起業時や会社設立後に創業者や経営者は様々な課題に直面しますが、とりわけ資金調達で苦労するケースが多くあります。実際、必要な時に必要な額の資金を調達ができないと会社の継続や発展が困難になりますが、補助金・助成金がその調達手段の1つとして役立ってくれます。
また、コロナ禍の資金繰りが厳しくなりやすい経営環境を乗り切るためにも補助金・助成金の活用は有効です。そこで今回は新設会社等が行いたい補助金・助成金の活用を取り上げます。
補助金・助成金の概要・種類や活用のメリットのほか、利用可能な支援策とその事例、コロナ禍で役立つ制度、申込みや受給申請等での注意点、などを説明します。
会社設立(創業)に役立つ助成金、経営基盤強化や新規事業開発などに利用できる補助金、人材確保・雇用維持に活用できる助成金、その受給や活用のポイントなどを知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
1 補助金・助成金の概要と手続の特徴
まずは、補助金・助成金の主な特徴や手続の流れなどを説明しましょう。
1-1 補助金・助成金とは
補助金や助成金は、特定の政策を実現するために国や自治体等から支給されるお金のことです(民間もある)。この補助金等による支給は無償であり通常返却する必要がありません。
国等が実施している企業の資金調達に関わる支援制度には「融資」「出資」や「信用保証」もありますが、「補助金」や「助成金」も重要な施策として提供されています。
融資は、企業等へお金を貸付け一定期間に返済をしてもらうという資金提供の方法、信用保証は企業が金融機関から融資を受ける際の債務を保証する方法(信用保証は融資に伴う手段)、出資は企業の株式を取得する代わりに対価としてお金を提供する方法です。
従って、補助金等は融資のように受け取ったお金を返済する義務もなく、出資のように株式などの対価を提供する必要がない、企業にとっては調達に伴う負担が小さくリスクの低い方法と言えます。
ただし、どの人・どの企業等でも受給できるわけではなく、受給するためには申請して各制度(支援策)における審査を受け合格しなければなりません。もちろん利用要件などが設定されており、企業等に一定の資格が求められることも少なくないです。
1-2 補助金と助成金の違いと特徴
補助金や助成金の内容については、その支援策を提供(実施)する主体により定義されるケースはありますが、両者の違いは明確に規定されていません。国の省庁や各自治体などにおいて両者に関する一定の使い分けが見られるものの、基本的には同じ性質のお金の提供手段と考えてよいでしょう。
なお、経済産業省では補助金、厚生労働省では助成金の名目で設定される制度(支援策)が多くあります。例えば、前者では「事業再構築補助金」、後者では「雇用調整助成金」といった名称の制度となっています。
また、東京都では都が主体となって提供している制度は「助成金」の名称が使われていますが、他の自治体では「補助金」の名称で提供されているケースも少なくありません。
なお、補助金と助成金は返済不要の資金を無償で提供するという基本的な性質は同じですが、運営する機関(省庁や自治体等)により、その特徴に違いが見られることもあります。
例えば、経済産業省の補助金ではその採択件数や採択金額が決まっていて、採択件数以上の申請がある場合、その規定内容を超えた分の申請は採択されません(審査で採択されなくなる)。
また、要件を満たしても申請数が予定の採択件数内であっても審査で不適切な案件と評価されれば不合格になることもあります。なお、経産省の補助金の財源は主に税金で、支給額は厚労省の助成金より高額になるケースも多くあります。
財源が税金で高額となっているような補助金等を受給するためには、それを受けるための事業に妥当性や必要性などが求められます。そのため企業が補助金等を受給するには妥当性等を示す必要があり、そのための計画や資料等の適切な準備が欠かせません。
一方、厚労省などの助成金では、利用要件を満たせば受給できる可能性が経産省の補助金よりも高くなります。もちろん一定の審査はありますが、経産省の補助金と比べると要件を満たせば受給しやすい支援策が多く見られます。なお、その財源が税金ではなく保険料になっている制度もあります(雇用調整助成金等)。
また、助成金でも申請等で計画・資料などが要求されますが、経産省の補助金より資料の準備負担が比較的軽くて済みます。資金の支給時期については両者ともに後払い(対象事業の完了後)が多いですが、助成金は前払いされるケースも少なくありません。
このように補助金と助成金の特徴に多少の違いが見られるものの、各省庁や各自治体の補助金・助成金の支援策ごとで異なることも多いため、利用したい制度の内容を正確に確認することが重要です。
1-3 補助金・助成金の手続の流れ
補助金等を受給するまでの基本的な手続の流れを紹介します。
①補助金
経済産業省などで使われる補助金は公募制による支給が多くあります。公募の回数は各支援策によって異なりますが、年数回程度の公募が多く見られます。その申請から給付までの流れは以下の通りです(自治体等で内容は異なる)。
- ・公募開始(国等)
- ・申請書および関係資料等の提出(企業等)
- ・審査(国等)
- ・採択(国等が給付対象者を決定)
- ・補助金の対象となる事業(補助事業)等の実施(企業等)
- ・支給申請(補助事業実施報告書等の提出)(企業等)
- ・確定検査(国等)
- ・補助金申請(企業等)
- ・給付(国等)
以上の通り、公募期間中に企業等が申請した後、国等で審査が行われ給付先が決定されます。決定後にその採択先へ郵送でその通知書が送られ、その後企業は申請内容に従って補助事業を行い、その実施を根拠に補助金の支給申請を行うのです。
そして、制度の運営者による確定検査でその支給申請に問題がないことが確認されれば、企業等へ補助金が給付されます。
②助成金
助成金は厚労省の雇用関連の支援策や自治体等に使われるケースが多いです。助成金の場合、年度で1回だけの一定の申請期間が設けられるケースが多く、その機会を逃すとその年度の申請ができなくなります(年複数回の公募もある)。
なお、厚労省の申請から給付までの主な流れは以下の通りです(異なるケースあり)。
- ・助成金交付申請書の提出や実施計画等の申請(企業等)
