の負担が重くなるデメリットがあります。
このデメリットを具体的に表を使って記述すれば、以下のように要約されます。
資本金の額 | |
---|---|
~9、999,999円 | 消費税の免除等の優遇措置あり |
10,000,000円~ | 第1期、第2期の消費税免除措置が受けられない |
10,000,001円~ | 法人住民税の均等割りの下限金額が上昇する |
30,000,001円~ | 会社が事業のために取得した機械等の減税措置が限定される |
100,000,001円~ | 法人税率の上昇、法人住民税の均等割り下限金額の上昇等 |
以上のことから、個人会社や同族会社を新規に設立する際には、資本の金額を10,000,000円に抑えた方が、税制面では良い選択と言えます。
決算期・会社の計算に関する注意点
会社に事業年度(決算期)は、会社が任意に定款で定めることができます。また会社法上には、定時株主総会を毎年1回以上招集しなければならないと言う規定も有りませんが、会社計算規則で、事業年度が1年を超えてはならないと規定しています。
事業年後の決定にあたり注意すべき点は、①決算期が他の月と比較して利益の大きくなる月である場合は、利益が読みにくく、節税対策が採り辛いので、利益が多いと予想される月を事業年度の最初の方に設定すること、②決算期と会社の繁忙期が重ならないように設定することが重要です。確定申告時には、納税義務も生じるので、資金繰りに余裕がある時に決済期を設定すべきです。
③資本金の額が10,000,000円未満の場合は、設立の第1期と第2期の消費税が免除されますが、注意すべきは、消費免除期間は、最初の2年ではなく2期と言う事に注意すべきです。
例えば、4月1日に会社を設立した場合の消費税免除期間は、決算期を4月にした場合、第1期は、4月1日から同月の4月30日まで、第2期は、5月1日から翌年の4月30日までの1年1か月ですが、決算期を3月にすれば、第1期は、4月1日から翌年の3月31日まで、第2期は、翌年の4月1日から翌々年の3月31日までの2年間になります。
以上このとから、会社設立時の事業年度設定に際しては、第1期がなるべく長くなるよう設定することが重要です。
消費税の負担はかなり大きな金額となるので、事業年度設定の際には、十分専門等のアドバイスを受けて最も利のある期間に設定して下さい。