「下請法」(正式名:下請代金支払遅延等防止法)とは、下請け業者の権利・利益の保護を目的に1956年に施行された法律です。一般的に親業者に対して下請け業者の立場は弱く、無理難題な取引を結ばされることも少なくありませんでした。
そこで公正取引委員会は親業者の優越的地位の濫用を規制しようと下請法を制定。たとえば、下請業者に責任がないのに、親業者が発注後に下請代金を減額することなどが禁止されました。
目次
- 1 下請法の概要をチェック
- 1-1 対象となる取引は?
- 1-2 資本金の規模
- 2 下請け業者に対する禁止行為
- 3 50年ぶりの見直しへ
1 下請法の概要をチェック
下請法の対象となるか否かは取引内容と、親業者と下請け業者の資本金額によって異なります。詳しく見ていきましょう。
1-1 対象となる取引は?
対象となる下請取引は①取引当事者の資本金(または出資金の総額)の区分と、②取引の内容(製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、または役務提供委託)から定められます。
製造委託取引 | 物品※を販売し、または製造を請け負っている事業者が、規格、品質、形状、デザイン、ブランドなどを細かく指定して、他の事業者に物品の製造や加工などを委託すること |
---|---|
修理委託取引 | 物品の修理を請け負っている事業者がその修理を他の事業者に委託したり、自社で使用する物品を自社で修理している場合に、その修理の一部を他の事業者に委託すること |
情報成果物作成委託取引 | ソフトウェア、映像コンテンツ、各種デザインなど情報成果物の提供や作成を行う事業者が、他の事業者にその作成作業を委託すること (例:物品の付属品・内蔵部品、物品の設計・デザインに関係する制作物全般) |
役務提供委託取引 | 運送やビルメンテナンスをはじめ、各種サービスの提供を行う事業者が、請け負った役務の提供を他の事業者に委託すること(建設工事などは役務提供の対象外) |
(参照:中小企業庁「下請代金支払遅延等防止法ガイドブック」)
※「物品」に、家屋、ビルなどの不動産は含まれない。
1-2 資本金の規模
・ 取引内容が①物品の製造、②物品の修理、③プログラムの作成、④運送・物品の倉庫保管・情報処理の場合
親業者 | 下請け業者 | |
---|---|---|
資本金3億円超 | → | 資本金3億円以下(個人含む) |
資本金1千万超〜3億円 | → | 資本金1千万円以下(個人含む) |
・ 取引内容が放送番組や広告の制作、商品デザイン、製品の取扱説明書、設計図面などの作成などプログラム以外の情報成果物の作成、またはビルや機械のメンテナンス、コールセンター業務などの顧客サービス代行など運送・物品の倉庫保管・情報処理以外の役務提供の場合
親業者 | 下請け業者 | |
---|---|---|
資本金1円〜5千万円 (個人含む) | → | 資本金1千万1円〜5千万円 (個人含む) |
2 下請け業者に対する禁止行為
親事業者には次の11項目の禁止事項が課せられます。たとえ下記事項について下請け業者の了解を得たとしても、抵触すれば下請法に違反することになります。
受領拒否 | 注文した物品等の受け取りを拒むこと |
---|---|
下請代金の支払遅延 | 下請代金を受領後60日以内に定められた支払期日までに支払わないこと |
下請代金の減額 | あらかじめ定めた下請代金を減額すること |
返品 | 受け取った物を返品すること |
買いたたき | 類似品等の価格又は市価に比べて著しく低い下請代金を不当に定めること |
購入・利用強制 | 親事業者が指定する物・役務を強制的に購入・利用させること |
報復措置 | 下請事業者が親事業者の不公正な行為を行政庁に知らせたことを理由としてその下請事業者に対して取引数量の削減・取引停止などの不利益な扱いをすること |
有償支給原材料等の 対価の早期決済 | 有償で支給した原材料等の対価を、当該原材料等を用いた給付に係る下請代金の支払期日より早い時期に相殺したり支払わせたりすること |
割引困難な手形の交付 | 一般の金融機関で割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること |
不当な経済上の利益の 提供要請 | 下請事業者から金銭、労務の提供等をさせること |
不当な給付内容の変更 不当なやり直し | 費用を負担せずに注文内容を変更し、又は受領後にやり直しをさせること |
(参照:公正取引委員会)
3 50年ぶりの見直しへ
昨年末、公正取引委員会は中小企業の取引条件の改善を目的に下請法を50年ぶりに改正する予定であることを発表しました。昨今の多様化したアウトソーシングに対応するため現在は改正に向けた検討が行われており、たとえば違反行為事例を現行の66事例から144事例に増やす方針です。
上下関係になりがちな親業者と下請け業者の関係が少しでも改善される法改正になることが望まれます。