- ・審査と交付の決定(国等)
- ・計画等の実施と結果報告(企業等)
- ・支給申請(企業等)
- ・給付(国等)
厚労省の助成金では、企業等は業務改善計画や賃金引上計画などを記載した交付申請書を指定の労働局等へ提出します。労働局等で交付申請書の審査が実施され、内容が適正と認められれると助成金の交付が決定され決定通知書が発行されます。
決定を受けた企業等は申請した計画・事業を実行し実施結果などを労働局等へ報告しなければなりません。労働局等で報告内容が審査され、内容が妥当の場合は助成額が決定され企業等に通知されます。
助成金額の確定通知をもらった企業等は、所定の支払請求書を提出し、給付を受けます。
2 補助金・助成金のメリットと種類
補助金等を利用することの意義やどのような目的のタイプがあるのかをご紹介しましょう。
2-1 補助金・助成金の活用の意義
①返済不要の資金の獲得
補助金等は融資と違って返済不要の資金であるため、財政への悪影響を心配する必要なくその資金を事業に利用できます。また、第三者による出資でもないため、会社の乗っ取りや経営への圧力なども気にする必要がありません。
融資はお金を一定期間借りることであり、返済期間中は通常利息を負担することになるため企業財政を圧迫します。利子率や返済期間が適切でない場合、返済負担が大きくなり資金ショートの可能性を高めて倒産危機を招くことも少なくありません。
しかし、補助金等は返済の必要はなく倒産危機に結び付くことはありません。つまり、補助金等は財政面では全く心配のない調達手段と言えます。また、出資は自社株式を提供する対価として資金を受け取る手段ですが、補助金等は何も対価として提供することはありません。
出資では株式の提供により会社の乗っ取りや経営へ圧力というリスクを生じさせますが、株式の提供を伴わない補助金等には、そのリスクを気にしなくても構いません。
②知名度や信頼度などの向上
補助金等を受けるには要件を満たし一定の審査を受けて合格する必要があるため、受給できれば企業としての信頼度が上昇するほか、知名度も向上しブランド価値が高まることもあります。
補助金等のタイプにもよりますが、申請するだけでは簡単に受給できない制度も多いです。そのため受給が容易でない補助金等を受給できると企業の信頼度や信用度の上昇に繋がります。
申請には事業計画や業務改善や組織体制・管理の改善などの計画が必要となり、その妥当性・必要性・有効性などが審査で評価されます。そうした審査をクリアして給付が決定されるため、その企業は世間から良い評価を受けやすくなるのです。
給付を受けた企業が公表されるケースも多いため、それにより知名度も上昇します。つまり、補助金等を受給することで企業ブランドの価値を高めることができます。
③業務遂行や雇用状況等の改善
また、補助金等の受給対象となる事業活動(投資、業務改善、雇用等)を計画して実行していくためには、これまでの業務遂行方法や雇用状況を改善したり、マネジメントシステムを新たに導入したりする必要性も生じます。
補助金等のタイプや内容によって異なりますが、上記のような改善などを前提として給付されるケースが多いです。従って、申請した計画や事業内容に基づく行動をとれば企業が希望する事業の成長のほか、業務改善、職場改善などが実現できるようになります。
その結果、経営基盤の強化、新事業展開、人材確保、雇用の維持、マネジメント体制の改善、などが実現できるようになるのです。
④経営の質の向上
上記のように補助金等の受給に至る過程を通じて、企業はその経営品質を高めることができます。例えば、適切な計画を立案せずに事業活動している、業務遂行を場当たり的に行っている、明確な管理システムを保有していない、といった企業が補助金等の申請を契機にそれらの改善に取り組むことも多いです。
受給に至る一連の活動には、申請に伴う計画の策定、採択後の計画実行に向けた準備や環境整備、計画の実施、実施のための管理、などが必要になります。また、受給の確定審査ではこうした内容が確認・評価され、有効性や妥当性が評価されるため、企業には計画した行動の実施・目標達成が不可欠です。
つまり、採択され補助金等を実際に受給するには、以上のような適切な計画の策定とその実行・管理が必要となります。そのため補助金等の受給に関連した行動を取っていけば、企業の経営品質を高めることができるのです。
2-2 補助金・助成金のタイプ
補助金等の種類は多種多様に存在しますが、ここでは創業者や中小企業等が利用しやすいタイプを国の制度を基に紹介します。
*参考:「中小企業施策利用ガイドブック」
①経営サポート分野
支援策は以下のような項目で分類され、提供されています。
●技術力の強化支援
ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
戦略的基盤技術高度化支援事業(補助金)
IT導入補助金
医工連携イノベーション推進事業(開発・事業化事業)
など
●創業・ベンチャー支援
研究開発型スタートアップ支援事業
*厚労省の雇用関係の助成金の中には会社設立後間もない企業でも利用可能な制度も多くあります。
●新たな事業展開支援
小規模事業者持続化補助金(一般型)
伝統的工芸品産業支援補助金
●経営革新支援
商業・サービス競争力強化連携支援事業
●知的財産支援
海外知財訴訟費用保険に対する補助
中小企業等海外出願・侵害対策支援事業費補助金
日本発知的財産活用ビジネス化支援事業費補助金
●雇用人材支援
雇用調整助成金
特定求職者雇用開発助成金(被災者雇用開発コース)
働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース等)
ストレスチェック助成金
職場環境改善計画助成金
心の健康づくり計画助成金
小規模事業場産業医活動助成金
治療と仕事の両立支援助成金
労働移動支援助成金(再就職支援コース等)
戦略的ツール活用型若者人材移転支援事業
など多数
●海外展開支援
低炭素技術を輸出するための人材育成支援事業費補助金
JAPANブランド育成支援等事業
JICA「中小企業・SDGsビジネス支援事業(中小企業支援型)」
技術協力活用型・新興国市場開拓事業
●経営安定支援
施設・設備の復旧・整備に対する補助制度
省エネ関連設備等の導入に対する支援
中小企業等事業再構築費補助金
なりわい再建支援事業
②財務サポート
事業承継・引継ぎ補助金
③商業・地域サポート
中小企業組合等共同施設等災害復旧費補助金
地域企業デジタル経営強化支援事業
地域産業デジタル化支援事業
地域の持続的発展のための中小商業者等の機能活性化事業費補助金
④分野別サポート
建設事業主等に対する助成金
強い農業・担い手づくり総合支援交付金
⑤相談・情報提供
ITに関する専門家派遣事業
以上は国の支援策に伴う主な補助金・助成金ですが、各自治体(およびその支援機関等)にも多種多様の制度が多く設けられています。なお、一般的には以下のような支援項目が多いです(検索の際に有効)。
コロナ関連・被災者支援
起業・創業・ベンチャー
IT関連・ネットワーク・テレワーク
観光・インバウンド
人材育成・雇用
経営基盤強化・経営改善
海外進出・展開
研究・技術・産学連携
特許・知的財産
設備機器導入
事業継承
地域活性化・まちづくり
専門家派遣・支援
環境・省エネ
ISO・国際規格
販路拡大・新規事業・開発
農商工連携
3 主な補助金・助成金の支援策と事例
ここではよく利用される補助金等の制度と事例を取り上げ、活用する上でのポイントなどをご紹介します。
3-1 生産性向上に役立つ補助金等
厚労省の「生産性向上事例集」から「働き方改革推進支援助成金(時間外労働等改善助成金)」と「業務改善助成金」について紹介します。
①働き方改革推進支援助成金
同助成金は、中小企業等が時間外労働の上限規制等に対応するために、生産性を向上させつつ労働時間の短縮等に取り組む事業主に助成するものです。中小企業等での労働時間等の設定の改善の促進が目的とされ、令和3年5月現在では3コースの助成金があります。
労働時間短縮・年休促進支援コース
勤務間インターバル導入コース
団体推進コース
*以前には「職場意識改善コース」「テレワークコース」があり、全部で5コースが提供されていました。
●職場意識改善コース
・概要
同助成金は、生産性の向上等を実現することで、所定外労働時間の削減や年次有給休暇の取得促進等に取り組む中小企業等に対してその経費の一部を助成するものです。
・対象事業主の要件
雇用労働者の年次有給休暇の年間平均取得日数が13日以下かつ月間平均所定外労働時間が10時間以上となっている事業主 など
・助成対象の費用
労働時間短縮や生産性向上を目的とした以下のような取り組みに必要な費用
外部専門家によるコンサルティング
就業規則等の作成や変更
労務管理用機器の導入や更新
人材確保に向けた取り組み
労働能率の増進に資する設備や機器の導入や更新
・助成額
最大100万円
●事例:もやし栽培枠反転リフターの導入による作業可能者数の増加と作業の平準化
・企業概要
所在地;佐賀県
従業員数;68人
事業の種類;食料品製造・販売業等
・課題と対応
もやし洗浄槽へのもやし投入作業の自動化を実現するため、設備投資を通じた業務改善を検討していた
以前はフォークリフト免許を保有する特定の社員がもやし投入作業を行っており、その業務負担に偏りが生じていたため、助成金を活用してもやし栽培枠反転リフターを導入することにした
・成果
フォークリフト免許保有者に偏っていたもやし投入作業が免許保有者以外の者でも担当できるようになり、免許保有者の作業負担が軽減した。また、免許保有者の出勤等の影響を受けない業務遂行ともやし製造業務の平準化が実現できた
・活用のポイント
⇒助成金を活用して設備・機器等を導入して作業方法を改善すれば、業務効率の向上や作業の平準化・簡素化が実現でき、作業時間の短縮に伴う残業時間の短縮や有給休暇の取得促進などが期待できます。
②業務改善助成金
同助成金は、中小企業等の生産性向上を支援し、事業場内での最低賃金の引上げを目指すための制度です。
・概要
生産性向上のための設備・機械、POSシステム等の導入等の設備投資、人材育成に係る研修、コンサルティングを受けての業務改善などを実施し、事業場内最低賃金を30円以上引き上げた場合、それらにかかった費用の一部が助成されます。
賃金の引き上げ額によって、20円以上、30円以上、60円以上、90円以上の4つのコースがあり、賃金を引き上げる労働者数や助成上限額が異なります。なお、支給要件では、賃金引上計画の策定、当該経費の支払いや最低賃金の引上げ実施(就業規則等に規定)などが必要です。
・対象事業主の要件
令和3年度予算案での対象は、事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内および事業場規模100人以下の事業場の中小企業等です。
・助成の対象となる費用
POSレジシステム導入、リフト付き特殊車両の導入、顧客・在庫・帳票管理システムの導入、専門家による業務フロー見直し、などにかかる費用
・助成額
20万円~450万円
●事例:セミセルフPOSレジの導入によるレジ業務の効率化
・企業概要
所在地;熊本県
従業員数;24人
事業の種類;生鮮食料品小売業
・課題と対応
忙しい時間帯のレジ待ち行列を少なくするため、設備投資による業務効率化を検討していた
購入代金や釣銭の受け渡しをすべて従業員が対応していたため、顧客が込み合う時間帯ではレジ待ち行列ができていた。そこで、その状況の改善のために助成金を活用してセミセルフPOSレジを導入した
・成果
レジの精算時間が1.5倍の速くなり、同じ時間でより多くの精算処理が可能となったほか、預り金や釣銭の受け渡しのミスがなくなった
レジ業務の削減で生産性が向上し、23人の従業員の時間給(事業場内最低賃金)を52円引き上げた。加えて事業場内最低賃金以外の従業員の賃金の引き上げも実施した
・活用のポイント
⇒助成金の活用で生産性向上に繋がる機器等を導入すれば、作業時間や生産時間の短縮などからコスト削減や競争優位性の強化に繋げられます。そして、その結果、利益を多く生み出し賃金アップも可能になるのです。
こうした助成金を活用した設備投資は、労働者に対する賃金アップと作業負担・時間の軽減などに繋がるため、人材確保や雇用維持の対策手段として有効となり得るでしょう。
3-2 ものづくりに役立つ補助金等
ここでは経済産業省の「ものづくり補助金」について紹介します。参考事例は全国中小企業団体中央会が発行する「ものづくり・商業・サービス補助金成果活用グッドプラクティス集」からです。
・ものづくり補助金の概要
同補助金は、中小企業等が生産性向上に役立つ革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資や、新規ビジネスモデルの構築を支援するプログラム経費の一部を支援します。なお、正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」です。
*新型コロナウイルスに伴う危機を乗り越えるための投資を支援する「新特別枠」が別途措置されています。
・対象事業主の要件
以下の要件を満たす事業計画(3~5年)を策定し実行する中小企業等が対象です。
- 1)付加価値額の年率3%以上向上
- 2)給与支給総額の年率1.5%以上向上
- 3)事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上へ向上
・助成対象の費用
革新的なサービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善に必要な設備投資等
新規ビジネスモデルの構築を支援するプログラム経費
・補助金額
一般型:1,000万円
グローバル展開型:3,000万円
・補助率
通常枠:中小企業1/2、小規模企業者・小規模事業者2/3
低感染リスク型ビジネス枠:2/3
●事例:ノウハウを活かした自社製品開発と支援機関のサポートを活用した海外販路開拓
(平成25年度補正中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業)
・企業概要
所在地;北海道
従業員数;3人
事業の種類;製菓機械、農業・食品機械製造
・課題と対応
地元の大手菓子メーカーの業務用バウムクーヘン製造機械のメンテナンス業務を営んでいて、「国内のバウムクーヘンオーブン機は主に中~大規模生産向けであり、小ロット生産向け機械の需要がある」ことを認識していた
小ロット生産向け小型バウムクーヘンオーブン機を開発した場合、海外展開も検討したいが、具体的にどう展開していくかが課題だった
・成果
補助金を活用しては予定していた機械設備を導入し、小ロット生産向け小型バウムクーヘンオーブン機の開発に成功した。本事業の推進により売上高は補助金申請前の約4千万円から約7千万円に伸びた
海外展開に関しては、海外取引に精通している地元の信用金庫から契約書や通関、貿易実務などのサポートを受け、またジェトロの支援を受けてジェトロ主催のシルクロード国際博覧会に出展した
新たな挑戦となる海外展開も視野に入れた新商品開発を行うことで社員のモチベーションがアップしたことに加え、業績の向上により給与水準も引き上げた
・活用のポイント
⇒補助金の採択は簡単とは言えないため、申請や採択案件の実績のある支援機関等のサポートを受けながら準備と申請手続を進めるのが重要です。特に経済産業省の補助金の対象となる事業を推進するには、適切な補助事業の計画策定とその実施が不可欠です。
そのため補助金の申請から事業の実施までには各種の公的機関や専門家の支援が必要となることも多く、また制度的にそうした支援体制が整備されています。
なお、利用した制度(支援策)だけでなくその補助事業に関連して他の制度や機関などが活用できるケースも少なくありません。そのため利用可能な制度や機関等を積極的に探し活用するようにしましょう。
⇒補助金を得て単に欲しい設備等を購入するというのではなく、特定のビジネス機会を捉えるなどの戦略的な観点から実施することが何より重要です。また、そうした新たな取り組みから得た利益を社員に還元すると雇用維持等の面で効果が得られるでしょう。
3-3 創業に役立つ補助金等
国の創業に関連して利用できる補助金等としては、以前「地域創造的起業補助金(創業補助金)」が代表的でしたが、現在は募集されていません。今では「研究開発型スタートアップ支援事業」などがありますが、利用しやすいタイプとしては東京都など自治体が提供している創業関連の助成金等になります。
例えば、東京都では「創業助成事業」(区単位の助成金あり)、大阪府では「大阪起業家グローイングアップ事業」などがあり、都道府県や市などの単位で提供されているのです。
ここでは東京都の「創業助成事業」を紹介しましょう。
・概要
創業助成事業は東京都中小企業振興公社により運営されている助成制度で、助成対象事業に対して最長2年間にわたり、人件費や事務所賃借料等の事業にかかる経費の一部が助成され、助成対象期間終了後も同公社による継続的な支援が受けられます。
・対象事業主の要件
都内で創業を予定している者または創業後5年未満の中小企業者等のうち、一定の要件(※)を満たす者
※「TOKYO創業ステーションの事業計画書策定支援修了者」「東京都制度融資(創業)利用者」「都内の公的創業支援施設入居者」等
・助成対象の費用
賃借料、広告費、器具備品購入費、産業財産権出願・導入費、専門家指導費、従業員人件費
・助成額
上限額300万円、下限額100万円
・助成率
助成対象と認められる経費の2/3以内
●事例:働く人の笑顔を増やし介護サービスの世界を変えるワークシェアリングサービス
・企業概要(カイテク株式会社)
所在地;東京都港区
従業員数;5人
事業の種類;介護ワークシェアリングサービスの開発・運営 等
・課題と対応
家庭での介護経験、ボランティアの介護職としての高齢者施設での経験から介護現場の人手不足を痛感し、その問題解決に役立つ事業の立ち上げを決意したが、人脈も資金もなく、うまくやっていける自信が創業者になかった
起業前に東京都主催の若手起業家支援のビジネスコンテストに参加。その会場のある創業支援施設(スタハ)で創業に関する相談、情報収集、他の起業家との交流を経て会社を設立した
設立から1年、様々な事業を試行錯誤で繰り返した末、人材不足の介護施設と、空いた時間を活用したい介護士とを直接マッチングする介護シェアリングサービス「カイスケ」を開発した
・成果
「カイスケ」で会社としてのある程度の実績ができた時点で、創業助成事業に申請し、広告宣伝費・人件費・Webサービス関連費用などに助成金を活用した
また、様々なビジネスコンテストへ参加して多くの賞を受賞したことにより約1億円の資金調達ができ事業を加速させた
・活用のポイント
⇒自治体等の創業支援関連の補助金等の支給額は100万円といった水準で多いとは言えないですが、一定の設備投資資金、開発資金や運転資金の一部で役立ちます。比較的簡単な手続(創業計画等の提出等)で受給できる可能性があるため、創業者等にとっては期待できる施策の1つと言えるでしょう。
なお、融資や出資などの支援策も多く提供されているため、調達資金の不足分に活用するべきです。
⇒東京都ではほかにも「『新しい日常』対応型サービス創出支援事業」などがあり、各区の独自の創業支援策(港区の「新規開業賃料補助」等)が提供されているため、利用できるものは積極的に申請しましょう。
3-4 小規模事業者に役立つ補助金等
小規模事業者に役立つ補助金等は多くありますが、その代表的な制度の1つが「小規模事業者持続化補助金」です。
・概要
同補助金は、小規模事業者が変化する事業環境の中で持続的に事業を発展させていくために経営計画を作成し、販路開拓や生産性向上に取り組む場合の費用等に対して支給されます。
・対象事業主の要件
常時使用する従業員が20人以下(商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)の場合は5人)の法人・個人事業主
・補助対象の費用
チラシ作成、ウェブサイト作成、商談会への参加、店舗改装等の費用
・補助額
補助上限額50万円(単独申請)
500万円(※共同申請(複数の事業者が連携して取り組む共同事業))
※「1事業者あたりの補助上限額50万円×連携する事業者数」が補助上限額(最大10者まで共同申請可能)
・補助率
2/3
●事例:「ドローンによる建設竣工写真撮影販売を強化し、売上増大を図る」
*経産省サイト「ミラサポplus」より
・企業概要(有限会社ビレジ)
所在地;宮城県
従業員数;1人
事業の種類;技術サービス業
・課題と対応
創業時からの写真現像・プリント処理、事務用品・写真販売に加え、法人化後は建設工事竣工写真撮影を営業基盤としていたが、その建設工事竣工写真撮影での新販路の拡大が課題であった
新販路拡大のためにドローンを使った空撮サービスの導入を検討し、その費用に同補助金を活用した。具体的には、建設現場等撮影用ドローンの購入、ドローンによる撮影事例を紹介するパンフレットの作成、新聞広告・DMによるドローン空撮サービスのPR、などに利用した
・成果
新聞掲載、「販促ツールを活用した訪問営業」の実施により建築撮影業者としての知名度が向上した。その結果、建設業者のみならず同業他社や他業界からもドローン空撮の依頼が得られるようになり、当初の目的であった新販路拡大が実現できた
・活用のポイント
⇒事業の継続には販路の拡大や売上の向上が不可欠ですが、それを実現させるための代替案の可能性に不安がある場合、必要資金の確保や経費の支出などに躊躇いが生じやすくなります。しかし、返済不要の補助金なら失敗の不安を気にすることなく新しい試みにも挑戦しやすくなるはずです。
なお、補助金等の有効活用のためには目的達成に必要な取り組みを列挙してその実現可能性や費用対効果などの点で優先順位の高いものから採用しましょう。
3-5 人材不足対応に役立つ補助金等
人材不足の問題を解決するための取り組みを支援する補助金等としては厚労省の支援策が充実しているため、ここではその主な助成金を紹介します。
1)両立支援等助成金
同助成金は、育児休業の円滑な取得の推進、育児休業からの職場復帰に対する支援、代替要員の確保、女性活躍推進などを実施した企業に給付されます。以下の4つのコースの利用が可能です。
出生時両立支援コース
介護離職防止支援コース
育児休業等支援コース
再雇用者評価処遇コース
・活用事例(育児休業等支援コース)
助成金を活用して育休の取得から復帰までの手順・内容を規定し(社内規定の整備)、育児休業が取得しやすい環境を整えた
2)65歳超雇用推進助成金
同助成金は、意欲と能力のある高年齢者による生涯現役社会を実現するため、65歳以上への定年引き上げや高年齢者の雇用管理制度の整備等、高年齢の有期契約労働者の無期雇用への転換を実施する事業主に助成するもので、以下の3コースが提供されています。
- ・65歳超継続雇用促進コース
- ・高年齢者評価制度等雇用管理改善コース
- ・高年齢者無期雇用転換コース
・活用事例:
65歳以上の継続雇用に向けて、定年後の従業員の処遇の適正化を図るため就業規則の見直しや再雇用制度の規定などについて助成金を活用して整備した
3)人材確保等支援助成金
同助成金は、雇用管理制度や介護福祉機器の導入、介護・保育労働者に対する賃金制度整備や働き方改革、雇用管理改善に取り組む企業等に支給されます。なお、同助成金では以下のコースが利用可能です。
- ・雇用管理制度助成コース
- ・介護福祉機器助成コース
- ・中小企業団体助成コース
- ・人事評価改善等助成コース
- ・雇用管理制度助成コース(建設分野)
- ・若年者および女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)
- ・作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)
- ・外国人労働者就労環境整備助成コース
- ・テレワークコース
●雇用管理制度助成コース
・概要
同助成金は、雇用管理制度(諸手当等制度、研修制度、健康づくり制度、メンター制度および短時間正社員制度(保育事業主のみ))の導入・実施により従業員の離職率の低下に努める事業主が利用できます。
・主な要件
雇用管理制度の導入、離職率目標達成
・助成金額
目標達成助成の場合:所定の離職率(目標値)低下で57万円(生産性要件を満たした場合72万円)
・活用事例:
社員の職場への定着状況が良くなかったため、助成金を利用して社員の階層別の教育・研修制度を導入して事業所の離職率を低下させた
4)キャリアアップ助成金
同助成金は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者など、非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善に取り組んだ事業主に対して助成するものです。
正社員化コース、賃金規定等改定コース、諸手当制度等共通化コース、障害者正社員化コース、などが提供されています。
・活用事例:
助成金を活用して転換制度等に関する就業規則の修正・追加等の整備を進めて有期契約の社員を正規社員に転換した
5)産業保健関係助成金
同助成金は、「社員が健康で安心して働ける職場づくりに取り組む」という産業保健の目的を支援するための助成金です。産業保健に関連する助成金には以下のものが用意されています。
事業場における労働者の健康保持増進計画助成金
副業・兼業労働者の健康診断助成金
治療と仕事の両立支援助成金
ストレスチェック助成金
心の健康づくり計画助成金
小規模事業場産業医活動助成金
6)人材開発支援助成金
同助成金は人材育成を目的として社員に対して実施する訓練や教育訓練休暇を付与する取り組みを支援します。支援メニューは、特定訓練コース、一般訓練コース、教育訓練休暇コース、特別育成訓練コース、障害者職業能力開発コース、などです。
以上のほかにも人材不足に対応するための支援策が多く提供されているため、厚労省のサイトやリリース資料(例えば、「令和3年度 雇用・労働分野の助成金のご案内」)などを随時確認しましょう。
4 コロナ禍で役立つ東京都の助成金
新型コロナ感染症による事業への影響を軽減するための支援策が国や自治体から多く提供されていますが、ここでは東京都が提供している制度を紹介します(主に2021年度向け制度)。会社設立後間もない企業でも利用できるケースも多いため是非活用してください。
4-1 東京都中小企業振興公社が運営している制度
ここでは同公社(都立の中小企業等への総合的・中核的な支援機関)が提供している新型コロナ対策向けの助成金を紹介しましょう。
●中小企業等による感染症対策助成事業
・概要(目的)
業界団体等が作成した新型コロナ感染拡大予防対策ガイドライン等に基づいて実施する取組費用の一部が助成されます。1企業による単独申請以外にも、対象により3者以上の中小企業者等で構成されるグループでの共同申請および中小企業団体等の申請も可能です。
・使途例
単独申請の例:
備品購入費⇒サーモグラフィー、サーモカメラ、CO2濃度測定器 等
内装・設備工事費⇒換気扇設置工事、網戸設置工事、自動水栓設置工事 等
・助成額
50万円(ただし、内装・設備工事費を含む場合は100万円)
※内装・設備工事費のうち、換気設備の設置を含む場合は200万円、消耗品の共同購入費は30万円
・助成率
2/3以内
●業態転換支援(新型コロナウイルス感染症緊急対策)事業
・概要(目的)
新型コロナ感染症の流行に伴う外出自粛要請等に伴い、業績が大きくが落ち込んでいる都内中小飲食事業者が、新たなサービスにより売上を確保する取り組みに対して経費の一部が助成されます。
・使途例
1)販売促進費(印刷物制作費、PR映像制作費、広告掲載費 等)
2)車両費(宅配用バイクリース料、台車 等)
3)器具備品費(WiFi導入費、タブレット端末、梱包・包装資材 等)
4)その他(宅配代行サービス等に係る初期登録料、月額使用料、配送手数料 等)
※対象経費は全て税抜価格
・助成額
100万円
・助成率
対象経費の4/5以内
●占用許可基準緩和によるテラス営業支援事業
・概要(目的)
道路占用許可基準の緩和措置※等を活用してテラス営業等を実施する場合に使用するイスやテーブル等を新たに調達する経費の一部が助成されます。
※道路占用許可基準の緩和措置は、「地方公共団体と地域住民・団体等が一体となって取り組む沿道飲食店等がテラス席やテイクアウト等の路上営業を行う基準」が緩和される措置のことです。
・使途例
イスやテーブル等を新たに調達する経費(テラス営業等に使用する仮設施設)
・助成額
10万円(申請下限額1万円)
・助成率
2/3以内
●緊急販路開拓助成事業~展示会への出展等に関する助成~
・概要(目的)
新型コロナ感染症の影響により対象期間の売上高が前年同期比で10%以上減少している事業者に対して、展示会の出展費用等の一部が助成されます。
なお、販路開拓関連の助成金は複数あります。募集期間や募集回数等が異なりますが、「販路開拓チャレンジ助成事業」「販路拡大助成事業」上記の「緊急販路開拓助成事業」があり、要件によって利用できる支援策が異なってくるため注意しましょう。
・使途例
BtoBの展示会への出展費用等
・助成額
150万円
・助成率
4/5以内
●「新しい日常」対応型サービス創出支援事業
・概要(目的)
新型コロナ感染症の拡大に伴い非接触の要素等を組み込んだ革新的なサービスが求められており、本事業ではそのサービス展開に取り組む事業者に、専門家によるハンズオン支援(専門家派遣による支援)と必要に応じた助成金が支給されます。
・使途例
ハンズオン支援:
経営支援のコーディネータが、マーケティング、事業計画の策定・実行および効果検証等、新サービスの創出を継続してサポートします(月2回程度・無料)。
資金助成:
対象事業を実行するために要する経費の一部が助成されます。
・助成額
750万円
・助成率
1/2以内
4-2 他の東京都の助成金
東京都自体など東京都中小企業振興以外が運営する助成金等を紹介しましょう。
●宿泊施設非接触型サービス等導入支援事業
・概要(目的)
宿泊事業者が3密の回避など「新しい日常」への対応のために行う、非接触型サービスの導入等に対して支援されます。
・申請先
公益財団法人東京観光財団地域振興部
・使途例(支援内容)
アドバイザー支援:専門家のアドバイスの派遣。上限5回(無料)
施設整備等に対する補助:
宿泊施設での感染症の感染拡大防止のために行う非接触型サービスの導入や感染症防止策等に対する費用補助
・助成額
1施設あたり200万円
・助成率
2/3
●営業時間短縮に係る感染拡大防止協力金(4月1日~4月11日実施分)
・概要(目的)
東京都内の飲食店等に対する営業時間短縮の要請に全面的に協力し、感染防止徹底宣言ステッカーの掲示、コロナ対策リーダーの選任・登録を行う事業者に対し、「営業時間短縮に係る感染拡大防止協力金(4月1日~4月11日実施分)」が支給されます。
*上記案件の申請受付期間は令和3年5月31日~6月30日までです。
なお、同様の施策が期間を別にして提供されており、今後も感染状況により追加される可能性もあります。
・申請
オンライン申請と郵送申請が可能です。
・使途
感染防止徹底宣言ステッカーの掲示、コロナ対策リーダーの選任・登録、従前の朝5時~夜9時までの営業時間、酒類の提供が11時~20時での提供(または終日の提供なし)の協力に対しての助成
・助成額
1店舗あたり44万円
●【飲食店以外の中小企業等を対象】休業の協力依頼などを行う中小企業等に対する支援金(4月25~5月11日実施分)
・概要(目的)
新型コロナ感染拡大防止に向けて、人流の抑制のために設けられる緊急事態措置期間(令和3年4月25日から5月11日まで)の休業の協力依頼等に全面的に協力する中小企業、個人事業主等に支援金が支給されます。
・対象先
対象施設はリンク先ページで確認することができます。
・使途
休業の協力依頼等への協力
・助成額
1)緊急事態措置期間開始の令和3年4月25日から5月11日までの全期間(17日間)、東京都から行う休業の協力依頼等に対して全面的に協力した場合:
1店舗あたり:34万円
2)一定の理由があり、令和3年4月27日から5月11日までの全期間(15日間)、東京都から行う休業の協力依頼等に対して全面的に協力した場合:
1店舗あたり:30万円
●【大規模施設を対象】休業要請を行う大規模施設に対する協力金(4月25~5月11日実施分)
・概要(目的)
新型コロナ感染拡大防止のため、緊急事態宣言の発令に対応した緊急事態措置期間(令和3年4月25日から5月11日まで)の休業要請に全面的に協力する大規模施設および当該施設においてテナント契約等に基づき一般消費者向け事業を営む事業所を対象として、「休業要請を行う大規模施設に対する協力金」が支給されます。
*対象期間が異なる支援策が随時提供される可能性があります。
・助成額
1)大規模施設:
休業面積1,000㎡あたり、日額20万円
※テナント数等による加算あり
2)テナント等:
休業面積100㎡あたり、日額2万円
※百貨店や映画館は、別途定める算出方法により支給
なお、支給額は休業要請に協力する期間に応じて異なり、以下のいずれかの日数を乗じた金額です。
・令和3年4月25日から5月11日まで協力した場合:17日間
・令和3年4月27日から5月11日まで協力した場合:15日間
●ものづくり・商業・サービス補助金(一般型(新特別枠含む)・グローバル展開型)
・概要(目的)
同補助金は、中小企業等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善に資する設備投資等への支援金です。ただし、「新特別枠」として低感染リスク型ビジネス枠が新たに設けられ優先的に支援されるようになりました。
具体的には、新型コロナ感染拡大の影響を受けて社会経済の変化に対応したビジネスモデルへの転換に資する投資を行う事業者に対して支給されます。
・申請
申請は電子申請システムのみの受け付けです。
*問い合せ先
ものづくり補助金事務局サポートセンター
・使途および助成額
1)一般型
補助金額:100万円から1,000万円まで
補助率:
・低感染リスク型ビジネス枠(新特別枠):2/3
※単価50万円(税抜き)以上の設備投資が必要
補助対象経費:
新特別枠:通常枠対象経費に加えて、広告宣伝費・販売促進費
以上のほかにも「経営継続補助金(農林漁業者)」「東京都家賃等支援給付金」といった支援策が講じられてきました。状況に応じてこれまで列挙してきた支援策や他の支援策での追加公募のほか、新設公募などの可能性もあるため注意しておきましょう。
5 補助金・助成金の申請・受給での注意点
補助金等は企業経営にとって資金調達の有効な手段となりますが、申請すれば必ず受けられるものではありません。また、申請が採択されても補助金等が直ぐに給付されないケースも多くなっています。
こうした各支援策の手続等での決まりを把握して申請し申請内容(計画等)に基づいた行動を取らないと、申請が採択されても実施内容の検査の結果支給拒否されることもあるため注意しなければなりません。
5-1 必要書類の不備
補助金・助成金の申請には、その補助事業に関する計画書、財務諸表、就業規則や雇用契約書などの資料が求められることも多く、それらが適正でない資料であったり、提出できなかったりすれば採択されないでしょう。
国や自治体の補助金等は国民の税金や企業等の保険料などを財源としていることもあり、申請や実施した補助事業の内容等について審査や検査が行われます。そのため補助金等の給付を受けるには、まず要件をクリアし審査を通過できる必要書類の提出が不可欠です。
要求される書類等は様々ですが、事業計画書や補助金等に関連する業務、投資や雇用等の計画書などが求められることが多くあります。これらの計画書はその会社が補助金等の給付を受けるのに適しているか否かを示す根拠となるため、その有効性や必要性を示すことができなければ採択されなくなってしまいます。
例えば、計画書等にその必要性等が確認できない、内容が曖昧・不明確である、などの場合は審査での評価は低くなるわけです。必要書類について、揃えて提出すれば補助金等はもらえると安易に考えて申請すると失敗する可能性を高めてしまいます。そのため補助金等の申請をサポートする専門家や支援機関などに相談しながら手続を進めることも必要です。
5-2 補助金等の給付時期や補助率等
補助金・助成金は後払いのケースが多いですが、各制度によって異なり給付時期も様々である点に留意しておくべきです。また、補助金等は給付に上限額あり、補助率(助成率)が設定されているケースが多い点も気を付けておきましょう。
補助金等の支援策においては、その資金の給付は採択直後や補助事業の終了確認後などとなっており、給付時期が各支援策で異なります。採択後直ぐに給付されると思い込み、特定の支払いにその補助金等を考えていると当てが外れ、慌てて別の調達手段を講じねばならないというピンチに陥りかねません。
また、支給申請してから実際に給付されるまでに一定の時間を要することも多いため、事前にどの程度の時間がかかるか確認しておくことも重要です。
ほかにも補助率等についても注意しましょう。補助金等には上限額が設けられていて、補助率等が設定されているケースも多いです。例えば、支給上限が100万円、補助率が1/2の場合に、認められる経費等が200万円であれば最大100万円の給付が受けられますが、200万円全額は支給されません。
また、発生した該当経費が100万円の場合、補助率から給付は50万円になります。しかし、補助率を正しく認識していなければ上限の100万円の給付が受けられると勘違いすることもあります。
こうした補助率等の認識誤認や勘違いから資金不足や資金調達に問題を起こすことになりかねないため支給条件等を確認するとともにその内容を正確に理解しましょう。
5-3 経費等の支出時期と支給申請の遅延
各補助金等の支援策において、補助金等の対象となる経費の支出はその対象期間内の発生でなければなりません。また、その支給を申請するタイミングにも期限があり、これにも遅れると給付されなくなってしまいます。
補助金等では一般的にその補助事業が定められた期間があり、給付の対象はその期間内での支出に限定されることになります。従って、その場合の期限外の支出は給付対象外です。
例えば、補助事業の期間が9月1日~12月31日である場合、同じ年の8月31日に支出した経費を含まれていれば、その経費は給付対象として認められません。また、支給の支払請求に関する申請期限も通常設定されており、それに遅れれば補助事業の内容がいかに適切で有効であっても給付されなくなるため注意が必要です。
5-4 補助金等の手続での審査・検査
補助事業の申請が採択されその補助事業を適切に実行し完了したとしても受給するための手続に問題があれば給付されません。例えば、受給手続に必要な報告書や資料が適切でない場合です。
先に示した通り補助事業の対象期間外の経費などが多く含まれているようでは不正な受給申請と判断され支給拒否される可能性が高まります。もちろん支出した経費が対象事業外の用途で使用されているケースなども同様です。
昨今、補助金等の不正受給とされる申請が多く発生していることから受給手続での審査や検査がより丁寧に実施される可能性が高まっています。そのため意図していなくても適正でない内容を含む書類等を提出すれば、その誤りが検査で発覚し受給申請が否認にされることになりかねないのです。
例えば、補助事業の目的で導入した設備を主に他の事業のために使用した、目的の試作に関する経費以外に量産にかかる経費を含めた、補助金等の対象となる雇用について、対象期間前の雇入れを含めた、といったケースでは支給拒否されかねません。
なお、申請から受給までの手続を適正に行い支給を受けるには、審査・検査をクリアできる適正な事務処理(帳簿への計上等)やその確認作業(請求書・契約書等の内容・日付の確認等)などが必要です。やや手間もかかりますが、適切に事務処理を行い適正と認められる書類等を準備できるようにしましょう。
5-5 申請・受給の注意点のまとめ
最後に上記の内容などを含め補助金等を利用できるようにするための申請・受注にかかる注意点をまとめておきます。
①補助金等を探す
補助金や助成金は様々なタイプのものが国や自治体のほか民間より提供されており、目的も多岐にわたり提供されている支援策の数も多数あります。ただし、利用要件があり自社が対象外になるケースも多いため、該当して利用可能な支援策をタイムリーに見つけ出すことが重要です。
国の各省庁や自治体のサイトで補助金等の公募情報が掲載されていますが、漠然と探すのは効率的でなく適する支援策を見つけ出すのも容易ではありません。そのため公募情報等をまとめて検索できる公的支援機関のサイトや支援策情報サイトで補助金等の情報を検索するのが効率的です。
例えば、(独)中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21の「支援情報ヘッドライン」、各地域の公的支援機関(東京都の東京都中小企業振興公社等)のサイト、などを利用するとよいでしょう。
②申請から受給までの流れや内容を把握する
補助金等の申請から受給にいたる手続の流れは各支援策で異なりますが、その流れと内容を正確に把握することが不可欠です。そして、その流れと内容に従って、適切な申込み(適切な計画書・資料等の提出)⇒申請内容に基づく補助事業の実施⇒結果を確認できる報告書・資料の作成および提出⇒受給(支払請求)の申請、といった手続をルール通りに行わねばなりません。
・申請
補助金等の申請では、要求される計画書や資料などの書類を期限までに提出することが要求されます。そのため適正な書類を期限内に提出することが申請時の重要ポイントです。
特に計画書の内容が申請の採択を左右することが多いため、補助金等を必要とする妥当性、補助金等を使って事業を進める有効性、などを明確に示すようにしましょう。
・申請内容に従った取り組みの実施
申請時の計画における取組内容と実際行った内容とが違っている場合支給されなくなるため、申請時の内容に従って補助事業を実施しなければなりません。また、そのように実行できるような管理体制を整え、実施した内容、支出した経費等を記録して書類・帳簿類等で残すことが必要です。
・ルールに従って結果報告
補助金等の支給を受けるには一般的に補助事業の結果を報告することになりますが、所定の手続に従った報告が求められます。必要な書類・資料については決まった書式を使い、必要な記入項目を漏らさず、過不足のない情報を的確に掲載して提出しなければなりません。
また、不正利用の誤解を招かないように申請内容と合致する情報を基に報告書類をまとめ提出する必要もあります。補助事業の対象期間内の支出や契約、申請内容や対象事業の目的に合った支出や契約、実際に支出した経費、総勘定元帳などへの経費等の記録、などが適正であるかチェックしておきましょう。
③審査を踏まえた準備
補助金等の申請や結果報告などには審査や検査が実施されるためそれらに備えた対応も必要になります。
例えば、補助金等の申請先や管轄する省庁や機関などへ審査等についてどのような準備をしたらよいか相談するのもよいでしょう。また、その補助金等の申請に詳しい専門家や公的支援機関などへ訪問し情報を得たり、指導してもらったりするのも有効です。
申請の手引などに多少説明されているケースもありますが、具体的な審査ポイントなどは把握しにくいため、申請先の担当者などに質問しながら情報を聞き出すといった方法も試してみるとよいでしょう。